7月に読んだ本

7月の読書メーター
読んだ本の数:13
読んだページ数:3961

「烈女」の一生「烈女」の一生感想
未だ、悪人ではなく悪女。烈士ではなく「烈女」…。先日名前を聞いたばかりの相馬黒光(実業家)やプーラン・デーヴィー(盗賊・政治家)、マーガレット・ミード(文化人類学者)の章など、初めて知ることも多かった。ほんの上辺しか知らなかったことも。カミーユ・クローデルについては湯原かの子の著作をかつて読んだが、彼女の無念を思うと何度でも胸が痛くなる。
読了日:07月31日 著者:はらだ 有彩
グールド魚類画帖グールド魚類画帖感想
再読。素晴らしい。暴政が横行する流刑地タスマニア(まず司令官は発狂)。その暴虐と理不尽な死に満ちたクソな世界への怒りと抗議を記して、それでも語り手ビリー・グールドは己の書き連ねた「魚の本」を“愛の物語”と呼ぶ。そしてゆっくりと声なく死んでいく魚の絵を描くとき、“ほんの一瞬の真実”をそこに宿らせたのだと言う。牢に籠められ錯乱気味にもなりつつ、狂った世界へ向かって「絶望してやるもんか」と唾を吐くような手記の凄まじさとその孤独よ。(タツノオトシゴはウロボロスの竜へ…。ぐるり)
読了日:07月30日 著者:リチャード・フラナガン
翔ぶ女たち翔ぶ女たち感想
頗る面白かった。野上弥生子、ヴァージニア・ウルフ、オースティン、シルヴィア・プラス、『エブエブ』『年年歳歳』『水星の魔女』などなどなど…翔べなかった女たち(エヴリンは翔んだけど!)がここに会し、縦横無尽に繋がり合う。思いがけず、でも説得力がある。とりわけ3章「魔女たちのエンパワメント」では『白鶴亮翅』『マクベス』にも話が及び、魔女というテーマにも魅かれてとてもよかった。魔女が排除されてきたこと(家父長制社会が「悪魔」とみなすのは、女性の自立を目指す思想と生き方)、まだ続いていること。その為のエンパワメント
読了日:07月23日 著者:小川 公代
沈黙の中世史 ――感情史から見るヨーロッパ (ちくま新書 1805)沈黙の中世史 ――感情史から見るヨーロッパ (ちくま新書 1805)感想
中世ヨーロッパの人々にとって言葉とは声であり、キリスト教世界はうるさく声と音とで統治された。一方、沈黙に近いあり方が美徳とされ、沈黙は聖性に結び付けられていく。そして聖職者の座から追放された敬虔な女性が口を開くのは、預言者や男性の仲介者の役割としてだった…。第五章“聖女の沈黙”ではベギン(半聖半俗の女性たちの活動)について頁が割かれていて、興味深い内容だった。心身の服従を示す為の沈黙、その沈黙がどんな人物たちによって如何に破られていったのか…という過程をめぐる論考であり、感情史としてとても面白かった。
読了日:07月19日 著者:後藤 里菜
星旅少年4-Planetarium ghost travel- (パイコミックス)星旅少年4-Planetarium ghost travel- (パイコミックス)感想
久しぶしで嬉しくて1巻から読み返してしまった。どっぷり浸って満足。今回は、ジリとスミヒトとピピの幼馴染みが顔を合わせた時の雰囲気も好きだった。美味しそうに料理が並んだテーブルの上、部屋の中の細々としたところや背景の街並みまで、いつまでも眺め飽きない。
読了日:07月17日 著者:坂月 さかな
中野京子と読み解く クリムトと黄昏のハプスブルク中野京子と読み解く クリムトと黄昏のハプスブルク
読了日:07月16日 著者:中野 京子
年年歳歳年年歳歳感想
小川公代『翔ぶ女たち』の前に読んでおきたくなった。声を摘み取られてしまう側にいるひとたちに言葉を与える物語、として。祖父の墓参り(ちゃんとした食器や供え用の料理の大荷物の用意をして、軍事境界線近くの山奥まで…)に拘る母イ・スンイルの昔ながらの信仰のこと、彼女のネガティヴ・ケイパビリティ、母娘でアルファとベータが交互することについて…など思う。“あの子にはそこで生きろと言ったのに、私にはどうしてそう言わなかったの。/帰ってくるなと、/おまえが生きやすいところにいろとあの子には言ったのに。”
読了日:07月15日 著者:ファン・ジョンウン
スピン/spin 第8号スピン/spin 第8号
読了日:07月12日 著者:恩田陸,尾崎世界観,斉藤壮馬
紙魚の手帖Vol.17紙魚の手帖Vol.17感想
お目当ての、川野芽生「不死者の物語──女生徒」を(大好き)。あと、久しぶしに翻訳ミステリを読みたくなった。
読了日:07月12日 著者:貫井 徳郎,堂場 瞬一,川野 芽生ほか
リーディング・リストリーディング・リスト感想
素晴らしい読み応え。学生に“史上最悪の教授”と酷評されたレスリー(日系四世)は、父親にリーディング・リストを作って欲しいと頼まれる。薦めた本(小説を読んだことがない人にいきなりがっつり系)を自分も再読し、内容に自身を取り巻く状況を重ねたり、登場人物を元恋人や親族の誰かに準える読み方をしてしまう(研究者には向いていないらしい)。その一方、同じ本を読みながら父親と向き合い、エキセントリックな一族の秘められた部分を知る。レスリーの鬱状態は酷くなるばかりで、はらはら目が離せなかった。最後の章で胸がいっぱいになった
読了日:07月11日 著者:レスリー・シモタカハラ
デカメロン 下 (河出文庫 ホ 6-3)デカメロン 下 (河出文庫 ホ 6-3)感想
八日目から最終の十日目まで。一篇、また一篇と読んできてとても楽しかった。ただただ唖然とする話も幾つかあって女性の扱い酷いけどw、それも含めての「これが『デカメロン』か…」と面白かった。
読了日:07月09日 著者:ボッカッチョ
『スタア誕生』『スタア誕生』感想
再読。先日読み返した『噂の娘』の姉妹作(内容は続篇なのだが刊行には16年の隔たりがある)。少しずつ変わっていくモナミ美容室と、そこに流れる女たちの時間、主人公の両親のその後のことも、映画女優を夢見る “金魚の娘”みっちゃんの更なる奮闘も、小さな記憶の齟齬を交えながら語られていく。零れていく。“キラキラした明かるい虹色の光のせいで、そこはいつも時間が失われているようなのだ”
読了日:07月03日 著者:金井 美恵子
シャドウプレイシャドウプレイ感想
素晴らしかった。舞台はヴィクトリア朝ロンドン。ブラム・ストーカーが『吸血鬼ドラキュラ』の執筆に至る経緯が、当代一の二人の名優との何とも名付けがたい交わり(深い愛も狂おしい嫉妬も憧れも)を軸に語られる。作中には『ドラキュラ』からの引用や目くばせ、仄めかし、名優アーヴィングが得意としたシェイクスピア劇のセリフの引用やもじりなど惜しみなく鏤められている。繊細で人に優しく夢見がちだったストーカーが、その想像世界の中では邪悪な流血の物語を生み出していた…ということ、その、誰にも見せない昏い顔を持つ人物造形に感嘆した
読了日:07月01日 著者:ジョセフ・オコーナー

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