写真:「なかなか死ねない彼岸花咲く」(山頭火)
今年の秋は遅く、曼珠沙華(彼岸花)で有名な日高町の巾着田の咲きもまだまだのようです。にも拘わらず彼岸は暦にしたがって着実に到来し、昨日今日、お墓参りと思われる家族の連れ添っていく姿が散見されます。
それにしてもこの歳になってみると、親戚や知人、友人の死に頻繁に遭遇することになっていることに気づきます。ここ何年かの友人だけでも、すぐに5指を越えてしまい、しばし言葉を失います。寂しいものです。
「曼珠沙華 抱くほどとれど 母恋し」
女流俳人の中村汀女の作です。彼岸の季節のたびに思い起こされる句です。この汀女が逝かれたのは20数年前の9月の彼岸の入りの日でした。私の母が逝ったのも10数年前のこの9月でした。
それだけの偶然に過ぎないのですが、汀女の一句はこの季節の私には常に鮮烈に響くのです。多分それは、曼珠沙華がもつ戸惑う程に強烈な形相と色彩に、「恋しさ」の深さが滲むからではないでしょうか。