嶋津隆文オフィシャルブログ

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象グループ設計の沖縄の名護市庁舎、その光と影

2011年06月03日 | Weblog

写真:「あれから30年の名護市役所庁舎」本人撮影

写真をご覧ください。昭和56(1981)年に象設計集団が手掛けた名護市庁舎です。「自然を受けとめ、自然に親しむ」を原則とし、沖縄の気候や風土を重視した伝統的な建物を作るとして設計されました。その年の日本建築学会賞を受賞します。一つの「事件」ともなったこの話題のこの建物を見たくて、完成直後に沖縄に足を運んだものでした。

あれから30年。(・・綾小路きみまろ風の口ぶりですが(笑))。

現在の名護市庁舎の評価を知りたくて、今回あらためて名護市に向かいました。風格ある外観は歳月を重ね、一層この地に溶け込んでいるように見えました。しかし職員の話しを聞いて、驚愕させられました。

人口の空調を使わず、自然の風を流す「風の通り道」として庁内に設けられて通気窓は、その機能を果たさず随所にクーラーが設置されていたのです。「いや、もう10年以上前からですよ、空調を入れたのは。暑くて暑くって何人もが熱中症になりましたから」。

そう解説してくれた職員はさらにこう付けくわえました。「今年からはエレベーターも設置されました。高齢者には階段を上るのは大変なんです。階段の後ろの隙間に取り付けたんです」。

理念と現実との乖離。沖縄には建築物に限らず、政治にも経済にも、こうした生活する住民との思いの隔たりが随所にある。そう思い、些か気持ちをふさがれて名護の地を後にしたものでした。

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