嶋津隆文オフィシャルブログ

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檜枝岐村は殆ど「星」「平野」「橘」の3つの姓

2021年08月03日 | Weblog

檜枝岐村の屋根は赤錆色に統一される

檜枝岐を「ひのえまた」と読める人は多くはない。しかし知る人ぞ知る、尾瀬の登山口であり人気の秘境温泉地である。人口500人余。東北で一番人口の少ない村だ。
取材で訪れた檜枝岐村だが、特筆すべき珍しい事実がある。NHKでも特集された。村人の姓の9割がわずか3つで占められているのだ。「星」5割、「平野」3割、「橘」1割。「星」は平安遷都に伴う権力闘争に敗れて移住した藤原一族(藤原の「星の郷」から名乗った)の系譜で、「平野」は源平合戦に敗れた平家の末裔、「橘」は織田信長に追われ村に移った伊勢の治田城主の一統に由来(橘はその家紋)する。1200年前の藤原(星)、800年前の平家(平野)、400年前の伊勢の楠の末裔(橘)が、奇しくも400年ごとの節目をもってこの地に移住してきた。まさに日本史の舞台である。
しかし3度にもわたって落人の隠れ地になったというのは、この村がいかに生活するのに困難な土地であったことの証だろう。かつては「犬は飼わない」「鶏は飼わない」といった習慣があったという。人目に付かず、ひっそりと暮らすことが余儀なくされたからだ。
その長い苦渋に伴う連帯が、今この村の命となっている。尾瀬人気の減退、福島原発の風評被害、そして「昨今のコロナ禍。そんな中で民宿・旅館業は、客を分け合いリピーターを大事にし、人との絆のなかで苦境を乗り越えようとしているのだ。
檜枝岐には1000年余の共助のDNAがある。そう気づくとひどく心楽しくなったものである。

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