3月に読んだ本

2015年3月の読書メーター
読んだ本の数:23冊
読んだページ数:7939ページ

七人のおば (創元推理文庫)七人のおば (創元推理文庫)の感想
再読。憶えていた以上におばさんたち強烈!
読了日:3月31日 著者:パット・マガー
イザベルに: ある曼荼羅イザベルに: ある曼荼羅の感想
この時をせめて引き延ばしたい…と、ふと立ち止まる。染み入る文章の心地よさ。どこへたどり着くとも知れぬまま運ばれていく旅は、またレクイエムの変奏でもあり。当時の事情と思惑に覆われ、折り重なる時間にかき消されたイザベルの足跡を、曖昧な記憶を繋いでタデウシュが手繰りよせる。それは幽し糸なのに、ちゃんと導かれているようだ。イザベルはどんな女性だったのだろう…と思いを馳せつつ頁を繰ると、ゆっくり少しずつヴェールが解かれていく。その按配も素晴らしい。薄灰色の雨空が似合うと決め込んでねぶねぶ浸ったが、最後は風に払われた
読了日:3月29日 著者:アントニオタブッキ
氷: 氷三部作2 (氷三部作 2)氷: 氷三部作2 (氷三部作 2)
読了日:3月27日 著者:ウラジーミルソローキン
紙葉の家紙葉の家の感想
「でも真空。そもそも真空……」と、我に返るたび気が遠くなった。異様な虚妄に取り憑かれた老人ザンパノは、どこにも存在しない家を真空の幹に据え、『ネイヴィッドソン記録』を創り出し、そこにわっさわさと枝葉を繁らせ絡ませた。煩雑に執拗に。真空故にこそ話を盛るのか。強迫観念か。その尽きない狂った熱はいったい何処から…と、空恐ろしくなりつつ引き込まれた。彼の心に「家」の妄念が巣食うことになった事情は、謎のままで残される。まさにそこがホラーだったよ…。あと、ジョニーが憑かれていく様はザンパノのエコーのようだ。面白かった
読了日:3月26日 著者:マーク・Z.ダニエレブスキー
ぼくらが女性を愛する理由 (東欧の想像力)ぼくらが女性を愛する理由 (東欧の想像力)の感想
21章の断片、短篇やエッセイによる“女性”賛歌。…とのことだが、“女性原理について思索”し、“愛と死の大女神の周囲に神秘のカーテンを張り巡らすマニアックな傾向”のある作家によるためか、さらりとは読めないところがよかった。少しセピアな横顔のポートレイトを想像したくなるような1篇もあれば、親近感は欠かせません…という1篇、人生の混乱期の話、思い出と呼ぶにはあまりにも苦い体験…たぶんいつまで経っても苦いままの記憶について、などなどの変奏。ルーマニア王国末期の物語「ザラザ」も忘れがたい。
読了日:3月24日 著者:ミルチャカルタレスク
教皇ヒュアキントス ヴァーノン・リー幻想小説集教皇ヒュアキントス ヴァーノン・リー幻想小説集の感想
1篇ずつ、とっておきの秘密な場所へこそり…通う心地で大切に読んできたが、とうとう読み終えてしまった。美麗で硬質で素晴らしかった。作品集として読めたことによる満足感もまた格別で、妖しいファム・ファタールや神々の呪いと力を帯びた声が幾重にも響きあって、私をこの一冊のうちへ絡め捕ってしまえばよい…などと。抗い難く過去に魅せられてしまう人の姿と、その憧憬をかきたてては呼び寄せる幽霊の存在を描く話には、狂おしいほどの懐かしさを憶えた。そういう傾向があるのだな…と、久しぶりに思い知った。
読了日:3月23日 著者:ヴァーノン・リー
シェイクスピア全集 (10) ヴェニスの商人 (ちくま文庫)シェイクスピア全集 (10) ヴェニスの商人 (ちくま文庫)の感想
再読。
読了日:3月21日 著者:W.シェイクスピア
シェイクスピア全集 (2) ロミオとジュリエット (ちくま文庫)シェイクスピア全集 (2) ロミオとジュリエット (ちくま文庫)の感想
再読。ジュリエットの若さ(14歳まであと2週間…)と可愛らしさが際立つ。出会った日のうちに自分から結婚のことを切り出す強さと真面目さ、ひとりでことを進める決断力など、素晴らしい女の子だった。一方のロミオの行動が一見ちょっと…(もごご)なのだが、思春期だからこその衝動をもてあまし、もともと死や暴力に近しい場所に身を置いていたのだと思うと。一目惚れの恋に突っ走って死に飛び込んでしまう顛末が、こちら側の世界からは届き得ない高みへ翔け上っていってしまったようにも思えて、この結末しかない話なのだとあらためて感じ入る
読了日:3月20日 著者:W.シェイクスピア
ガラスの国境 (フィクションのエル・ドラード)ガラスの国境 (フィクションのエル・ドラード)の感想
素晴らしい読み応え。覆い重なりあう声たちの向こう、吐き出されては膨れ上がっていく憤りや欲望、欺瞞、理不尽への怒りと諦念…が渾然となった先に、メキシコの哀しみが見えてくる。たとえば国境を、ガラスの幻でしかない…と言い放つ視点もあって、それはそれで誰かにとっては一応の現実だった。でも、様々な境遇に生きる登場人物たち各々の人生に穿たれた楔の如く、国境は動かし難くそこにある。取り返しの付かない意味を持って、“世界で最も豊かな国の隣に貧しい国があるかぎり”。とりわけ好きだったのは、表題作と「略奪」「女友達」「賭け」
読了日:3月19日 著者:カルロス・フエンテス
暗い旅 (河出文庫)暗い旅 (河出文庫)の感想
再読。この、ひりひりとした崖っぷちのような場所から遠ざかるほどに、胸を抉られる痛みは増すのかもしれない。くるおしくて辛い…。どの頁を開いても、思わず息を呑む文章に会う。
読了日:3月17日 著者:倉橋由美子
だれがコマドリを殺したのか? (創元推理文庫)だれがコマドリを殺したのか? (創元推理文庫)の感想
“コマドリ”さんを始め、登場人物の造形が面白かった。謎解きはわかってしまうけれど(古典故に)、もっていき方になるほどぉ…と。復讐を諦めきれなかった。復讐さえ諦めてたら…てところが怖い。
読了日:3月16日 著者:イーデン・フィルポッツ
裏面: ある幻想的な物語 (白水Uブックス)裏面: ある幻想的な物語 (白水Uブックス)の感想
逃げ場のない悪夢に捕らわれたまま、蒼白い夢の都の崩壊までを見届ける。という暗澹たる話だが、すこぶる引き込まれた。夢の国の君主パテラから移住の招待を受けた主人公は、誘いの声に抗うことなく妻を伴う。太陽の光なく常に叢雲垂れこめた町で見るのは、密かな信仰のきずなを伺わせる不可解な人々の姿だった…。不安と閉塞感の漂う陰鬱な光景に倦むどころか、何故かその異様な眺めに魅入られたまま先へ先へと頁を繰った。まさに悪夢の中の悪夢…主人公自身の見た不気味極まりない夢が中盤に差し挟まれ、そこからの展開はもはや転げ落ちるようだ。
読了日:3月15日 著者:アルフレートクビーン
パノラマニア十蘭 (河出文庫)パノラマニア十蘭 (河出文庫)の感想
十蘭の傑作集、これだけ読み残していたので手に取った。「巴里の雨」や「幸福物語」、「重吉漂流紀聞」、「ボニン島物語」が好き。
読了日:3月13日 著者:久生十蘭
イタリア遺聞 (新潮文庫)イタリア遺聞 (新潮文庫)の感想
再読。ほれぼれ。
読了日:3月12日 著者:塩野七生
ライロニア国物語―大人も子どもも楽しめる13のおとぎ話ライロニア国物語―大人も子どもも楽しめる13のおとぎ話の感想
人の迷妄っぷりが可愛くてほろりとする、不気味哲学的寓話集。皮肉と奇天烈の匙加減は些か多めかと。「こぶ」は『東欧怪談集』で既読。確かに怖い、怖すぎる…しかし怪談か?と首を傾げるも、シュールな味わいにインパクトありまくり。背中に自分とそっくりなこぶが生えたアイヨの、切ないお話。ほか、顔の美しさで有名だったパン焼き職人が、美を保管するために高価な箱を買って顔をしまいこむ「美しい顔」(究極アンチエイジング!)、人の寿命があまりにも短いと思い当たった王の試みが国を滅ぼす「長寿問題はどのように解決されたか」…などなど
読了日:3月11日 著者:レシェクコワコフスキ
猫キャンパス荒神猫キャンパス荒神
読了日:3月10日 著者:笙野頼子
未闘病記――膠原病、「混合性結合組織病」の (膠原病、「混合性結合組織病」の未闘病記)未闘病記――膠原病、「混合性結合組織病」の (膠原病、「混合性結合組織病」の未闘病記)の感想
長年御自身とともにあった体の様々な不具合に、ある日突然、想像だにしなかった(どころか殆ど聞いたことも)病名がつく。て、そこはもう絶句してしまうような話ではある。でも、笙野さんのいる場所は変わらない。今までもこれからも、それだけは確か。だから、病気がわかってよかったなぁ…と心から思う。依存猫ドーラの為に長期の旅行はしなかったし、寒がりやだから部屋を温かくしていた。冷えやストレスが大敵な病気の悪化を、実はドーラが防いでくれていた…。“バスに乗った”のくだり、普通の日常がきらきらと優しく映る景色に泣きたくなった
読了日:3月9日 著者:笙野頼子
ヘラクレスの冒険 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)ヘラクレスの冒険 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
読了日:3月7日 著者:アガサ・クリスティ
クリスマス・プディングの冒険 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)クリスマス・プディングの冒険 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
読了日:3月6日 著者:アガサ・クリスティー
バカカイ―ゴンブローヴィチ短篇集バカカイ―ゴンブローヴィチ短篇集の感想
ゴンブローヴィチ、短篇も流石の面白楽しさ。満遍なくべったりとぬりたくられた黒い嗤い、突きぬけた破壊と変態…どうかしていて大好きだ。人を喰ったような“バカカイ”の響き(偶然にしては出来過ぎ…)に、思わずにやにやしてしまうのは言うまでもない。もう一話目の「クライコフスキ弁護士の舞踏手」から、はぁ…???の連続で呆気にとられたが、そこが堪らぬ快感なのだから世話がない。どの作品も一癖二癖ありまくりで唸ってしまう中、とりわけお気に入りは「計画犯罪」や「純潔」「冒険」「帆船バンベリ号上の出来事」「ねずみ」「大宴会」。
読了日:3月5日 著者:ヴィトルドゴンブローヴィチ
歌うダイアモンド (マクロイ傑作選) (創元推理文庫)歌うダイアモンド (マクロイ傑作選) (創元推理文庫)の感想
ミステリもSFもぐっとひきこまれ、すこぶる満足な短篇集だった。作者自選の8篇に更に中篇を併録したとのことで、多彩でしかも粒選りな印象も嬉しい。作者が選んだ際のこだわりを想像してみたり、いつか他の短篇にも出会いたいなぁ…と。とりわけ好きだった「東洋趣味」は、白昼夢の中に生きているようなオーリガ(芳紀17の花嫁!)の儚い美しさがいつまでも胸に残る逸品。旧北京の妖しい雰囲気も素敵だった。他にお気に入りは「カーテンの向こう側」(怖…)や「鏡もて見るごとく」、笑いつつ最後におおお…と唸った「ところかわれば」…とか。
読了日:3月4日 著者:ヘレン・マクロイ
チャイナ蜜柑の秘密 (角川文庫)チャイナ蜜柑の秘密 (角川文庫)の感想
発見時の被害者の状態が有名な話だが、吃驚というか何というか…。面白かったです。
読了日:3月3日 著者:エラリー・クイーン
夢みる宝石 (ハヤカワ文庫SF)夢みる宝石 (ハヤカワ文庫SF)の感想
スタージョン、4冊目にして初めて長篇を。ちょっと身構えていたけれど、素直に楽しめて面白かった。養父に虐げられた8歳の少年(と、古馴染のジャンキー)が、行きずりのカーニヴァルの人々に助けられそのままもぐりこむ…という設定が、どこか懐かしい。訳者による解説の中の、スタージョンの難解さは子供っぽさや未成熟から発しているのでは…という件は、腑に落ちて印象に残った。
読了日:3月2日 著者:シオドアスタージョン

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