清水博子さん、『カギ』

 『カギ』、清水博子さんを読みました。 

 この小説は、2002年1月1日の冒頭から一年後のラストまで、ほぼ交互に並べられた姉妹それぞれの日記から成っています。ウェブ上で日記を公開している妹と、パソコンで自分だけが読む日記を綴っていく姉。読まれることを意識した日記と、自分のためだけの日記…。この二人の姉妹の仲と、彼女たちを取り巻く人間関係等については徐々に明らかにされていくのですが、いちいち喉につっかえて上手く飲み下せない。特に妹の存在が、かなり薄気味悪くて喉の異物感。
 妹のウェブ日記を読んでいると、時々虚構が入り混じっているのですがそれは大目に見るとしても…(実はブログってそういうものかも)。それ以上にひっかかるのが、ちらちらと覗くいびつな選民意識のようなものだったり(西宮市在住だけれど芦屋出身とか、執拗に言っている)、ブランドの知識を継ぎ接ぎしただけの幼稚な上昇志向だったりします。そしてそこを他人から揶揄されても、未成熟で凡庸な彼女の自我にはあまり堪えないでし、それどころかどんどん打たれ強くなっていくようです。苦笑をもらしながら読んでいる内に、背筋が寒くなってきます。

 何だか妹が不気味だな、異様だな…と読み進んでいくと、異様なのは妹だけではなく姉妹の関係も相当に歪んでいるのがじわじわとわかってきます。その辺からはもう、まるでホラーのような様相を呈します。そこからが俄然面白くもあり、一筋縄ではいかない作者の企みに舌を巻きました。 
 ウェブ上で日記を公開している妹と、パソコンで自分だけが読む日記を綴っていく姉。設定のからして秀逸ですね。日記を盗み読み合う姉妹…これだけでホラーの要素がありますわ。ぞわぞわっ。
 (2007.6.14)

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