もう、なにか、、この箱書を見ているだけで満たされてくる想いというものがあるのではないでしょうか。
私は夏美という名を父母に付けて貰い、今迄「夏」という文字をどなたよりも多く書かせて頂いていると思うのですが、時々はね、こんな風に軽やかに自分の名前を書けたらよいなぁと思います。
麻布を用いた涼やかな表装。
夏らしい木立の中で子供たちを前におじさんがお魚を捌こうとしているのですね。
横にあるのは井戸でしょうか・・竿のようなものもありますね。
おじさんの持つ長い柳刃?包丁と手前の男の子の「見る気」の伝わる緊張感が
なんとも言えないリズムを生んで、可愛らしい作品です。
小さなお軸、しかも一見なんとも地味な作品ですが、こういったところにこそ、放庵という画家の面白さは
あるのだと思います。
箱書の鑑賞から始まるお軸の楽しさ。「暮らしっていいな。生きるっていいな。」そう
思わせてくれるのですね。
いまだ醒めず。未醒は放庵の若い頃の雅号です。
やっぱり佐橋はお酒好きの画家が大好きです。
※小杉放庵 軸 「初夏」紙本・彩色 共箱 32.7×25 150,000