一昨日、覚醒剤取締法違反の罪に問われた元プロ野球選手の清原和博被告に対し、東京地裁は懲役2年6カ月、執行猶予4年の有罪判決を言い渡しました。
吉戒純一裁判官は執行猶予を付けた理由として、「被告の覚醒剤に対する常習性は強く、犯情は悪質」と批判した一方で、「甲子園球場を沸かせ、プロ野球を代表する打者として活躍するなど、野球界で社会的貢献をしてきたが、厳しい社会的制裁を受けている」ことなどを挙げていました。
薬物裁判では、いま注目を集めている裁判があります。
東京地裁で公判中のこの裁判は、末期がん患者が自分のガン治療のために大麻を栽培・使用したところ、警視庁に逮捕され、その後起訴されたものです。
なぜ、この裁判が注目を集めているのか。
それは憲法の保障する生存権と大麻取締法違反(所持)罪のどちらが優先されるのかと言うことです。
この事件の経緯は次の通りです。
神奈川県藤沢市の元レストラン料理長、山本正光被告(58)は、平成27年12月、大麻約200グラムを所持したとして警視庁に逮捕されました。
新聞報道では、山本被告は平成27年12月、大麻約200グラムを所持したとして警視庁に逮捕され、その後起訴されました。
弁護側によると、山本被告は平成25年6月に肝臓がんが見つかり、医療機関で治療を始めましたが、平成26年10月に余命半年~1年と宣告され、医師から「打つ手はない」と言われました。
そうした中、インターネットで大麻ががんの改善に有効な可能性があると知ったのです。
厚生労働省や農林水産省、法務省などに「大麻を医療目的で使うにはどうしたらよいか」と相談しましたが、「日本では大麻自体や大麻由来の治療薬の使用は禁止されている」と説明を受けました。
製薬会社にも「私の体を医療用大麻の臨床試験に使ってほしい」と伝えたものの、「日本国内での臨床試験は不可能だ」として断られたといいます。
そのため大麻を自宅で栽培・使用したところ、痛みが和らぎ、食欲が戻り抑鬱的だった気分も晴れたほか、腫瘍マーカーの数値が20分の1に減り、改善の兆候が現れたそうです。
山本被告は、「医師も『ありえない』と驚いていた。数値が下がったことを示すカルテもある」とし、「育てた大麻は他人に販売も譲渡もしていない。現代医療に見放された中、自分の命を守るためにやむなく行った」と話しています。
大麻取締法は大麻の栽培や所持、医療目的の使用や研究などを禁止していますが、男性は「全ての医師から見放された中、大麻ががんに効果がある可能性を知り、治療のために自ら栽培し使用したところ症状が劇的に改善した。憲法で保障された生存権の行使だ」と無罪を主張しています。
国立がんセンターのがん予防研究部第一次予防研究室室長を務めた医師、福田一典氏(62)は「大麻の医療効果に関する600以上の海外文献を検証したが、大麻ががんなどの難病に有効である可能性は高い」と指摘。
更に、「がんには万人に効果がある治療法はない。大麻も含め、どんな薬にも副作用はある。強い副作用を伴う抗癌剤やモルヒネもやむなく使用されているのが実情だ。そうした中で、大麻だけが絶対的に禁止されている現状には疑問だ。大麻ががん治療の選択肢の一つとして検討されてもよいのではないか」と話しているそうです。
海外では、既に欧州諸国や米国の20州以上で医療用大麻の合法化が進んでいるそうです。
今回の裁判は、日本での医療用大麻解禁の是非が争点になる可能性もあって、司法がどう判断するのか注目を集めているそうです。
大麻取締法違反と憲法が保障する生存権、さて、裁判ではどちらに軍配をあげるのでしょうか?