ミルチャ・エリアーデ、『ムントゥリャサ通りで』

 読書会の課題本だが、私の好みのど真ん中!だった。『ムントゥリャサ通りで』の感想を少しばかり。

 どこまで行っても目眩ましに遭う――。
 のらりくらりと聴き手の要求をかわしながら、結局やんわりと自分の言い分を押し通し(曰く、“どうしてもなおざりにできないのです”)、どんどん強引に話を逸らしていってしまうファルマ氏の語りっぷりが本当に素晴らしかった…! 実は彼の話には、何か避けなければならない核心があった…らしい。それを迂回しているが為に、くねくねと回りくどいものになっていたらしい。つまり聴き手たちが引きだした話の悉くが、当事者たちにとっては枝葉の部分に過ぎない…? けれどもその枝葉の部分が滅法面白い!という、考えてみたら何とも面妖な話であった。大好物な、迷宮小説だ。

 ザハリア・ファルマと名乗る老人が、内務省のヴァシレ・I・ボルザ少佐の家を訪ねるところから物語は始まる。ボルザのことを“こんな小さい時から知っている”と言い張る老人は、ムントゥリャサ小学校の元校長先生なのだが、少佐はそんな小学校には通っていないと言って老人を追い出してしまう。が、なぜか次の章ではその老人は、警察での訊問を受けていた…。
 そこからこの枠物語の内側の物語が、時に供述書の中で時には大物大臣に請われる形で、寄り道に次ぐ寄り道だらけで延々ファルマ氏によって語られていくこととなる。まあ、寄り道と言うのは取り調べをしている側にとっての寄り道かも知らんが、本当に“なおざりにできない”枝葉がこんなにもあるものだろうか…?それにこんなに事細かに古い出来事をあれもこれも憶えているものだろうか…?そもそもこのじーさんの喋っている事柄には何の裏打ちもないじゃあないか…!! ということには容易に気付く。もしかしたら途中からじーさんが勝手に作っている話なのかもしれない、けれどもそうだとするとこのじーさんの創作力はいったい?実はじーさんは只者じゃないのか…?! てな調子で、謎に尽きない。
 もちろん、この物語の中で最も素晴らしいのは、やはりそのじーさん、もといファルマ氏が語りまくった物語たちであることは言うまでもない。幻想的であるし、まるで神話のような話もあり、どこまでも物語の枝が伸び広がっていく様にはただただ目を丸くする思いだった。大魔術師ドクトルの奇術の数々、女神の像のような身長と美しさを持った怪力美女の放浪、二百年以上続くザンフィラの身の上話…などなどなど。
 そして、謎の渦からもがき出ようとしているところを、最後の一突きでどぼん!思いっきり落されるラストも素晴らしかった。…そ、そうだったのか! でも!でも!
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12月18日(土)のつぶやき

08:35 from web
おはようございます。生姜湯を呑んで、これからコーヒーにします。週刊ブックレビューも観てます~。
09:17 from web
手が美しい人だなぁ。動かし方も綺麗で目に留まる。
11:08 from web
今日のお昼ご飯は、先日買ったセミドライトマトを使ったパスタの予定。具材はオイルサーディンとキャベツ。…なのだが、夫が起きてこないので何時に食べられることやら。
 こんな感じになったよ。
 セミドライトマト、もっと入れてもよかったな。
17:24 from 読書メーター
【ムントゥリャサ通りで】を読んだ本に追加 http://book.akahoshitakuya.com/b/4588490249 #bookmeter
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