ギュンター・グラス、『ブリキの太鼓』

 気の向くまま、またまた長い作品を手にしていた。『ブリキの太鼓』の感想を少しばかり。

 素晴らしい読み応えだった。大きな戦争をはさんだ当時のポーランド、そしてドイツ。しだくように流れては何もかもを変えていく歴史の怒濤の中、自らの意思で成長を拒み、三歳児の身長を維持し続けたオスカル・マツェラートの存在の突出した異様さと、その驚嘆すべき語りの内容に、じわじわと侵されて読み耽った。翻弄されるポーランド社会と惑う人々の姿を、常に冷ややかに見上げていた一人の小人の視点がここにある。そして小人の背後には、一つまた一つ…壊れては壊れては堆く積み上げられいった数多のブリキの太鼓たち…! 
 
 語り手でもある主人公オスカルは、今や精神病院の住人となっている。入院の理由となった経緯についてはほとんど触れぬまま、まるで精神病院での幽閉状態に甘んじているかの様子だ。そのオスカルが、三歳児にとどまり続けたブリキの太鼓の鼓手としての己の半生を、祖母の代まで遡って回想という形で縷々語る。その物語は猥雑でもあり下品で時には非常にえげつないのだが、それでいてみっちりとした濃さと独特の灰汁の強さで、読む傍からどんどんひき込まれずにはいられなかった。下世話なリアルさと際立って寓話的な部分との比も面白いし、滑稽だけれど少しは切ない…エピソードの数々は、余分な理屈抜きに何だかんだ言って凄く面白かったのだ。
 物語の始めに置かれた、全ての発端としての祖母アンナと祖父コリヤイチェクの馴れ初めの場面、そしてオスカルの思いが何度も回帰していく場所としてのアンナの大きなスカート(なんと四枚重ね!)の設定の強烈な印象。オスカルが愛した美しい母親アグネスと、アグネスをめぐる二人の男(従兄ヤンと夫マツェラート)の、そのまま破滅へ向かって転がり落ちていくばかりにしか見えない、だらしない関係の行く末にも唸った(ウ、ウナギが…!)。そんな彼らを取り巻く隣人や友人たちの逸話も、一つ一つがくっきりと鮮やかである。
 そして、無邪気を装ったオスカルの、悪しき小人の顔。外に向けては破壊的な声を武器にして己を守り、内に向けてはブリキの太鼓たちをまるで自分自身の身代わりのよう叩いて叩いて壊しまくる…! いったい何なんだこの、さびしい小人! …きゅん。

かなりのヴォリュームがあるのだが、エピソード毎に区切りのある章立てになっているのでその点とても読みやすいと思う。
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12月17日(金)のつぶやき

06:30 from web
おはようございます。こーしーなう。目がぽよんとします。
06:36 from web (Re: @shiki_soleil
@shiki_soleil おはようございます~。手をお湯であっためるの、私もよくやりますよ。じわんと効きますね。かじかんでいる時などは、速効性抜群(笑)。でも潤いが逃げるので、後でハンドクリームをぬるようにしています。
21:39 from web
チンザノなう…。これこれこの味、この香り。あ、もちろん割ってます。私にストレートは避けた方が無難。
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