エリザベス・ボウエン、『リトル・ガールズ』 再読

 『リトル・ガールズ』の感想を少しばかり。

 “十一歳。幼い少女たち(リトル・ガールズ)なんて、意味をなさないでしょう」” 48頁
 “でも、人って、何がないから寂しいのか、それを知らなくても寂しいのよ。” 242頁

 再読。素晴らしい読み応えだった。読み返してみて、ますます大好きな作品になった。
 ボウエンの描く少女たちは、一人一人がくっきりとした輪郭と閃光の如く忘れがたい鮮やかな魅力を持っている。無垢で寄る辺ない風情でありながら、まだ幼いなりに誰にも寄りかかろうとはしない女の子たち。そして殊にこの物語では、戦争故に11歳で別れてしまった3人の少女たちが、その後何十年も経て、各々がすっかり老魔女に成りおおせての再会を果たす。その三者三様な魔女ぶりと(曰く、“大鍋がぶくぶく、ぶくぶく、ってね”)、彼女たちの辛辣なやり取りも頗るよかった。
 わがままで気難しくて同情心もあまり持ち合わせないわよ…と、そんな一筋縄ではいかなかった元少女たちだから、抱き合って再会を喜ぶ…とはならない。そういうべたべたは一切なし。でもだからこそ、別離以降の互いの人生について少しずつ空白を埋めていく件は、静かに胸に沁みてくる。

 元々好きな相手ではなかったのに、いつの間にかいつも一緒にいた女の子同士の感覚が、見事に掬いとられている。偶々何となく友達になって、苛立ちや疎ましさを隠し合い(隠しきれず)過ごした幼き日々。そこにかけがえのない時間が流れていたなんて、ずっと後になるまで知る由もない…。 

 大人たちの不倫の愛を、何も気付いていない少女に目撃させる場面の美しさ。
 マクベスからの引用の多さ(ふふふ…)。強かなオールド・ガールズ、素敵だ。

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