山と溪を旅して

丹沢の溪でヤマメと遊び、風と戯れて心を解き放つ。林間の溪で料理を造り、お酒に酔いしれてまったり眠る。それが至福の時間。

パラダイムの転換そして個別化

2006-11-13 02:47:19 | 独り言
『大局的見地に立って、変化の波を読み、変化の波に乗りましょう!』

良く聞く話であり、私も『明日への提言』で何度となく提言したものでした。しかし皆さん、この意味、ちょっとはき違えてはいませんか?

歯科業界に限らず、どんな世界でも日々進化を続けています。
例えば医療機器、薬品、それを使いこなす技術、症例に対する考え方などなど。
これを変化と捉えてきちんと対応しているからと言って、決してそれは褒められたことでは無いんですよ。こんなものを変化などと考えたら大間違いです。

こういった進化は技術や学術的進歩に伴って当然に進むものです。この進化を受け入れて対応することは、医療の質を向上させる使命を負った臨床医の姿勢としては当然のことである筈です。進化に対応できて当たり前、対応できない臨床医は怠慢であり医療の世界にいてはならない存在である筈です。つまり、進化に対応することは単なる日常業務に他ならないと言い切ってもいい程の事だと考えますがいかがですか?

では、変化の本質とは何でしょうか?ここでもう一度、確認しておきたいと思います。
ここで言う変化とは『パラダイムの転換』を指しています。つまり、従来の既成概念や価値観、やり方をガラッと180度変えてしまうような出来事を言います。

ひとつ例を揚げてみましょう。例えば、従来のパラダイムでは『歯科医院は歯を削って治療する所』→新しいパラダイムは『歯科医院は歯を削らない→虫歯を作らせないようにする所』。

このパラダイムの転換はおよそ20年前に遡ります。その根拠は二つ。一つは虫歯を予防することが医療人としての本来の使命であるということ。もう一つは、年々食生活が向上し、歯に対する意識も高まるにつれて虫歯人口が減り、将来の虫歯治療と歯科医院経営に限界を感じ始めたこと。これに気付いた極く一部の歯科医が『治療から予防へ』とパラダイムの転換を図りました。

医療機器や技術の進化を察知することは容易いことです。なぜなら歯科材料や医療機器のディ-ラ-さんがその都度情報提供してくれるからです。歯科の専門誌もしかり。その情報に基づいて本を読みセミナ-を受講すれば何とかなるもの。

しかしパラダイムの転換はそうはいきません。広角レンズと高感度のアンタナを張り巡らせていなければ察知することは容易ではありません。やがて押し寄せる大きな変化の波も、初めは小さくゆっくりと進んでゆくから気づかないのです。そして、ある時を境にその大きさと速さは加速度的に進み、誰の目にも分かるようになったときには殆ど手遅れになってしまいます。インプラントもしかりです。

変化の波が巨大化する前に、パラダイムの転換を察知し、対応を準備し、体制を整えることが必要となります。私は最近、予防やインプラントを新規に進めることを躊躇しています。変化の波が大きくうねり始めた今、新規に始めても遅きに失した感があるからです。変化の波を察知し、変化に対応する覚悟を決め、技術を習得するまでに可成りの時間と費用を要します。更に予防専用室を作り、インプラントのオペ室を作るのにも相当の投資を要します。未来投資や経営改善は経営が傾き始めてから手がけては至って非効率であり、資金のある時の投資が鉄則です。

5年前に準備に取りかかった医院では、技術の修得や機材の準備を整え、広告戦略も完結し患者の取り込みと症例数を重ねて体制を整えつつあります。信頼を得た医院は、今後10年~15年の黄金期に大きな果実の収穫期を迎えます。

何もパラダイム転換の先駆者になる必要はありません。トップランナ-は異端児扱いされても決して折れない強い信念とパワ-が無いと務まりません。ある程度先が見える頃の二番手、三番手で良かったのです。しかし、私のお客様でもパラダイムの転換に信念を持って乗れたのは3割程度でした。私の説得力が足りなかったのかも知れませんが、しかし決断し行動に変えるのは本人自身です。この決断の違いは今後の10年で大きく命運をわけることとなります。

紙面が足りません。個別化については次回に譲りたいと思います。






コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする