5月24日

 多和田葉子『きつね月』を再々読した。
 
 二度と同じ模様にならない言葉たちの万華鏡をのぞくよう。

 “ほとんどの単語は平和条約を結び合っている。ぶつかり合うことがあっても、すぐに抱き合ってしまう。相手の顔を見なくても済むように。(略)ふたつの単語が出会って、わたしたちの自由を奪う。たとえば、巨匠と文学、声と民主主義、休暇と自然。うんざりするような組み合わせを見ると、肺に力が入らなくなる。”

 “文字たちと尼僧たちは海に向かって走り出し、睡蓮の刺を探すために、衣の裾をめくりあげて、ひらひらと砂浜を渡っていく。自分の肖像画と似ている人が滅多にいないのと同様、昼食の席で緑色のくしゃみをしながら熱帯の沼地を思い浮かべる人間もめずらしい。”

 

 

 

 

 

 雲雀料理の後にはどうぞ空の青映しだしたる水を一杯
  ──尾崎まゆみ『微熱海域』  

 五月を惜しんで‥(´ー`)
  

 雲雀料理
 五月の朝の新緑と薫風は私の生活を貴族にする。したたる空色の窓の下で、私の愛する女と共に純銀のふおうくを動かしたい。私の生活にもいつかは一度、あの空に光る、雲雀料理の愛の皿を盗んで喰べたい。
  ──萩原朔太郎『月に吠える』

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