ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 坂本義和著 「人間と国家ーある政治学徒の回想」 岩波新書

2012年04月30日 | 書評
現代を生きる人間は国家とどう向き合い、国家をどう乗りこえるか 第8回

5)東大紛争 加藤総長代行執行部として (1)
 警察権の行使を学内で認めないという「大学の自治」は、1968-1969年の大学紛争のときに大きくかわり、もはや警察不介入という意味の「自治」を取り戻すことは難しくなった。東大医学部紛争は1967年3月インターン制度にあり方をめぐって、36大学の2400人の青年医師連合が医師国家試験ボイコットをし、医学部がストライキに入ったことから始まる。東大医学部の自治会は1968年1月29日から無期限ストライキに突入し、医局長の「つるし上げ」を問題とした医学部当局は2月12日、4名の退学を含む17名の学生の処分を決定した。ところが処分した学生の選び方が恣意的で、つるし上げに参加していないアリバイのある学生まで処分した。当時の医学部長は豊川行平氏、医学部付属病院長は上田英夫氏でタカ派として知られ、大学評議会議長の大河内一男総長は医学部の教授会に差し戻し検討をお願いしたが、豊川・上田氏は強硬に処分を主張したころから事態をこじらせた。確かに医学部の教授会は権威主義的な面が強く、法学部教授会は大変リベラルであった。権威主義的な面が強い学部は文系では文学部、理系では医学部と相場が決まっていたようだ。その年の卒業式は総長が出席しない事態でとりやめになった。入学式は教官が警備に狩り出され、何とか開催できた。こうして話し合いを避ける総長に対して、6月15日学生は安田講堂を占拠し、6月17日大河内総長は機動隊を導入した。大河内総長は別にタカ派ではなく通常はむしろ左翼のハト派だったのだが、学生との対話ということが出来ず事態を悪化させるばかりであった。ここまでは総長のパーソナリティに問題があったようだ。大学は夏休みに入って何とか解決のめどをつけるため、①総長辞任、②医学部長と病院長の辞任と医学部処分再審査、③安田講堂占拠・ストライキ中止、暴力的行為の抑止を骨子とする8月10日告示を準備したが、毎日新聞がこれをスクープしたため総長がむくれて破綻した。
(つづく)

読書ノート 斉藤貴男著 「民意のつくられかた」 岩波書店

2012年04月30日 | 書評
民意偽装・調達・操作のテクニックー原子力安全神話の結末 第10回

5) 五輪招致という宣伝戦略
 2016年夏期オリンピック招致活動が膨大な金を食う事は、2009年度都議会での石原都知事への質問で明らかにされた。IOC総会で破れた東京都は懲りずに、2011年6月に都知事は2020年夏期オリンピック招致を目指すと発表した。オリンピックの数兆円の経済効果はお題目に過ぎず、この強引なオリンピック招致運動の本当の狙いは、東京臨海都市開発と公共事業にある事は明らかである。それも国から税金をふんだくってやるというのだから論外である。しかしそのための数百億円にものぼる招致運動の活動費は潤沢な東京の財源から出ていた。タレント、運動選手、さらに子供まで動員して宣伝に努めたが、IOC総会ではブラジルのリオに敗れた。その敗因を分析して、国民と都民の支持率が低かった事(国民の59%の支持)を挙げ、2020年オリンピック招致活動では開催への支持率向上に邁進するという方針である。そのための手段はもちろんメデイア戦略による世論誘導である。石原都知事の親友である読売新聞の渡辺オーナーの協力は明白である。東日本大震災復興をさえ味方につけ、東京一極主義の露骨なエゴをむき出しに、「大震災天罰発言」という嘘と不誠実と暴力という石原都知事の稀に見る専制君主振りには許せないものを感じる人は多い。
(つづく)

読書ノート 渡辺純夫著 「肝臓病ー治る時代の基礎知識」 岩波新書

2012年04月30日 | 書評
肝臓が心配なあなた 早やめに診察を 第12回 最終回

4)他の肝臓病 (3)
④ 肝膿瘍
細菌が腸管から胆管を経由して肝臓に感染することは滅多にないが、免疫能が低下している場合に肝臓に膿の溜まることがある。発熱があり、超音波検診やCT検査で発見される。普通は抗生物質を投与するとよくなるが、それでも治らないときは肝臓に針をさして排膿することもある。赤痢アメーバーが原因で発熱、腹痛があり、大きな膿瘍(直径8cm)が出来る場合がある。

⑤ 原発性胆汁性肝硬変
中年以降の女性に多い病気である。肝臓の胆管が消失してしまうのが特徴で黄疸を発生する。難病のひとつで日本では5000人の患者が居る。血液検査で胆道系酵素(ALP,γ-GTP)やビリルビンの上昇となる。そこで抗ミトコンドリア抗体が陽性にでて、免疫グロブリンのIgMが高値を示したら、肝生検をして確定診断を行う。原発性胆汁性肝硬変の治療薬として、昔から苦い黒い「熊の胆」といわれたウルソデオキシコール酸が良効く。70-80%は快方へ向かう。進行すると免疫抑制剤やステロイド剤を投与して様子を見て生体肝移植の機会を待つ。
(完)
 

筑波子 月次絶句集 「梨雪闌珊」

2012年04月30日 | 漢詩・自由詩
江城梨雪已闌珊     江城梨雪 已に闌珊

剪剪春風陣陣寒     剪剪たる春風 陣陣と寒し

吹送堆紅軽入座     堆紅を吹き送て 軽く座に入り

月移花影淡当欄     月は花影に移て 淡く欄に当る


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(韻:十四寒 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)

CD 今日の一枚 グレン・グールドピアノ演奏全集 「リスト編曲 ベートーヴェン交響曲第5番、第6番」

2012年04月30日 | 音楽
グレン・グールドピアノ演奏全集 「リスト編曲 ベートーヴェン交響曲第5番、第6番」
ピアノ:グレン・グールド 
ADD 1968 SONY CLASSICAL


これでピアノの鬼才グレン・グールド全集は終わりです。このような人もいた事を記憶に留めて置いてください。明日からは中島みゆき歌曲を掲載します。