マリオ・バルガス=リョサ、『ドン・リゴベルトの手帖』

 『ドン・リゴベルトの手帖』の感想を少しばかり。

 “「ママがいないからさみしいよ」 聞き覚えのある声が歌うように言った。” 7頁

 ふふふ、こちらも素晴らしく面白かった。幻想も官能もますます磨きがかかっており、えも言われぬ酩酊感を存分に堪能した。エロスと想像の翼のめくるめく閃き…!
 とりわけこの作品では、ドン・リゴベルトの活躍(?)が愛おしい。類まれな偏愛症といい、儀式と空想の世界といい、ルクレシアを恋う狂おしさといい、そのダンボの耳だって…。堕天使フォンチートのエゴン・シーレへの傾倒ぶりと、エゴン・シーレの人となりや絵画をめぐる考証にも、ぐっと引き込まれた。そして麗しのドニャ・ルクレシアは、艶やかな七変化を見せつける(妄想から妄想へ…)。
 既にあることが起きてしまった後の話でありながら、最後の最後まで息を吐かせない展開なのには、ほとほと舌を巻いた。

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