皆川博子さん、『骨笛』 再読

 皆川さんにどぷり…。まだしばらく浸っていたい。今回も再読。妖しく哀しく、怖い連作短篇集です。
 『骨笛』、皆川博子を読みました。 

 くっきりとした輪郭と、危なげな魅力をあわせ持つ少女たちの棘に、うかうかと刺される「沼猫」や「夢の雫」。生者と死者の何気ない出会いと、透明な交流を描いた「月の光」、「冬の薔薇」…などなど。どこがどう繋がっているのか、散りばめられた符牒を掬い上げていく楽しみは、連作集ならでは。

 嗚呼、それにしても。
 小説の中の少女たちは、どうしてあんなに不思議な存在になれるのだろう? そう、例えばまるで猫の化生でもあるかの如く。 
 残酷で無垢で、気まぐれ…かと思うと頑な。くねりくねりと捉えどころがない。そして、とても気むずかしい。いつか失われることを約束された上での、一瞬の煌きのように研ぎ澄ましたその魔性を、惜しげもなく見せつけてくる。あくまでも観念的にのみ存在し得る、物語の内側に永遠に縫い止められた…そんな、少女たち。
 マユ、泉、そしてミオ…。からかうように嘲るように、そして徒に誘うように、私の瞳の奥を覗き込んでは身を翻し去っていく。それはそれは軽やかに、私の行けない向こう側へと。 

 この、常識という名のクリームをまんべんなく塗り付けた物憂い世界にも、繋ぎ止めてくれる大切な存在がある限り、私はここから逸脱することはない。それは、分かり切ったことだけれど…。ほんの束の間の、現実からの逃亡。その感覚に、溺れさせてもらうこと。皆川作品を読む醍醐味は、そんなところにあるのやも知れず。ただただ、うっとりと。
 (2006.8.11)

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コメント
 
 
 
朗報。 (きし)
2006-08-12 00:11:42
嬉しいです~。梨木さんの作品の中では気軽に読める作品なので好きなのです。

単行本があるくせにすっかり買うつもり(笑)
 
 
 
 (ことは)
2006-08-12 00:54:22
『家守綺譚』

おぉ!本当ですか、すごい!!

大好きなのです。家守。

来月は『夜のピクニック』もあるし楽しみです!

皆川さんの本は未読ですが、この間からこちらでいくつか感想を拝見してると、すごく深い世界・・というか重圧感?たっぷりの世界が思い浮かびます。気になります・・が、怖そうで手にとれず(汗)
 
 
 
>きしさん (りなっこ)
2006-08-12 08:44:21
あ、単行本お持ちなんですよね。 

装丁が気に入っているので、余程買ってしまおうかと、何度も思ったんです。

いつも、単行本と文庫本で、表紙を変えてないですよね?

あのままがいいなぁ・・・。
 
 
 
>ことはさん (りなっこ)
2006-08-12 09:02:29
『家守綺譚』、おお、ことはさんもお好きと。

ますます、読みたい読みたい。



皆川さんは、

>重圧感?たっぷりの世界



あ、それあるかも知れません。

あまり、誰にでもおススメ出来る作家さんではないです。

好きな人には堪らない!っていう、根強いファンからの支持の高い作家さんでしょうか?

とりあえず、気にしておいて下さい(笑)。 いつか縁があるかも?
 
 
 
Unknown (tomekiti)
2007-05-10 20:23:01
こんばんは♪
『骨笛』読み終わりました!
危なく現実から逸脱した少女たちの物語でしたね。
こうやって繫がっていたのか~という切れ端の繫がりを追っていくのがなんとも楽しかったです!
 
 
 
>tomekitiさん (りなっこ)
2007-05-11 17:48:22
『骨笛』もなかなか良かったですよね。
やっぱり皆川さんは、短篇も素晴らしいですもの。 

tomekitiさん、どんどん読みすすめられていますね~。 
 
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