前回および前々回はタイ北部のフアイナムダン国立公園にあるポーンドゥアット温泉(間欠泉)を取り上げましたが、同国立公園にはもう一つ、観光客が気軽に立ち寄れる温泉「ターパイ温泉(Tha Pai Hot Spring)」がありますので、そこへ向かうことにしました。といっても同じ公園内でありながら両者は何キロも離れており、属している県が異なる上、国立公園内の山岳地帯の越えてゆく道がありません。そこで、一旦1095号線に戻り、「ゲロ(嘔吐)街道」と渾名されるほど羊腸の如き険しいワインディングを走って峠を越え、チェンマイ県からメーホンソーン県に入って、欧米人に人気の小さな街パーイの方角を目指します。パーイの街の数キロ手前の1095号沿いには上画像のような大きな標識が立っていますので、それに従って途中で右折します。
案内標識がたくさんあるので、初見の私でも迷うこと無く到着できました。入口ゲートにはポーンドゥアット温泉側と同様に料金所が設けられていますが、国立公園は一度入園料を支払えば、入園券を提示することにより同一公園で同日内なら(違うゲートでも)何度でも再入場が可能ですので、さきほどポーンドゥアット温泉側のゲートで受け取った券を提示し、一銭も払うことなく通過できました。
道の突き当りが駐車場なのですが、私が訪れた午後4時頃は観光客が集まりやすい時間帯なのか、停められるスペースがほとんど無く、仕方なく隅っこの方に無理やり駐車するはめに。歩道入口には案内図が立てられており、最上流部の源泉まで周回できることが描かれているのですが、いつも頭の中がエロで満ち溢れている私は、このマップをひと目見た時、保健体育の教科書に載っていた精子の写真を思い出し、あまりにアホらしい発想にひとりで噴き出してしまいました。でも実際に似ていませんか、あの写真に。
駐車場からしばらくは森の中を歩きます。ゲート近くではガールスカウトのみなさんがが清掃活動中でした。
ポーンドゥアット温泉ではお風呂やプールの充実ぶりに驚きましたが、同じ国立公園内にあるこちらでも同様の整備を計画しているらしく、上画像のように、山を切り開いて個室風呂を建設していました。上屋はほぼできあがっていましたので、供用まではそれほど時間を要さないでしょう。
個室風呂のみならず、このような温泉プールも建設中でして、私の訪問時はちょうど型枠にコンクリを流しこんで固めている最中でした。
工事中のコンクリプールへ向かって、水色の配管も敷設工事中でしたが、その伸びる方向から考えるに、この配管はやがて後述する源泉へ伸ばされるのでしょう。
ターパイ温泉は現状では野湯であり、源泉から流れてくる一筋の湯の川に入って各々好きな方法で楽しむのがここでのスタイルです。それゆえ、野湯は苦手な方でも温泉を楽しめるように、あるいは公園側が小銭を稼げるように、個室風呂やプールを整備しているのでしょうけど、現状でも野湯とはいえちゃんと更衣室が設けられているあたりは大したもんだと思います。
更衣室ばかりか、売店まであって、冷たいドリンクやアイスを口にしながら野湯を楽しめるんですね。店頭には本棚や新聞ラックも。
トレイルを歩いて川を遡ってゆくと、枝に「ミネラルバス」と書かれた札がぶら上がっており、その辺りから上流側で温泉浴が可能なようです。当然ながら源泉が一番熱く、そこから下流へ向かうに従って温度が下がってゆくわけで、利用可能ゾーンの最下流に当たる部分はかなりぬるくてお湯も濁っていましたが、それでも川岸に腰掛けて足湯をしている方がたくさんいらっしゃいました。
足湯ゾーンから遡ると川幅が広くなって池になっている部分があり、この池では欧米人を中心に、観光客が野湯を楽しんでいました。また、その奥のちょっと高くなっている小さな池では、上の方から流れてくるお湯が小さな滝のようになっていて、天然の打たせ湯を体験すべく、狭いスペースに多くの客が集まっていました。でも肝心のお湯はぬるくて淀んでおり、私も入ってみたものの、決して気持ち良いものではなかったので、すぐに上がって更に上流を目指すことに。
大きな池の上流側もいくつかの段になっていて、遡ってゆくほど川の温度は上がってゆき、お湯も透明度を増してゆきます。徐々に私好みのお湯に近づいてきましたよ。
大きな池では30℃少々しかなかったお湯も、ちょっと遡るだけで44.5℃まで上がりました。観光客の多くはこの箇所に爪先を入れるや、熱さにおののいて退散しており、熱さに慣れている私のような日本人以外、さすがにここでは誰も入れないだろうと思い上がっていたのですが、この画像を撮っていたら、脇の方からタイ人のおばさん達が現れ、着衣ながら平気な顔して入ってゆくではありませんか。この温度ですと日本人でも熱くてダメな人がいるというのに、おばちゃん達は温泉に入り慣れているんでしょうか。
私も熱い湯溜まりに入り、池の上に伸びている木の枝にカメラを固定して、タイマーで自分撮りしてみました。一人でカメラをセッティングし、タイマーに間に合うよう慌てて川に浸かって寝そべってポーズを決める私が滑稽だったのか、熱い湯溜まりで入浴していたおばちゃん達は私を見て大爆笑。そりゃ確かに奇特でしょうね。なお、ここは入浴施設として整備されているわけではなく、あくまで天然の小川にすぎないため、私にとって良い湯加減なところは肩まで浸かれるほどの深さが無く、寝そべって入らざるを得ませんでしたが、れっきとした天然温泉には違いなく、無色透明でほぼ無味無臭のお湯からは、アルカリ性泉らしいサラスベ浴感が得られました。
湯浴み後はトレイルを更に遡って、小川の最上流部にある温泉の源泉へ。タイの温泉では温泉卵をつくることがお約束となっていますが、ご多分に漏れずここでも自噴する源泉にタマゴを浸して温泉卵を作る光景が見られました。説明プレートによれば、ここもマグマの熱によって温泉が生成されているとのこと。
ちなみに、源泉に計器を突っ込んでみたところ、pH8.6および73.6℃という数値が計測されました。これだけの高温でしたら、卵も数分で茹だりますね。とはいえ、源泉の全てで可能というわけではなく、この説明プレートや休憩用の傘が立っているところでは問題ないのですが・・・
その隣の源泉は、なぜか禁止されていました。
温泉卵NGの源泉をよく見ますと、画像左側に配管が準備されており、まだ接続されていませんが、いずれはこの源泉から工事中の温泉プールへ温泉が供給されるのでしょう。ということは、温泉プールと温泉卵NGとは何かの関連性があるのかも。
豊かな自然環境のもとで気軽に野湯を楽しめますので、上述のように国際色豊かな多くの観光客で賑わっており、いまではパーイ観光の目玉の一つでもあるようですが、それゆえ(時間帯によるのでしょうけど)混雑していてのんびり湯浴みできなかったのが悔やまれるところです。
ところで、温泉プールや個室風呂コテージが完成した後のターパイ温泉は、果たして現状と同様に野湯を楽しめるのでしょうか。はたまた野湯は制限されてしまうのでしょうか。また、源泉の湧出量が限られているのに、明らかにそれを超える容量のプールやお風呂を作って大丈夫なのか、という疑問も残ります。
入場時間7:00~18:00
公園入場料 200バーツ、乗用車通行料30バーツ(同日内ならチケット提示で何度でも再入場可。同じ公園ならば別のゲートからの入場も可能)
GPS:19.307093N, 98.475993E,(←最奥部の源泉の位置です)
私の好み:★★