散歩者goo 

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(考古から見た)「農耕社会の成立」を読んで

2011年11月03日 22時02分34秒 | 考古学・古代史・歴史・文化人類学
岩波新書の「農耕社会の成立」石川日出志を読み終えた。縄文時代から古墳時代直前までの地域の違いも含めた社会の変化が、現在の考古学データや学説を基に描かれていた。当初タイトルから見て、文化人類学的な本に近いのかと思ったが、石器時代から古墳時代前までの社会を、考古学を中心社会像を描き出している。

書かれている内容は非常に興味深く、現在の考古学の到達点がよく見えてくる。考古学古代史関係の本を読んで気付くことは、その本の書かれた時期だ。考古学は、毎年新たな考古学資料が加わる。そのような資料の中には、今までの定説を覆す資料が出る場合も多い。したがって、書かれた年代が古いと画期的な考古学資料が含まれていないため、必然的に学説が古いことがあるので要注意だ。

重要資料が出土するたびにそれまでの学説が変化していったのが、考古学の歴史といっても差し支えないと思うし、宿命でもある。出土資料が絶対であって、それに基づいて整合性のある歴史像を組み立てて行くことにならざるを得ない。

今までの考古学の流れは知らないが、いくつかの考古学関係の本を読む限り、弥生時代から古墳時代にかけて、海外との交渉・外交の解明が非常に重要になっているようにみえる。この本でも、朝鮮半島を含む大陸との関係にも、再三触れている。

この本では、日本列島の始まりから、石器時代そして縄文時代までも地域の違いを含め解説し、農耕や縄文文化や住居・集落にも触れている。

弥生時代の始まりも、問題となっている。現在の学説では弥生時代の始まりは、この本では地域的に一様ではないということを強調していて、稲作農業が最も早く始まった九州では、紀元前800年頃を想定しているようだが、紀元前500-600年より後から1000年までの間に考えようという学説が多いようだ。

古墳時代の始まりも学者により違う。多くの学者は箸墓が作られた時期をもって古墳時代の始まりとする意見が多く、この本でもその立場をとっている。

この本では、全体的に各時代を通じて強調していることは、地域によって時代の流れが違うことだ。その地域区分は九州、 中国、 近畿、 中部・関東、 東北、 北海道に分けている。
全体として、縄文時代、弥生時代、もそれぞれ地域により、集落のあり方や稲作技術の違い祭祀の違いについて丁寧に分析していて、興味深かった。
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TPPと農業問題・経営革新

2011年11月03日 12時45分07秒 | 政治・経済・社会・法律・文化
先に断っておくが、私はTPPについては、以前は賛成だったが、今は中立である。基本的にTPPに関する情報が余りにも少なすぎる。事実以前から、TPPの関連する討論番組をいくつも見たが、議論の根拠となるデータが非常に少なく、根拠もあいまいだ。

その上、TPPの中身が分らないから、参加して日本の主張を通すというが、一方では都合が悪いから日本が一方的に離脱するのは難しい、という意見もあれば、カナダは離脱したので問題はないという意見もある。放射能の閾値と同様学者や専門家や元官僚ですら意見がまとまっていない。こういう状態でいくら議論しても結論らしき物がでるはずはない。

我々は、年金問題で、自公政権が高らかに打ち上げた100年安心プランに騙された。そのときは、小泉人気に酔いしれて、すばらしい改革と思っていた。だがその根拠となる物は、何だったのだろう。マスコミも当時盛んに報道したが、問題点を指摘した話は、取り上げられず、なぜこんな非常に大事なことが根拠無く決まったのか不思議だ。現在マスコミでは、年金問題の抜本的解決策として、年金 賦課方式から事前積み立て方式への変換という話が話題になっているが、今後検討する余地があるのではないかと思う。又その前提となっている人口問題の解消=出生率の向上政策が重要課題であり、政治問題として議論すべき問題と思う。。

TPPに関しては、上記のような年金問題の誤った政策を決定してはならない。年金問題はそもそも自公政権が長年政治的小細工で修正を繰り返し、年金問題への監督責任を怠った結果である。我々はこうしたことを教訓として厳しい視線でTPP問題を見る必要がある。

例えば、TPP推進派は、農業の経営革新をし農業の生産性を高めるというが、工業分野ですら、経営革新が出来た企業はごく一部である。(私も経営革新プランを作成し認可された経験はある。)多くの中小零細企業は、経営革新できないまま閉鎖に追い込まれた。同時に経営革新に成功した企業は、彼らの技術や品質を武器に販路を拡大し売上を伸ばしている。

更に農業での経営革新を、工業での経営革新が違うところがある。工業では知的財産として、特許等で技術が守られていて、独占的である。しかし農業では、農作物の品種に関する特許はあるが、きめ細かな管理技術で美味しい作物を作るといったことには、何の保護もない。例えば多くの農家が技術指導を受けいれ、更に高品質の作物の収穫に成功したと仮定しよう、その場合多くの品質や味の良い作物が、多く出回ったとすると、その時点で市場原理で価格は下がる。

高品質商品はニーズ=需要と供給量と価格によって決定される。常識的に日本の一部の農家が作物の品質を上げると、その時点では供給が少ないので高収益が期待できるが、時間がたって多くの農家が真似をして、供給が増えると、需給関係からその作物の相対的価値=価格は下がるのである。米も確かにブランド米は高い値段で売れているが、高品質の米も多くなっている。更に海外でも栽培技術が進化し手いる。一部では日本の米に近い品質の物が出来ているという。このように海外の農産物の高品質化も時間の問題であろうし、一部の日本の農家が海外に進出し技術移転して現地販売や逆輸出しようという動きもあるとも報道されている。
(11/6訂正 この段落一行目 「一部の農家」とすべきところ「農家が一斉に」、と逆のことを記載していた。)

高品質のTVは昔日本の独壇場で高い収益を確保していたが、今はどうだろう。韓国の製品の品質が日本と同等になり、その結果日本のTVは価格競争に敗れる羽目になった。車もウォン安の影響もあるが品質も向上し同じ傾向が出はじめている。以上のことをシュミレーションしてみると、TPPに参加して工業で頑張ると同時に、日本農業は、品質を上げ安い輸入品に負けないようにして、強い農業を作るという議論に疑問を持つ。

食料のニーズは、やはり出来るだけ安くが基本であろう。高品質の食品の需要は富裕層に限られその量は限定的であると考えるべきであろう。無論中国の富裕層向けの需要・輸出は見込めるだろうが、中国での栽培技術・安全性の向上や今後の経済情勢の変化を考慮すると、国を挙げて高品質農業製品の輸出というバラ色の話は夢物語のような気がする。このような高品質農業製品の輸出は限定的と思われる。

TPPは農業分野だけでなく多くの分野に影響を及ぼすといわれているが、その実態もはっきりしない。したがって、参加しないことには分らないし、その席上で日本が、主張すべきであり交渉すべきだという意見がある。その一方で一度参加すると抜けられないという意見もあり、議論は堂々巡りの状態だ。

ただ、11月2日の公開討論会での枝野幸男経済産業相の発言「農家の多くは、農業収入よりも兼業する製造業からの収入が多い」は、今の農業の実態を示している。地方経済や製造業の活力を保つためにもTPPが必要だという見方も理解できる。

政府は、近く結論を出すを言うが、その前に、TPPに関する疑問点に対する答えや根拠を国民に示すべきだと思うし、もしTPPに参加した場合の農業その他の分野に対する懸念される問題への、対応策も示すべきだ。

この問題に関しての根本的な疑問だが、なぜ二国間の自由貿易協定FTAでいけないのか。農業問題や医療問題や保険問題等、国により懸案となる問題点が異なる。だとすれば、多国間の無条件の制度導入より、個別に懸案問題を交渉できるFTAのほうが良いのではないかと思う。

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