アルフォンス・キュアロン監督、『トゥモロー・ワールド』、Tジョイ久留米にて鑑賞。
難しい映画だな、と思う。
難しいといっても内容が、ではなくて。
ストーリーはごくシンプル。子供の生まれなくなってしまった近未来、主人公セオは元妻であるジュリアンから一人の女性の運命を託される。その女性キーは何と妊娠していた・・・、という話。
正直脚本だけ見ればまぁ及第点かな、ってぐらいの映画。例えばジュリアンは最初セオにキーのために通行証を入手して欲しいと依頼し、実際セオはそれを入手するのだが、その通行証があとあと何かストーリーに関わってくるかというとそういうわけでもない。またセオたち一行は暴徒に襲われジュリアンは命を落とすのだが暴徒の正体は彼女の部下の知り合いである。(ジュリアンの率いる組織が)一枚岩になっていないにもほどがあるだろうと思ってしまった。さらにセオは逃亡のために友人のジャスパーから一人の警官を紹介してもらうのだが、その警官が逃亡行の邪魔をしたりする。ジャスパーは信用できる人物としてその警官を紹介したはずなのに。そんな感じで観ていて首を傾げるシーンがいくつもある。
だがキュアロンは、脚本の段階では及第点の『トゥモロー・ワールド』という作品を、映像の力によって観る者に息を飲むほどの迫力と鑑賞後何かを考えさせずにはいられないメッセージ性を与え、傑作へと昇華させている。
SFというのはサイエンス・フィクションの略であり、日本語で言えば空想科学(小説)のことであるが、それが単なる未来を舞台にした絵空事であったら、SFというジャンルは存在する意味がないと思う。SFとはつまり現代社会の映し鏡だ。
『トゥモロー・ワールド』で語られる、子供の生まれない世界というのは、それは少子化が問題になっている現代社会のことを指す。舞台こそ2027年のイギリスであるが、キュアロンが指し示すのは間違いなく現代社会が抱える暗部だ。
難しい映画だと言ったのは、我々にこの暗部を凝視するだけの勇気があるのかどうかが試されるからだ。そして考えて、何らかの答えを出さなければならない。だからこそ、難しい。
少子化の深刻化が叫ばれて久しいが、実のところ少子化の問題はもう二十年も前から(というかもっと前から)わかっていたことだ。だが我々はそのことから目を背けていた。
映画『トゥモロー・ワールド』は我々がこのまま目を背け続ければ、二十年後、もしかしたらこんな世界がやってくるかもしれませんよ、と警告している。幸い映画は一粒の種が希望として残るようなラストを迎えるが、現実はどうなのだろう。我々は未来に希望を見出すことが出来るのだろうか。
難しい映画であるがメッセージそのものは易しい。つまり一言で言えば、子供は世界の宝であるということだ。観るべき価値は十分ある、そう思う。
難しい映画だな、と思う。
難しいといっても内容が、ではなくて。
ストーリーはごくシンプル。子供の生まれなくなってしまった近未来、主人公セオは元妻であるジュリアンから一人の女性の運命を託される。その女性キーは何と妊娠していた・・・、という話。
正直脚本だけ見ればまぁ及第点かな、ってぐらいの映画。例えばジュリアンは最初セオにキーのために通行証を入手して欲しいと依頼し、実際セオはそれを入手するのだが、その通行証があとあと何かストーリーに関わってくるかというとそういうわけでもない。またセオたち一行は暴徒に襲われジュリアンは命を落とすのだが暴徒の正体は彼女の部下の知り合いである。(ジュリアンの率いる組織が)一枚岩になっていないにもほどがあるだろうと思ってしまった。さらにセオは逃亡のために友人のジャスパーから一人の警官を紹介してもらうのだが、その警官が逃亡行の邪魔をしたりする。ジャスパーは信用できる人物としてその警官を紹介したはずなのに。そんな感じで観ていて首を傾げるシーンがいくつもある。
だがキュアロンは、脚本の段階では及第点の『トゥモロー・ワールド』という作品を、映像の力によって観る者に息を飲むほどの迫力と鑑賞後何かを考えさせずにはいられないメッセージ性を与え、傑作へと昇華させている。
SFというのはサイエンス・フィクションの略であり、日本語で言えば空想科学(小説)のことであるが、それが単なる未来を舞台にした絵空事であったら、SFというジャンルは存在する意味がないと思う。SFとはつまり現代社会の映し鏡だ。
『トゥモロー・ワールド』で語られる、子供の生まれない世界というのは、それは少子化が問題になっている現代社会のことを指す。舞台こそ2027年のイギリスであるが、キュアロンが指し示すのは間違いなく現代社会が抱える暗部だ。
難しい映画だと言ったのは、我々にこの暗部を凝視するだけの勇気があるのかどうかが試されるからだ。そして考えて、何らかの答えを出さなければならない。だからこそ、難しい。
少子化の深刻化が叫ばれて久しいが、実のところ少子化の問題はもう二十年も前から(というかもっと前から)わかっていたことだ。だが我々はそのことから目を背けていた。
映画『トゥモロー・ワールド』は我々がこのまま目を背け続ければ、二十年後、もしかしたらこんな世界がやってくるかもしれませんよ、と警告している。幸い映画は一粒の種が希望として残るようなラストを迎えるが、現実はどうなのだろう。我々は未来に希望を見出すことが出来るのだろうか。
難しい映画であるがメッセージそのものは易しい。つまり一言で言えば、子供は世界の宝であるということだ。観るべき価値は十分ある、そう思う。
SF映画もまだまだ捨てたもんじゃないですね。SF好きとしては、「アルマゲドン」みたいな映画がSF映画なんだと勘違いされたくないですからね。個人的に、フィリップ・K・ディック原作のSFものは当たりが多い気がします。「クローン」とか「マイノリティ・リポート」とか。
せぶさんの記事を読んでかなり観たくなりました。これは喜ばしいことに釧路でも公開されましたよー!(笑)
SFじゃないのかな、なんて観てて思いました。
TBありがとうございました。
>shit_headさん
『トゥモロー・ワールド』が釧路で公開されてよかったですね。笑。
これはいいと思いますよ!shit_headさんがご覧になってもきっと満足すると思います。
フィリップ・K・ディック、、、SFは結構好きな割にはそこまで詳しくはないんですよね。
『クローン』はまだ未見なので、今度機会があったら見てみます。
>とりこぷてらさん
CMは自分も見ていないですが、この映画の宣伝はちょっと難しいだろうなぁと思います。ジャンルとしては社会派SFにでもなるのでしょうが、それで宣伝しても客は呼べそうにないですし、実際客が入るSFはそれこそshit_headさんが挙げている『アルマゲドン』みたいな作品ですしね。
配給会社が無能って言えば無能だとは思いますが、そのことを責めるつもりにはなれないですねー。
そうそう、悠々自適の独身生活を送っているそこの(*・・)σアナタ。
相手がいないなんて甘えたコト言ってちゃイケマセンぜ。
国民年金負担増や介護労働力不足なんてちっちゃいちっちゃい!
若者の国民年金負担が深刻化する頃には、
年金を支払う元の経済そのものが危うい。
介護労働力不足が深刻化する頃には、
介護制度そのものを支えるパワーが社会に無い。
少子化は、創造と消費と成長の活力そのものの枯渇です。
個々の社会的負担が増えるんじゃなくって、
社会を支えるチカラそのものが不足するんだってば!
政治家の考える少子化対策も
鼻で笑っちゃうようなモノばかりです。
年間2万円ちょっとの税負担が減ったからといって、
『結婚しないかもしんな~い』と考えてる人が
『3人は産む!』に変身すんのかよ!
あんたらバカか?
「子供産まない人は1.5人分の養育費を払って
子供を産む人がさらに産めるようにサポートしなさい。」
くらいいやれ!
あなたの老後を支えるのは、あなたの払う『お金』じゃなくって、
あなだじゃない誰かが一生懸命育てた子なんだぞー!
(しかも子供育てた分だけビンボーになる(TдT)o!)
…というキャンペーンをもっとやるべきだと思うー。
手遅れになるよう。
『トゥモロー・ワールド』観て、そんな思いを
さらにつのらせようとした矢先のレポ。
ありがとうございます。
やっぱり観たい。
悠々自適の独身生活を送っている自分が言うのもなんですが、というか、悠々自適の独身生活を送っている自分だからこそ敢えて言いますが、少子化対策の最も手っ取り早い手段は独身税の導入でしょう。
加えて子供のいない夫婦もそれに準ずる税を納めるようにする。
独身税に対していろいろとごちゃごちゃと言いたい人はいるでしょう、好きで独身を貫いているわけではないとか、好きで子供を作らないわけではないとか、いろいろ。
でもそういった人たちが(もちろん自分も含め)子供のいる家庭に比べ、ゆとりのある生活を送っているのは間違いないところなので、そのゆとりのごく一部を子供がいて、暮らしが貧窮している家庭に回すのは当たり前のことだと思います。
独身税の根幹にあるのはやはり子供は世界の宝であるという考えです。隣りの家の子供は隣りの家“だけ”の子供ではないってことです。
もちろん独身税の実際の導入に関してはいろいろと煮詰めないといけないこともあります。例えば子供のいない夫婦が不妊治療をしていたらその費用は控除するとか。
いろいろ問題はありますが独身税は導入すべきだと思います。
↑なんか数か月前にも言った気が。苦笑
いや、今回はマジでそう思います。
せぷさんは脚本がイマイチみたいなことをおっしゃってますが、そんなこともないと思いますよ。
脚本も含めて大傑作かと。
後ほどレビュー書いたらTBさせてもらいますね。
>過去数年に渡ってのベスト1だと思います。
うぉ、めちゃくちゃ評価が高いですね!!そうすると『ミュンヘン』や『キングダム・オブ・ヘブン』よりも『トゥモロー・ワールド』の評価は上ってことですね。
自分はやっぱりそこまでは評価は高くないですねぇ。脚本、悪いというわけではないにしても弱い部分があると思います。
レビュー、楽しみに待ってますね。でも正直読むのが怖いかも。。。
つじつまとか説明不足とかは、敢えて削り取って、とにかく主人公を孤立無援に追い込むことに力を注いでるという点で、いいシナリオだったと思います。
それを再現した映像も圧巻。
この映画に問題があるとしたら、見終わってすぐ子作りしたいムラムラを覚えない、というところだけかな(笑)。
てなわけで、TBありがとうございました。
えっと、、、実はご無沙汰していたのにはわけがあって、しばらく前のことなんですが、にらさんのところでよく名前を見かける方とちょっとしたトラブルがあって、それでにらさんを巻き込むわけにはいかないなぁと思って足が遠のいていました。
久しぶりに覗かせてもらったらその人の名前はなかったみたいなので、またちょくちょく寄らせていただきます。
>主人公を孤立無援に追い込むことに力を注いでるという点で、いいシナリオだった
そうですねぇ、にらさんの見方が正しいのかもしれません。自分の見方が穿ちすぎなのかも。
にらさんは『SAW』はご覧になりましたか?
自分は『SAW』単独ではゲームが成立していない、ジグソウの行動原理が矛盾しているという理由で、インパクトこそあるがシナリオは弱い、という評価をしていたんです。
それで先日『SAW3』を観たら『SAW』におけるシナリオの弱さをきちんと補完していて、『SAW3』が存在することによって自分の『SAW』への評価は高まったんです。
でもざっと見回った限りでは『SAW3』をそういうふうに評価している人はあんまりいなかったですね。単なる焼き直しとしてしか捉えていない人が多くて、自分の見方ってフツーじゃないんだなぁって思いました。
まぁ、そんな器の小さい自分ですが、にらさん、これからもよろしくお願いします。