エリック・マコーマック、『パラダイス・モーテル』

 『パラダイス・モーテル』、エリック・マコーマックを読みました。
 
 “「ザカリー、正直いって、これは小説ではありません。ゆるやかに結びつけられた短篇の集まりにすぎません」
 彼があまりにもすばやく自己弁護したので、彼女はびっくりした。
 「それが人生というものだ。小説のふりをしたひと握りの短篇というやつが」” 174頁

 いつまでも繰り返し反芻していたい小説、であった。たたみかけてくる数々のエピソードの細部、その隅々まで、物語の命が宿っているように思えて。ためつすがめつ眺めてみたりしゃぶってみたり、そう…せずにはいられない。
 水底に沈む小石たちの一つ一つが耀きを放っているようで、目を離せなくなる。拾い上げて、確かめたくなる。水は先へと流れてしまうのに。

 物語の一番外側にいる主人公(語り手)についての導入部の後は、外科医の4人の子供たちのシュールで驚異に満ち満ちたエピソードの部へと移っていきます。けれどもそれは謎が謎を呼ぶようなもので、何だかとても奇妙なのです。4人の子供たちの誰にも、結局手が届かないもどかしさ。その違和感を抱えて読み進んでいくと、たどり着く先にあるものは…。
 衝撃のラストがまた素晴らしいです。凄いです。心ゆくまで酔わせてくれる作品です。
 (2007.6.15)

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