ら族の歳時記

「道が分かれていても人は幸せになる道を選ぶ能力がある。」
能力を信じ、心の安らぎの場を求めて、一歩一歩。

そして父になる

2013-10-10 21:58:36 | 本を読みました


福山雅治主演の映画の小説版です。

あらすじ
容姿端麗、そして高学歴で大企業のエリート社員の良多。
課題を克服していくことが好きで、
土日も朝早くから夜遅くまで仕事するのが苦ではなかった。
そして、自分の選択がいつも正しいと信じていた。

一人息子の慶多のお受験面接。
この面接のために仕事を抜けることさえ
なんとか時間を作るという状態であり、
子供と一緒に入お風呂に入ったことは数回のみで
遊びに連れて行ったことがないような生活だった。

そんな中、産院の看護師の悪意による
赤ちゃんの取り違いにより
慶多が自分の子ではないことを知る。

病院の側の
「みなさん血のつながりをとって交換します」
のアドバイスに従い子供の交換を決意する。

子供を交換したところ、
優しく消極的で従順な慶多に対して
実子の琉晴は、頑固でガサツな子供だった。

そして血筋とはなにか
育ての親の愛情とはなにかと考えるのであった。








ネタバレを含んだ感想です。


今は病院では取り違いが起きないように
リストバンドをつけます。

でも、これって再発行もできるし、
やはり現代においても同じような事件はあり得ると思いました。

私が手術をした時も、
手術前には右手につけてあったリストバンドが
左手に替わっていました。

透析の時に
「左では危険」ということでカットして
新しいものを発行してもらい右手につけ直しました。

意識があるから変化がわかる。
意識がなかったり、赤ちゃんだったら
取り違いは充分あり得ると思うのです。
リストバンドも完ぺきではないのです。



私が小さかった頃は子供の取り違いを扱った漫画が
いくつもありました。

社会問題だったんでしょう。



赤石路代さんの漫画での取り違いは衝撃的でした。
ある著名な音楽家の子供が生まれます。
この産院では産まれて一日は保育器にいれることに
なっていましたが、
保育器の故障により酸素が大量に出てしまい
赤ちゃんは失明してしまいます。
そして産院は世間からの注目を浴びているため、
事故を隠すために他の赤ちゃんとすり替えるのです。
やはり音楽家の実の子は音楽の才能に目覚めてしまうのです。

あとドラマですが、
授乳中にお母さんはうたた寝をしてしまい
赤ちゃんをおっぱいで窒息死させてしまいます。
とりみだしたお母さんは、看護師を買収して
他の赤ちゃんと取り替えてもらうのものもありました。


もっともここだけが印象に残り
話を終わりを覚えてはいません。

両方とも取り換えられる話ではないし。。。。
けれど、意図的には現在でも取り違いはあり得ると思います。



良多は、子どもを交換をしたころ
閑職に追いやられます。

必然的に子供と接する時間が増えるけれど
乱暴な(元気な?)琉晴の相手をするのが苦痛で
「仕事」といって書斎に閉じこもります。

琉晴は元の家族が恋しくて家出してしまいます。

そんな琉晴の姿をみて、
良多は自分の小さかった頃のことや
嫌悪している父親の姿を思い出します。
良多も継母になじめずに実母の元へ家出していたのです。
また、父はそんな良多をたくさん殴りました。

良多は、琉晴が自分に似ていて、
自分は嫌悪している父に似ていることに気がつきます。
そして、血がつながっていなくても
愛があれば親子になれることに気がつきます。
逆に血縁だけではどうにもならないということに気がつきます。

良多は琉晴と遊ぶようになります。
琉晴も良多のことを父と認め
「おとうさん」と呼ぶようになります。

ある日、琉晴は本音をいいます。
「おとうさん、おかあさんの所に帰りたい」と。

交換は終わります。
しかし、今度は、慶多が反発してしまいます。
そして良多は初めて慶多に自分の気持ちを話すのでした。



「父になる」
良多は子供にしかるべき教育を与えるのが父の役目と
思っていました。
そのために仕事に没頭することがあるべき姿と思っていました。

しかし、いろいろなことから
本当に父親としてしなくてはいけないことに気付き
「父親になった」のでした。



私は良多の生き方がかっこいいと思い読んでいました。
けれどもそれは良多自身が自分に自己陶酔しているだけで
だれも幸せにすることができないとわかりました。

血縁があってもなくても
子供に親の価値観を押し付けるのでなく
子供との対話によって子供が成長し
子供が自分の人生を歩んでいく。
そんな子育てが必要なんだと。。

いろいろな人に読んでもらいたい本です。
コメント
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