映画、「告白」

 話の内容には触れません。ちょっと後で思ったことだけ。
 
 パンフレットに載っている松たか子さんと木村佳乃さんのインタビューが良かった。特に松さん。あの役を演じた人でなければ言えないだろうな…と思える言葉があって、ふーむと唸った。そしてこの印象が小説を読んだ時にどう変わっていくのか、それも楽しみだ。
 
 その二人の女優の演技が本当に素晴らしかった。一緒にいる場面はほとんどないのに、拮抗していてまさに対決という感じ。
 とりわけこの二人の役柄は、ある意味凄く対称的だと思った。片や、自分を囲んでいた色んな枠組みを全て取っ払って外側へと逸脱してしまった元高校教師で、片や、閉ざされた枠の中の狭い世界を必死で守ろうとしていた専業主婦。多分後者は、枠の存在も知らなければ当然、その枠の外側までも世界が広がっているなんて考え及ばないような人物として描かれているように感じた。木村さんの言葉に寄れば、“キャパシティが少ない”。そしてもしかしたら悠子にはそれすらも、同情の余地もない脆さに映ったのだろうか。やがて怒りになるほど。

 映画や小説には、現実にはまずあり得ないしあってはならないこと、現実の世界では「ちょっと試してみるか」という訳にはいかないようなことの一つの仮想の結果を、作品と言う形で見せてくれている一面がある。投げかけるように突きつけるように。だから当然そこに必要なのは圧倒的な説得力で、それがなければお話にならない。
 その作品の中の何処が正しくて何処が間違っているのか?は、受け手側の各々がきちんと考えるのが礼儀だと思う。倫理に反していても悪徳でも、あえて提示している作り手側の覚悟って凄い…と思う。そこに感動する。

 繰り返し繰り返し、空の映像が流れるのだった。まるで途方に暮れた誰かが空を見上げて、答えを求めているみたいに。薄紫の混ざった白い雲がいくつも浮かんで流れていく、空。
 スクリーンいっぱいに空が映ると、ふっと一瞬だけすくわれるような気持ちになったけれど、やり切れないほどに美しい空は、やっぱり哀しい色だった。
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