久々に海外の温泉に焦点を当ててみましょう。今回からしばらくはタイ北部の温泉を特集してまいります。タイ北部は意外にも温泉の宝庫なのであります。まず初回は、タイ北部の大都市であるチェンマイから約35キロほど東の郊外にあるサンカムペーン温泉(Sankampaeng Hot Springs)です。こちらは『地球の○き方』などのガイドブックでも紹介されているほど有名であり、いつも多くの観光客で賑わっているんだそうです。
私が訪れたのは2014年乾季の某日。乾季のチェンマイは日中こそ30℃を超えるものの乾燥しているので日陰に入るととても涼しく、朝晩は長袖が無いと寒いくらいに冷え込みます。また乾季ですから雨の心配がほとんどありません。それほど暑くなく、しかも雨が降らないとなれば、まさに打ってつけの温泉巡り日和が続くわけです。厳冬の日本から飛行機を乗り継いでチェンマイ空港に降り立ち、その晩に宿泊するホテルに荷物を預けてから、ホテルの前で暇そうにしていたトゥクトゥクを適当に捕まえてチャーターし、現地へと向かいました。 チャーターと言っても難しいことではなく、運チャンに行きたい所を告げて値段交渉をするだけ。なお、私のようにトゥクトゥクをチャーターしなくても、チェンマイ市街のトンラムヤイ市場に行き、川沿いの道を歩いていると、定期ルートを走行する黄色いソンテオ(ピックアップトラックを改造した乗り合いバス)が客待ちしているので、それに乗れば大丈夫です。
チェンマイからトゥクトゥクに揺られること40~50分で、サンカムペーン温泉のエントランスゲートに到着です。こちらは温泉を中心にした公園となっていて、界隈の観光名所にもなっているらしく、駐車場には自家用車やタクシーなどと一緒に観光バスが止まっており、観光客を目当てにした屋台もたくさん並んでいました。チャーターしたトゥクトゥクは駐車場の端っこに待機させておき、私はゲート右側の料金所へと向かいます。
カウンターで公園の入園料100バーツを支払います。タイではよくあることですが、タイ人と外国人では料金設定が異なっており、タイ人なら安く入園できるのに、私のような外国人はその何倍もする料金を支払わなければなりません。なお受付の右隣りにある売店のカウンターに並べられているのは、カゴに入った鶏卵です。何のためにタマゴなんて売っているのかは、記事を読んでゆくとわかるはず。
ゲート内の通路に沿っておみやげ屋さんが並んでいました。こんなところでTシャツや帽子を買う人なんてどのくらいいるのかわかりませんが、多少なりとも外国人観光客がやってきそうなところでは商売を始めようとする現地の人の逞しい商魂には感心させられます。
南国の公園だけあって花々が彩り鮮やかです。とりわけブーゲンビリアやセージが綺麗でした。たとえ中年の男一人旅であろうとも、綺麗な花に囲まれりゃ心が否応なく弾んじゃいますよ。こんなガーデンを抜けて温泉を目指します。
ガーデンゾーンを抜けると、木々の間をクネクネと流れる川に出くわすのですが、この川には温泉が流れており、川岸の木陰に腰掛けながら温泉の川に足を突っ込んで足湯を楽しむ方がたくさんいらっしゃいました。この後に私はタイ国内で何箇所もの温泉を巡ったのですが、その体験から考察するに、タイ人は足湯が大好きのようです。また周囲には売店もあって、飲み食いしながら皆で賑やかに足湯の時間が過ごせるのであります。
足湯の川を遡ってゆくと、公園の最奥部には熱湯が天高く噴き上がっている自噴泉が!!
これがサンカムペーン温泉であります。
噴泉の近くには源泉を引いているプールがあり、縁には引っ掛け金具が取り付けられていて、ここにカゴを掛けて温泉卵をつくることができるのです。先ほどの鶏卵はここで温泉卵を作るために売られていたんですね。なお配管からドバドバ吐出されている温泉に温度計を突っ込んでみたところ、78.1℃というかなりの高温であることが判明。道理で近づくだけで猛烈な熱気が伝わってくるはずだ。親切なことに、傍には茹でる時間を案内している看板が掲示されており、柔らかめなら3分、半熟なら5~6分、固茹でなら10~15分なんだそうです。
サンカムペーン温泉は足湯や温泉卵のみならず、全身浴だって楽しめるのであり、だからこそ私はわざわざこの地へやってきたのです。噴泉からフラワーガーデンの方へちょっと戻ると、入浴のチケットを売っている小屋がありますので、そこで個室風呂(60バーツ)の料金を支払い、チケットを受け取ります。
後述するように個室風呂は、文字通りの個室に単なるバスタブがあるだけで、景色も風情もあったもんじゃありませんから、もし開放的な環境で入浴したいという方は、水着持参の上で、温泉を利用した温水プールへどうぞ。上画像はチケット小屋の奥にある温水プールの外観です。
私は全裸で生の源泉に触れたいので、迷わず個室風呂を選択しました。チケットを手にして個室風呂棟へと向かいます。入口正面に受付カウンターがありますので、スタッフにチケットを差し出します。
個室風呂とはいえ、使える個室も男女別にわかれています。また個室にも掛け湯専用の部屋と、全身浴ができるバスタブのある部屋に分かれています。掛け湯専用のお風呂というのはタイならではであり、日本にはありませんよね。男性用の浴室ゾーンは受付の右側にあり、上画像の左側のドアは掛け湯専用の個室エリア、右側のドアは全身浴用のバスタブがある個室エリアの各入口です。
画像左(上)は受付の上部に掲示されている分析表です。タイ語と共に英語も併記されているので、私でも読み取ることが出来ました。大きな数字から拾っていきますと、トータルの溶存物質量は628で、ナトリウム(Sodium)は19.9、硫酸イオンは16、塩素イオンは4(いずれも単位はmg/L)なんだそうです。これらの数値はちょっと疑わしいような気もしますが、文系の私が下手に突っ込むと藪蛇になるので、迂闊な指摘はやめておきましょう。一方、画像右(下)は壁に貼られた入浴に関する案内のひとつでして、左側は「青いバルブは水で、赤いバルブは熱湯だよ」、右側は「温泉入浴は15~20分がベスト」と書かれています。
さてバスタブ個室ゾーンへと入りましょう。こんな感じで左右に個室が並んでいるんですね。部屋数は十数室といったところ。空いている個室を任意で選んで使えます。
私はこの個室を選択しました。どの個室も同じ造りでして、一人サイズの白いバスタブが一つに、シャワーがひとつ、そして室内には荷物を置くための小さな台や服を引っ掛けるフックがあるばかりで、至って簡素です。なおシャワーからはぬるい水が出てくるばかりで、お湯は出てきません。
バスタブのお湯は使うごとに全部捨ててしまいますので、利用の際にはまずコックを開けてお湯と水を出し、バスタブにお湯を張ります。こうした利用の手順は、台湾の温泉の個室風呂と同様ですね。
日本からわざわざ温度計とpH計を持参してきた私は、お湯が溜まるのを待つ間に、吐出されるお湯の温度やpHを計測してみたところ、温度は71.8℃、pHは9.0でした。溶存物質量が628mgでpH9.0ということは、日本の温泉法の規定で分類するならばアルカリ性単純温泉に該当しますね。本当ならばお湯だけをバスタブに張りたいところですが、こんな高温のお湯にそのまま浸かるわけにはいきませんので、たっぷり加水しました。
湯船にお湯が満たされたところで実際に入ってみますと、お湯は無色透明、ふんわりとしたタマゴ臭が湯面から放たれており、口に含むとタマゴ味がしっかりと感じられました。結構アルカリ性に傾いているお湯だけあって、大量加水にもかかわらず、湯船の中で肌を擦ったときのツルツルスベスベ浴感がとても気持ちよく、私好みのタマゴ臭&味と相俟って、本格的な温泉を楽しむことができました。同じアジアの温泉で表現するならば、台湾の安通温泉・谷関温泉・知本温泉などと同じ系統の泉質だろうと思います。
利用の度にお湯を張り替えるのですから、いわば完全掛け流しであり、イオウ感を有するツルスベのお湯は実に気持ちが良いのですが、といっても灼熱の南国で全身浴をすることは、体にとってはかなりの負担であり、せっかくの良泉に巡り会えたにもかかわらず、湯船に浸かって数分で逆上せかかったので、早々にお湯から出てしまいました。タイの方々が全身浴ではなく足湯を好む理由が何となくわかった気がします。なお使用後はバスタブの栓を抜いて空っぽにしておきます。
この公園へやってくる観光客のうち、地元タイ人は足湯を楽しみ、欧米人は水着姿でプールで泳ぐ一方、好んでバスタブのお湯に浸かろうとするのは専ら日本人のようでして、私がお風呂に浸かっていた時も、他の個室からはおじさんたちの日本語が飛び交っていました。チェンマイを訪れる日本人にとって、もはやこの温泉は定番観光地となっているのかもしれません。
尤も、すっかり観光地化されているサンカムペーン温泉は、温泉好きの人間にとってはイロハのイに該当する初心者向きの温泉なんだそうでして、現地に滞在している邦人の皆さんは、ここを避けて他の温泉を利用することが多いんだとか。となれば私もイロハのイ程度で満足するわけにはまいりません。より高みを目指して、次なる目的地へと向かったのでした。
チェンマイ市街、トンラムヤイ市場前の川沿いの道から黄色いソンテオに乗って約1時間
GPS:18.815054N, 99.227675E,
入園料100バーツ、個室風呂60バーツ
私の好み:★★
私が訪れたのは2014年乾季の某日。乾季のチェンマイは日中こそ30℃を超えるものの乾燥しているので日陰に入るととても涼しく、朝晩は長袖が無いと寒いくらいに冷え込みます。また乾季ですから雨の心配がほとんどありません。それほど暑くなく、しかも雨が降らないとなれば、まさに打ってつけの温泉巡り日和が続くわけです。厳冬の日本から飛行機を乗り継いでチェンマイ空港に降り立ち、その晩に宿泊するホテルに荷物を預けてから、ホテルの前で暇そうにしていたトゥクトゥクを適当に捕まえてチャーターし、現地へと向かいました。 チャーターと言っても難しいことではなく、運チャンに行きたい所を告げて値段交渉をするだけ。なお、私のようにトゥクトゥクをチャーターしなくても、チェンマイ市街のトンラムヤイ市場に行き、川沿いの道を歩いていると、定期ルートを走行する黄色いソンテオ(ピックアップトラックを改造した乗り合いバス)が客待ちしているので、それに乗れば大丈夫です。
チェンマイからトゥクトゥクに揺られること40~50分で、サンカムペーン温泉のエントランスゲートに到着です。こちらは温泉を中心にした公園となっていて、界隈の観光名所にもなっているらしく、駐車場には自家用車やタクシーなどと一緒に観光バスが止まっており、観光客を目当てにした屋台もたくさん並んでいました。チャーターしたトゥクトゥクは駐車場の端っこに待機させておき、私はゲート右側の料金所へと向かいます。
カウンターで公園の入園料100バーツを支払います。タイではよくあることですが、タイ人と外国人では料金設定が異なっており、タイ人なら安く入園できるのに、私のような外国人はその何倍もする料金を支払わなければなりません。なお受付の右隣りにある売店のカウンターに並べられているのは、カゴに入った鶏卵です。何のためにタマゴなんて売っているのかは、記事を読んでゆくとわかるはず。
ゲート内の通路に沿っておみやげ屋さんが並んでいました。こんなところでTシャツや帽子を買う人なんてどのくらいいるのかわかりませんが、多少なりとも外国人観光客がやってきそうなところでは商売を始めようとする現地の人の逞しい商魂には感心させられます。
南国の公園だけあって花々が彩り鮮やかです。とりわけブーゲンビリアやセージが綺麗でした。たとえ中年の男一人旅であろうとも、綺麗な花に囲まれりゃ心が否応なく弾んじゃいますよ。こんなガーデンを抜けて温泉を目指します。
ガーデンゾーンを抜けると、木々の間をクネクネと流れる川に出くわすのですが、この川には温泉が流れており、川岸の木陰に腰掛けながら温泉の川に足を突っ込んで足湯を楽しむ方がたくさんいらっしゃいました。この後に私はタイ国内で何箇所もの温泉を巡ったのですが、その体験から考察するに、タイ人は足湯が大好きのようです。また周囲には売店もあって、飲み食いしながら皆で賑やかに足湯の時間が過ごせるのであります。
足湯の川を遡ってゆくと、公園の最奥部には熱湯が天高く噴き上がっている自噴泉が!!
これがサンカムペーン温泉であります。
噴泉の近くには源泉を引いているプールがあり、縁には引っ掛け金具が取り付けられていて、ここにカゴを掛けて温泉卵をつくることができるのです。先ほどの鶏卵はここで温泉卵を作るために売られていたんですね。なお配管からドバドバ吐出されている温泉に温度計を突っ込んでみたところ、78.1℃というかなりの高温であることが判明。道理で近づくだけで猛烈な熱気が伝わってくるはずだ。親切なことに、傍には茹でる時間を案内している看板が掲示されており、柔らかめなら3分、半熟なら5~6分、固茹でなら10~15分なんだそうです。
サンカムペーン温泉は足湯や温泉卵のみならず、全身浴だって楽しめるのであり、だからこそ私はわざわざこの地へやってきたのです。噴泉からフラワーガーデンの方へちょっと戻ると、入浴のチケットを売っている小屋がありますので、そこで個室風呂(60バーツ)の料金を支払い、チケットを受け取ります。
後述するように個室風呂は、文字通りの個室に単なるバスタブがあるだけで、景色も風情もあったもんじゃありませんから、もし開放的な環境で入浴したいという方は、水着持参の上で、温泉を利用した温水プールへどうぞ。上画像はチケット小屋の奥にある温水プールの外観です。
私は全裸で生の源泉に触れたいので、迷わず個室風呂を選択しました。チケットを手にして個室風呂棟へと向かいます。入口正面に受付カウンターがありますので、スタッフにチケットを差し出します。
個室風呂とはいえ、使える個室も男女別にわかれています。また個室にも掛け湯専用の部屋と、全身浴ができるバスタブのある部屋に分かれています。掛け湯専用のお風呂というのはタイならではであり、日本にはありませんよね。男性用の浴室ゾーンは受付の右側にあり、上画像の左側のドアは掛け湯専用の個室エリア、右側のドアは全身浴用のバスタブがある個室エリアの各入口です。
画像左(上)は受付の上部に掲示されている分析表です。タイ語と共に英語も併記されているので、私でも読み取ることが出来ました。大きな数字から拾っていきますと、トータルの溶存物質量は628で、ナトリウム(Sodium)は19.9、硫酸イオンは16、塩素イオンは4(いずれも単位はmg/L)なんだそうです。これらの数値はちょっと疑わしいような気もしますが、文系の私が下手に突っ込むと藪蛇になるので、迂闊な指摘はやめておきましょう。一方、画像右(下)は壁に貼られた入浴に関する案内のひとつでして、左側は「青いバルブは水で、赤いバルブは熱湯だよ」、右側は「温泉入浴は15~20分がベスト」と書かれています。
さてバスタブ個室ゾーンへと入りましょう。こんな感じで左右に個室が並んでいるんですね。部屋数は十数室といったところ。空いている個室を任意で選んで使えます。
私はこの個室を選択しました。どの個室も同じ造りでして、一人サイズの白いバスタブが一つに、シャワーがひとつ、そして室内には荷物を置くための小さな台や服を引っ掛けるフックがあるばかりで、至って簡素です。なおシャワーからはぬるい水が出てくるばかりで、お湯は出てきません。
バスタブのお湯は使うごとに全部捨ててしまいますので、利用の際にはまずコックを開けてお湯と水を出し、バスタブにお湯を張ります。こうした利用の手順は、台湾の温泉の個室風呂と同様ですね。
日本からわざわざ温度計とpH計を持参してきた私は、お湯が溜まるのを待つ間に、吐出されるお湯の温度やpHを計測してみたところ、温度は71.8℃、pHは9.0でした。溶存物質量が628mgでpH9.0ということは、日本の温泉法の規定で分類するならばアルカリ性単純温泉に該当しますね。本当ならばお湯だけをバスタブに張りたいところですが、こんな高温のお湯にそのまま浸かるわけにはいきませんので、たっぷり加水しました。
湯船にお湯が満たされたところで実際に入ってみますと、お湯は無色透明、ふんわりとしたタマゴ臭が湯面から放たれており、口に含むとタマゴ味がしっかりと感じられました。結構アルカリ性に傾いているお湯だけあって、大量加水にもかかわらず、湯船の中で肌を擦ったときのツルツルスベスベ浴感がとても気持ちよく、私好みのタマゴ臭&味と相俟って、本格的な温泉を楽しむことができました。同じアジアの温泉で表現するならば、台湾の安通温泉・谷関温泉・知本温泉などと同じ系統の泉質だろうと思います。
利用の度にお湯を張り替えるのですから、いわば完全掛け流しであり、イオウ感を有するツルスベのお湯は実に気持ちが良いのですが、といっても灼熱の南国で全身浴をすることは、体にとってはかなりの負担であり、せっかくの良泉に巡り会えたにもかかわらず、湯船に浸かって数分で逆上せかかったので、早々にお湯から出てしまいました。タイの方々が全身浴ではなく足湯を好む理由が何となくわかった気がします。なお使用後はバスタブの栓を抜いて空っぽにしておきます。
この公園へやってくる観光客のうち、地元タイ人は足湯を楽しみ、欧米人は水着姿でプールで泳ぐ一方、好んでバスタブのお湯に浸かろうとするのは専ら日本人のようでして、私がお風呂に浸かっていた時も、他の個室からはおじさんたちの日本語が飛び交っていました。チェンマイを訪れる日本人にとって、もはやこの温泉は定番観光地となっているのかもしれません。
尤も、すっかり観光地化されているサンカムペーン温泉は、温泉好きの人間にとってはイロハのイに該当する初心者向きの温泉なんだそうでして、現地に滞在している邦人の皆さんは、ここを避けて他の温泉を利用することが多いんだとか。となれば私もイロハのイ程度で満足するわけにはまいりません。より高みを目指して、次なる目的地へと向かったのでした。
チェンマイ市街、トンラムヤイ市場前の川沿いの道から黄色いソンテオに乗って約1時間
GPS:18.815054N, 99.227675E,
入園料100バーツ、個室風呂60バーツ
私の好み:★★