あを雲の涯

「 二、二六事件て何や 」
親友・長野が問う
「 世直しや 」
私はそう答えた

肅軍に関する意見書 (13) 書簡 ・ 村中孝次

2017年04月12日 18時17分32秒 | 肅軍に關する意見書


書簡  村中孝次  

粛敬
内外危急多端の秋 愈々以て御清祥奉賀候陳者
不肖所謂十一月廿日事件の眞相に關し永く口を緘して語る事を避け来り候ひしも、
今や其の闡明せんめいを必要とし妥当とする時機に到達せるを以て、
三長官に呈出せし意見書の冩を敬呈仕候間之れに就き 五究明の程奉願候
昭和維新の唱導既に數歳を閲し申候
所謂 「 國家改造 」 とは國民物質的生活の外包的部分に就て言ふ、
其の根基たり終局たるは國民精神の神的革命による國體的覚醒、
道義的飛躍ならざる可らず、
然るに単に 「 制度機構の改造 」 にのみ寠ろう身するが故に、獨裁主義、
國家社会主義、共産主義乃至幕僚中心主義的黒体國體背反の中世思想に堕し、
或ひは三月事件と謂ひ十月事件と言ふ反逆的暴擧を企圖し將
又自我私利私欲隠謀の非道義を恥ぢざる所のものあり、
純正維新開展の過度的現象として或ひは見るべしと言ふと雖も
皇國皇軍の本義に於て寛如是認を許さざるものもあり、
天佑なる哉 「 天皇機関説 」 問題の起るありて
「 機関説排撃 」 「 國体明徴 」 の囂々きょうきょうたる輿論よろんは激端に奔騰飛方に
是れ 「 天皇の原義 」 を確認し國政私配の中間存在を一掃し
國家の根柱國民の中心生命たる天皇に対し奉り、
挙民直參輔翼の國魂に覚醒すべき秋、
而して全國民の此の國體的道義的人格覚醒を基盤として百世貫徹、
万國首導の大乗道義國家たる政治的經済的機構を確立すべきなり、
皇軍現下の紛淆ふんこうを斷離して擧軍不動の統一を具現するの途は
一は 「 維新 」 の神髄を把握して
興國的潮流の源頭に立つことに據ってのみ期待し得べし、
これを是れ 「 維新的擧軍一体 」 と可申候
建軍の根本使命に立ち 「 維新 」 の大旆だいはいを樹つべく
斷じて低徊願望を許す可らず候
降暑酷烈の砌乍みぎりながら邦家の為め切に御奮の程祈上候
拝具
昭和十年七月
陸軍歩兵大尉 村中孝次
玉鞍下

二伸
別冊意見書は軍内事情に關するものに就き部外に対し嚴

・・・目次頁  粛軍に関する意見書 に 戻る