計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

分解して組み立てる

2007年11月27日 | 気象情報の現場から
 今度の大学入試ではドラマ「ガリレオ」の影響で物理学をはじめ理工系の人気が上がるかな?と密かに興味を持っています。私も工学部でしたから、もちろん多くの科学者/技術者と呼ばれる方々と接してきましたが・・・さすがに湯川先生のような変人には出会う事はありませんでした。まあ、普通じゃない個性的な先生は何人かいらっしゃいましたが(爆)。

 さて、相変わらず因縁の境界条件について頭を抱えています。最新のメルマガにも書きましたが、数理モデリングという作業は、本来複雑である「対象たる自然現象」を独自の自然科学的世界観に基づいて解釈し、その再構築を図るものです。この過程を通じて自然現象を様々な要素に分解または抽象化し、その本質をえぐり出そうとしているのです。境界条件とは正に解析技術者の「対象たる自然現象に対する独自の解釈=独自の自然科学的世界観」を直接的に反映するものなのです。

 これまで様々な数値シミュレーションに挑戦してきましたが、その度に境界条件について頭を抱えています。その結果、このような悟りを開くに至りました。理論的な考察というのは、究極的には「分解する事」「組み立てる事」の2本立てに帰着するのではないかとさえ思えてきます。

 例えば、ある質量mの質点を初速度Vo、傾斜角θで投射した時の運動を記述する式ってすぐ浮かびますか。一応、重力加速度をg、時刻をtで表すものとします。(初期時刻t=0とする)。答えは、質点が投射される方向を正の方向とすると・・・

x=(Vo cos θ)t
y=(Vo sin θ)t-(1/2)gt^2

と表現される筈です。

 高校物理の教える所によれば、斜方投射の場合、水平方向には初速度Vo cos θの等速直線運動、鉛直方向には初速度Vo sin θで加速度が-gの等加速度直線運動ですよね。

 つまり、1つの現象を2つの現象に分解しています。分解されてバラバラになった部品(現象)それ単独では意外と単純なのですが、これらの部品を組み立てると、1つの新しい物理現象ができるのです。これもまた「分解する事」と「組み立てる事」の簡単な例です。物理学で学ぶ様々な現象に関する知識は、分解した時の部品の候補であったり、またはその部品を組み合わせるための指針であったりします。

 現在の気象予測を見てみると、あれも、これも、それも、全部一緒に計算しようといった具合に様々な現象要素を同時に連立して解いていく数値予報モデルが大きな地位を占めています。もちろん、このようなテクノロジーが必要なのは言うまでも無い事です。しかしその一方で、局地気象のある特定の現象の予測・解明を行うに当たっては、本当に必要な部品は何なのかを明確にし、それらを組み合わせて独自の理論を構築する力量も必要になると感じています。そして、それが境界条件につながっていくのです。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 3連休 | トップ | Fortranも今は昔? »

気象情報の現場から」カテゴリの最新記事