ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

幻の「沖縄核持込通過 容認文書」

2009年12月23日 | 時事問題
朝日新聞 2009年12月23日3時2分
核密約文書現存、佐藤元首相宅に保管 日米首脳の署名
 日米の両首脳が1969年に沖縄返還を合意した際、有事における沖縄への核兵器の再持ち込みについて取り決めたとされる秘密の合意文書が、当時の首相、故・佐藤栄作氏の遺品の中に残されていたことが分かった。佐藤氏の次男で元通産相の信二氏(77)が明らかにした。
 信二氏が保管していた文書は「1969年11月21日発表のニクソン米大統領と日本の佐藤首相による共同声明に関する合意議事録」と表題があり、69年11月19日付。「重大な緊急事態」に際し、米政府は「日本政府との事前協議を経て、核兵器の沖縄への再持ち込みと沖縄を通過させる権利を必要とするであろう」とあり、日本政府は「米国政府としての諸要件を理解し、そのような事前協議が行われた場合には、これらの要件を遅滞なく満たすであろう」と記されている。文書の取り扱いについては「最高級の機密のうちに取り扱うべきであるということで合意した」と記し、当時のニクソン大統領と佐藤氏の署名がある。

やはり存在していた40年前の「核密約」文書 問題は今もこの文書が効力を持つかどうかだ。
個人が所有していたことも問題で、国家は知らなくてもいいなら、なぜ佐藤氏がなくなった時、棺桶に入れて焼かなかったのか。


医療問題 川崎協同病院事件最高裁判決を考える

2009年12月23日 | 時事問題
医療に関する提言・レポートfrom MRIC(2009年12月22日)「川崎協同病院事件最高裁判決を受けてー再び医療界に問う」 大磯義一郎 国立ガンセンター医師・弁護士 より

 この事件の詳細は小林一彦氏によってMRIC上で12月14日と15日の2回にわたって紹介された。そこでここでは最高裁判決の強いメッセージについて考える。事件は平成10年におき、平成17年に地裁判決(懲役3年執行猶予5年)、平成19年に高裁判決(懲役1年6ヶ月執行猶予3年)を経て、今年平成21年12月7日に最高裁判決(上告棄却、高裁判決維持)が出た。なぜ11年間も最終判決が要したのであろうか。それは医療界の回答を待っていたのである。最高裁判決は上告理由に該当しないので棄却するという(三行半判決)であるが、その傍論として判示した内容を吟味する必要がある。「患者はこん睡状態にあったのだから家族の願いは患者の医師を推定したことにはならない。患者の生命予後が明らかになっていない以上、医師の行為は事故ではなく故意による行為であるので、無罪か殺人罪のどちらかでなければならない。安楽死を定義することも尊厳死法の制定もしくはガイドラインの策定や社会的合意が形成されていない現状では、裁判所が抜本的な解決を図ることは出来ない。医師側が独断で違法性を阻却出来る要件を提示しなければ、裁判所が無罪判決を出すことは三権分立の原則から困難である。」というものであった。要するに現在の法体系からは殺人罪を適用せざるを得ないというものである。実に長い間11年間医療界(厚労省、医学界、医師会など)の回答を待ったが、何の基準も示されない以上、踏み込んだ判決を裁判所が示すことは越権行為である。そういう最高裁のメッセージを受け止めるべきで、「医療界の不作為」によって本判決が出された。一医師の行為とみて真摯な対応を示さなかった医療界にこそ問題がある。

読書ノート 北朝鮮研究学会編 「北朝鮮は、いま」 岩波新書

2009年12月23日 | 書評
韓国の政策研究者が「金正日体制の北朝鮮」をどう見ているか 第4回

序(4)
 本書は2006年はじめ、韓国の北朝鮮研究学会と韓国のインターネット新聞「プレシアン」の共同企画で、「2006年、北朝鮮はどこへ」という連載が行われ、北朝鮮社会全般で起っている変化のありようを集中点検してみようということになった。政治・外交、経済、社会・文化の3分野で26人の著者による検証寄稿がなされた。当時の韓国の大統領はノ・ムヒョン氏でインターネットでの人気抜群の民主的首相で、対北外交路線は1998年キム・デジュン大統領の「太陽政策」を引き継いで、2003年より「包容政策」を取っていた時代である。本企画が終了して2006年夏より北朝鮮のミサイル・核実験が始まった。したがって本書の内容は北朝鮮の変化を善意に解釈して温かく見守ろうという姿勢に満ちている。これを「未来志向的認識」といい、韓国としての一つの選択肢であった。2006年夏以降の情勢激変を反映していないのが,残念である。そういう意味では認識が甘かったというか、時代遅れの感が否めない。2008年2月に就任したリ・ミョンバク韓国大統領での対北外交政策見直しが進んでいる中、北朝鮮は再び危険な瀬戸際外交を進めようとしている。2009年4月の桜の季節に日本の花見気分をぶち壊すかのようにミサイル実験を強行した。北は核再開も暗示するような発言もしており、再び暗雲がたちこめ六者会合の再開と仕切りなおしが要求されている情勢である。とはいうものの本書はやはり韓国の研究者(学問というよりは政策研究者というべき政治色の強い内容)が書いたものだけに、政治、経済、文化の3分野にわたって総合的な検証を加えている点が注目される。
(続く)