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光より速い粒子で相対性理論は覆らない

2011-09-24 13:19:16 | その他の雑記
ニュートリノ:「光より速く移動」 アインシュタインの特殊相対性理論を覆す発見か
 ◇欧州の機関が実験 欧州合同原子核研究所(CERN、ジュネーブ)は23日、素粒子ニュートリノを光速より速く移動させる実験に成功したと発表した。事実なら、「光より速い物質は存在しない」としたアインシュタインの特殊相対性理論(1905年)を覆す物理学上の「大発見」となる可能性があるという。(後略。9月24日付毎日新聞朝刊)


 おお、マジか!? これまでにも大発見かと浮き足立ったら間違いでした、なんていくらでもあったから、今回も観測条件に何か見落としがある可能性の方が高いとは思うんですが(検出されたニュートリノの粒子は、CERN由来のものではないとか、あるいは観測に使用したというGPSの補正ミスとか?)、非常にワクワクして注目しています。とにかく、追試と検証をバンバンやってもらうしかないですね。

 それはそれとして、「相対論と矛盾」などという見出しが新聞各紙を賑わしているのですが、これ、別に特殊相対性理論のテーゼは何も崩れてないんじゃないでしょうか? 相対論が言っているのは、光より遅く運動する物体が光速を「超えられない」ということであって、光速より速い速度が存在しないという意味ではないので、仮に今回の結果が真正なものだとしても特に矛盾はなく、相対論が間違っていることにはならないはずですが。。。きっとトンデモさんが調子づくでしょうね。
 私の誤解でなければ、ニュートリノが亜光速から光速を超える瞬間とか、もしくは亜光速と超光速の両方で運動する様子とかが確認された場合は、確かに特殊相対性理論が間違っていることになります。しかし、今回観測された速さがニュートリノ固有の運動速度であり、常に光速を上回るものであるなら、相対論と矛盾しない。今回の発見は特殊相対性理論の破綻を意味するものではなく、物理学の見直しは必要ない。。。よね?(だんだん自信が。。。)
 ついでに言うと、「タイムトラベルが可能になる」なんていうくだりも見受けられるんですが、もしそうであれば、実験を行う前に結果が出てるはずでしょう? 仮にニュートリノが本当に超光速粒子だったとしても、この場合は時間を逆行するわけではなく、タイムトラベルが可能という証明にはならない。現にスイスにあるCERN側の加速器からイタリア側の検出器まで、ニュートリノが到達するのに2.43ミリ秒かかっているそうで、そのスピードが光速プラス7.5km/sだったわけです(メディアによってこの数値が異なっていて、ここでは朝日と毎日に依拠しました)。だいたい、「実験が正しければ相対論が間違っていたことになる」みたいなこと書いておきながら、その相対論を根拠に「タイムトラベルが可能になる」と言ってるんだから、破綻しといるのは相対論ではなく記事の文章の方であろう。なんか色々誤解が広まっているように見えます。とにかくも、今は実験結果のみを虚心に受け止めるべきなのかも知れません。
 
 まあそれでも興奮する話題ですね。ひょっとしたらタキオンの発見か? だったら面白いんだけどなあ。今後の報告が楽しみです。

(10月4日付記)SF作家の山本弘氏が詳しく解説してました。↓
 山本弘のSF秘密基地BLOG
「光より速いニュートリノ」をめぐる誤解(http://hirorin.otaden.jp/e212113.html)
「光より速いニュートリノ」をめぐる誤解・2(http://hirorin.otaden.jp/e213676.html)
「光より速いニュートリノ」をめぐる誤解・3(http://hirorin.otaden.jp/e213853.html)

なお、異なる慣性系にいる観測者の間で超高速粒子をやりとりすれば、速度差次第で時間の逆行がありうるらしいですが、ここで言う「タイムトラベル」は、人が過去へ移動することを念頭に置いてます。今回の結果が正しくても、やっぱりその証明にはならないです。この点については、「タイムマシン」という言葉に持つイメージが人によって違うように思えるので、念のため。
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