つれづれ

名古屋市内の画廊・佐橋美術店のブログ

今日の佐橋美術店

2020年03月18日 | 日記・エッセイ・コラム

事務室の目隠しに使っておりました池田満寿夫の「鶴亀」の屏風をギャラリーに出しました。

 
お元気でいらした頃は、この方の作品について何も感じることはありませんでしたが、今触れてみると、その感覚、センスには素晴らしいものがあると思えます。
 
 
 


 


さて屏風を出すと決めたものの、その隣にどんな作品を置くかで少し迷いました。
 
屏風の天地のヘリの色と印象の額のマットの色が偶然合い、しっくりと馴染みました。
 
反対の横には、小杉放庵の老子です。この作品の寛容さは時代を超える気がいたします。
 
 
 


 
 




織田廣喜 麻布に油彩 「パリ街角にて」
 
 


小さいながら高価な作品達。ちょっと贅沢なミニコーナーです。
 
福井良之助「化粧」と佐藤忠良の「猫」との相性は抜群だと思えます。
 
 
 


 牛島縁と言われる額は卓越した技術を持つ宇佐美兼吉さんという職人さんが作っていらしたものでした。その職人さんが亡くなられて、お弟子さんたちが技術を受け継ぎ、試行錯誤の上、現在当初に近いものを制作してくださるようになりました。
 
美術品の作品自体の価格の低下で、軸や額を作り直したり、修理したりする余裕を、まず画商が失ってしまいました。
そして、それは額や軸を作ったり、修理してくださる方達の技術の伝承を途絶えさせてしまう結果ももたらしています。
 
乾燥したヨーロッパで制作された作品を湿度の高い日本で長く保存するのが難しいと言われるように、日本には日本の風土にあった作品、それを永く守ってくれる軸装、額装の技術も必要なのだと思っています。
 
 
前回の波光の作品で触れたように、一流の画家は自身の作品を永く後世に残す為の企みを技術の高さに隠しています。
 
物故作家の作品を扱う、収集するということは、画家達の遺志を継ぐ、また作品の後世への生き残りを応援するという事でもあるのですね。
 
箱からの出し入れを重ね、飾ったり、しまったりしながら、作品を時代、時代の新しい空気に触れさせる。
 
その事によってカビや劣化のリスクを下げてあげる。

物言わぬ美術品と暮らす、面倒をみてあげるという作業は並大抵の愛情では続かないものです。
 
 
今週は特に、多くのお客様方にご来店やお電話、メール、コメントなど色々と頂戴致しました。
 
私たちの店は、いつもこうしてお客様方の温かいご支援をいただいて、何とかここまで続けてくることができました。
 
消費税の引き上げや今回のウィルス騒ぎで、今も心配事には事欠きませんが、ピンチに出会うたび、当店をお見守りくださる皆さまのお優しいお気持ちが強く感じられ、勇気をいただきます。

美術品を愛する方たちと共に、明日からまた頑張って参ります。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 
 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする