Dr.エイブラハム・ジェイコムズの独白、アイリーン・キャンベルの懺悔、ブライアンの述懐に続いてお読みください。
Dr.エイブラハム・ジェイコムズの謝罪
一週間ぶりにブライアンが戻ってきた。
研究室のドアを開けると何事もなかったようにブライアンがパソコンの前に座っていて、私の方をじっと見つめていた。
「お帰り、ブライアン」
私がそう声を掛けるとブライアンがキーボードを鼻先でちょこちょこと叩き、【心配を掛けました】と文字がモニターに浮かんだ。
「それほど心配はしていなかったよ。アイリーンの元にいるであろうことは十分予想がついていたからね」
【彼女を責めないでください】
「わかっている。彼女が率先してお前を誘拐したのではないということぐらい私にもわかるさ」
【それを聞いて安心しました】
「たまに公園に連れ出してやったが、お前も研究室に閉じこもりきりでは気が滅入ったんだろう。彼女と暮らしてみてどうだった?気が晴れたかね?」
私の質問には答えず、代わりにブライアンは次の一文を打ち込んだ。
【Dr、久しぶりにチェスをしませんか?】
望むところだった。一局のチェスは百万の言葉を費やすよりも多くのことを伝えることがある。
何より私は好敵手と、つまりブライアンとチェスをするのがこの上ない楽しみだった。
私とブライアンはブライアンが覚えたての頃を除いて戦績的に互角であった。どちらかが二、三局続けて勝つこともあったが、トータルでの勝ち星はそれほど変わらないはずだった。
私とブライアンは実力が伯仲していた。このときまでは。
完敗だった。完膚なきまでに叩きのめされた。ブライアンにはこれまで幾度となく負けたことがある。だがこれほど圧倒的な敗北を喰らったのは初めてだった。
さらに二局続けて対戦する。だが同じ結果だった。
モニターのブライアンの名前のところに三度続けてwinnerの文字が点滅した。
「知らなかったよ。お前は私よりはるかに強かったのだな…」
ブライアンは私を悲しそうに見た。
【Drが知らないことは他にもあります】
「何だね?」
【私はそれほどニンジンが好きではありません】
「そうだったのか…。お前が美味しそうに食べるから、てっきり好物なのかと思っていたよ」
【私が食べる様子をDrが満足そうにご覧になるのでどうしても言い出せなかったのです】
「そうか、それはすまなかった。これからはニンジンの他にもバラエティに富んだ食事のメニューにしよう」
【言い出せなかったことがまだあります】
そう言うとブライアンは押し黙ってしまった。正確にはキーボードを叩くのを止めてしまった。
しばらくして【Dr】という二文字がモニターに浮かんだ
【Dr、私はDrがつけてくださった「ブライアン」という名前をとても気に入っています。とても素敵な名前だと思います。でも私が「ブライアン」と名乗るには一つだけ問題があるのです。】
ブライアンは私を、そして私はブライアンをじっと見つめた。
【Dr、私は男ではないのです】
ブライアンの言葉に私はすぐには二の句が継げなかった。どうにか「すまなかった」とだけ謝罪の言葉を振り絞った。
【いえ、必ずしもDrのせいではありません。ウサギの性別を見分けるのは熟練のブリーダーであっても難しいと聞きますから】
「私はお前が女かもしれないなんてこれっぽっちも考えなかった。本当にすまない。どうだろう、これから「ブライアン」に代わる相応しい名前を二人で考えようじゃないか」
ブライアンは私の提案に少しだけ微笑んだ、気がした。
【あと一つだけ私にはDrに言えなかったことがあます】
ゆっくりとモニターに文字が打ち出され、短い文章を二つ紡いだ。
【私はあなたを愛しています。だからあなたの傍にはいられないのです】
その後もう二度とモニターに文字が浮かぶことはなかった。
そしてブライアンはいなくなった。
エイミー・ドーソンの日記に続く
Dr.エイブラハム・ジェイコムズの謝罪
一週間ぶりにブライアンが戻ってきた。
研究室のドアを開けると何事もなかったようにブライアンがパソコンの前に座っていて、私の方をじっと見つめていた。
「お帰り、ブライアン」
私がそう声を掛けるとブライアンがキーボードを鼻先でちょこちょこと叩き、【心配を掛けました】と文字がモニターに浮かんだ。
「それほど心配はしていなかったよ。アイリーンの元にいるであろうことは十分予想がついていたからね」
【彼女を責めないでください】
「わかっている。彼女が率先してお前を誘拐したのではないということぐらい私にもわかるさ」
【それを聞いて安心しました】
「たまに公園に連れ出してやったが、お前も研究室に閉じこもりきりでは気が滅入ったんだろう。彼女と暮らしてみてどうだった?気が晴れたかね?」
私の質問には答えず、代わりにブライアンは次の一文を打ち込んだ。
【Dr、久しぶりにチェスをしませんか?】
望むところだった。一局のチェスは百万の言葉を費やすよりも多くのことを伝えることがある。
何より私は好敵手と、つまりブライアンとチェスをするのがこの上ない楽しみだった。
私とブライアンはブライアンが覚えたての頃を除いて戦績的に互角であった。どちらかが二、三局続けて勝つこともあったが、トータルでの勝ち星はそれほど変わらないはずだった。
私とブライアンは実力が伯仲していた。このときまでは。
完敗だった。完膚なきまでに叩きのめされた。ブライアンにはこれまで幾度となく負けたことがある。だがこれほど圧倒的な敗北を喰らったのは初めてだった。
さらに二局続けて対戦する。だが同じ結果だった。
モニターのブライアンの名前のところに三度続けてwinnerの文字が点滅した。
「知らなかったよ。お前は私よりはるかに強かったのだな…」
ブライアンは私を悲しそうに見た。
【Drが知らないことは他にもあります】
「何だね?」
【私はそれほどニンジンが好きではありません】
「そうだったのか…。お前が美味しそうに食べるから、てっきり好物なのかと思っていたよ」
【私が食べる様子をDrが満足そうにご覧になるのでどうしても言い出せなかったのです】
「そうか、それはすまなかった。これからはニンジンの他にもバラエティに富んだ食事のメニューにしよう」
【言い出せなかったことがまだあります】
そう言うとブライアンは押し黙ってしまった。正確にはキーボードを叩くのを止めてしまった。
しばらくして【Dr】という二文字がモニターに浮かんだ
【Dr、私はDrがつけてくださった「ブライアン」という名前をとても気に入っています。とても素敵な名前だと思います。でも私が「ブライアン」と名乗るには一つだけ問題があるのです。】
ブライアンは私を、そして私はブライアンをじっと見つめた。
【Dr、私は男ではないのです】
ブライアンの言葉に私はすぐには二の句が継げなかった。どうにか「すまなかった」とだけ謝罪の言葉を振り絞った。
【いえ、必ずしもDrのせいではありません。ウサギの性別を見分けるのは熟練のブリーダーであっても難しいと聞きますから】
「私はお前が女かもしれないなんてこれっぽっちも考えなかった。本当にすまない。どうだろう、これから「ブライアン」に代わる相応しい名前を二人で考えようじゃないか」
ブライアンは私の提案に少しだけ微笑んだ、気がした。
【あと一つだけ私にはDrに言えなかったことがあます】
ゆっくりとモニターに文字が打ち出され、短い文章を二つ紡いだ。
【私はあなたを愛しています。だからあなたの傍にはいられないのです】
その後もう二度とモニターに文字が浮かぶことはなかった。
そしてブライアンはいなくなった。
エイミー・ドーソンの日記に続く
あの・・・
私が違うのかも、
しれませんがぁ・・・
ドクターの「すまなかった」の後の
ドクターのセリフ
○女とはおもっても・・・
×男とはおもっても・・・
と、思いますが・・・?
あらぁん♪
小夏さんのよみ通りではないですかぁ?
(^^)b♪
ラブストーリー?
結末を当てたなら、何か景品が頂けるのかしらん?ん?ん?
訂正しておきました。
いつになく急いで執筆したもので、、、え?いつものことですって?
うわぁあああん、そうかもしれないですけど!
>小夏さんのよみ通りではないですかぁ?
読み通りというより、小夏さんのコメントからこのオチを思いついたのかも、、、いや、それはないですけどね。笑。
景品は特製のスマイルってことでどうでしょうかねぇ。。。
ブライアンが女性だったとは・・・私もまだまだ読みが甘いな、むぅ。
しかし、オチが想像していた通りだったのが逆にビックリ!
あーでも、あと一話あるのか・・・まだ満足するには早いかな??
そっか、BLだと思ってたんですね。笑。
>あーでも、あと一話あるのか
残り一話はおまけみたいなもので、今回が最終回といってもいいぐらいです。
ところで景品のスマイルですけど、小夏さんが住所を教えてくれたら自分がニッコリ笑った写真を郵送しますよ?(誰がいるんだっつーの)