生誕150年記念 クリムト ―黄金の騎士をめぐる物語― を鑑賞しました。
鑑賞し終えた時、「結局私はクリムトについて何もしらなかったのだ」という実感がつよく残るよい展覧会でした。
もし、焼失した傑作「ウィーン大学講堂天井画」が当時絶賛され、今も作品が残っていたら
そのあとクリムトはどこへ向かったのだろうか?
あの黄金様式は生れたのだろうか?そう考えずにはいられなくなりました。
ちょうど一年前、当店で杉山寧展を開催させて頂いた時、
「非凡な描写力を持つ天才的な画家にはきっと、その“絵描きにしか見られない世界“をみることができるのだろう」と感じていましたが、
今回の展覧会で、クリムトの初期作品の圧倒的な描写力を見て、また無限に自由なウィーン大学講堂天井画の資料画像に大感激をして・・まったく同じことを思いました。
絵描きにしかみられない世界。
本当はそれこそが真の絵画芸術の世界なのだろうと思います。
愛知県美術館の入口から出口まで
琳派や若冲などの江戸時代の画家、青木繁など日本の近代画家、ヨーロッパ宗教画、印象派の画家・・とにかく多くの作家にいっぺんに出会ってしまったような展覧会でした。
画像はクリムトの画集から
1905年の「人生の三段階」です。
ちょうど前回高山辰雄さんの「いだく」を載せさせて頂いたので、同じような母子像を選んでみました。
この老女の存在が晩年のクリムトの死生観を描いているのだと思いますが、
この点が高山辰雄さんの東洋的な死生観とずいぶん違っているように感じています。
愛知県美術館でのクリムト展は2月11日まで。
そのあと、長崎、宇都宮の美術館を巡回予定です。