日本統治時代から温泉郷として開けていた台湾中部の谷関。谷あいに高層の温泉ホテルが林立する山間の観光地ですが、数年前に谷を呑み込む水害が発生し、一部では壊滅的な被害を受けてしまったそうです。しかしながら不屈の精神で見事に立ち直り、私が訪れたときは一部に爪あとが残っていたものの、その他はとても穏やかな景色が広がっていました。
台中駅の左手、廃業?したデパートの前に位置する簡素なバス停から豊原客運のバスに乗車。
台中には切符切りのおばさんもいますが、おばさん曰く料金は車内で払ってくれ、とのことなので、運転手さんに支払う。東勢付近まで満席で走りますが、それ以降は空席が目立っていきます。
川沿いの道ゆえカーブが多く、舗装道路だが路面状態もあまりよろしくない。でも運転手さんはちっとも減速せず、体や荷物がまるでジェットコースターに乗っているかのように上下左右に大きく揺さぶられ続け、川を遡りながら2時間半の乗車で終点の谷関へ。
当地には大型の温泉ホテルが軒を連ねていますが、バス停からあまり歩きたくなかった私は、この日の宿を「谷関温泉飯店」に決めており、予めメールで予約しておきました。バスの終点の目の前から下る坂を200m弱下りきるだけで到着。正面玄関前には「谷関之源」と篆刻してある源泉モニュメントが設けられていました。
バスは13:20に到着。ホテルのチェックインは15時からだったのですが、堅苦しい日本と違って交渉次第でどうにかなる台湾ですから、話せば何とかなると思い、着いてすぐにチェックインしたら、案の定すぐに部屋へ案内してくれました。またチェックイン時に料金を支払うのですが、予約時は休日料金を提示されたのですが(土曜に宿泊するので)、「ちょっと安くしてよ」とメールを送った上で現地へ行ってみると、ありがたいことに平日料金でOKしてくれました。やはり海外では言い値で支払うのは馬鹿馬鹿しいですね。
お部屋は庶民向けの一般的なホテルにありがちな構成および広さです。豪華さはありませんが、不足しているところもなく、ビジネスホテル的とでも言いましょうか。きれいに清掃されており、アメニティも一通り揃っています。昭和の頃の、伊東・ハトヤみたいな感じかもしれません。デスクの引き出しに避妊具が入っているのがいかにも台湾らしいところ。
このホテルは大甲渓に架かるつり橋の袂に建てられています。そして橋の下の川岸に露天風呂が設けられています。まずはこの露天風呂から入ってみましょう。水着を持ってロビーの脇を通り過ぎ「大衆浴池」の案内板が指し示す方へ。更衣室は一旦丸い形をした露天風呂の縁をぐるっと回った奥にありました。台湾らしく更衣室の個室はシャワールームを兼ねているのですが、それゆえにビショビショで着替えしにくいのが難点。
露天風呂はお風呂というより完全に温水プールです。ジェットバスの噴出口が何箇所もあり、おじさんおばさんはそこに体を当てて気持ちよさそうな顔をしています。打たせ湯も5本あり、スイッチを押すと作動します。日本の打たせ湯なんか可愛らしいぐらいに、ここのお湯が落ちる勢いは強く、まるで滝行でもしているような気分。でもそれが気持ち良い。慢性の肩こりに悩まされている私は病みつきになっちゃうほどでした。丸い浴槽、いやプールは中央部と周辺部の分かれており、周辺部はかなりぬるめ、中心部が42℃くらいに設定されていました。お客さんはみな熱い中央部に集中。大甲渓を眺めながらお湯に浸かって、のんびりとした時間が過ごせました。
でもお湯は無色透明・無味無臭、浴感にもこれといった特徴が無く、本当にこのお湯が温泉であるかはちょっと怪しいところ。一応、温泉は天然ですよ、お湯の中の白い物は湯の花ですよ、と説明する紙も貼られていましたが…。
露天風呂に入ったのだから、わざわざ部屋のユニットバスに入ることは無かろう。でも入ってみたい。部屋に戻って、ユニットバスのお湯を出してみました。すると、このお湯が素晴らしい! 蛇口からお湯が出た途端に強いたまご臭が漂ってくるではありませんか。バスルームのドアを開けっ放しにしてお湯を張っていると、部屋中がたまごの匂いで充満してしまうほど。温度も43℃なので、水で薄める必要がありません。ちなみにバスのみならず、洗面台のお湯も源泉そのままの温泉。口に含むと苦味のない明瞭なたまご味。お湯が十分に溜まったところでいざ入浴。ツルツルスベスベ、アルカリに傾いた重曹泉によく見られるような、実に気持ち良い浴感です。これがユニットバスじゃなくて、風情のある大きな浴室で堪能できたらいいのになぁ。1階ロビーと露天風呂の間(屋外)に家族風呂の区画があったのですが、そこで入浴すれば、雰囲気良くたまご湯に浸かれることができるのかしら。
夕ご飯。大食堂でいただきます。前菜の冷製厚切りハム、ボイルした蝦、青菜の炒め物、蒸した白身魚、そしてビーフン・里芋の鍋。一人じゃとても食いきれないボリュームだったので、勿体無いけど残しちゃいました。結構うまかったですよ。ちなみに朝食はバイキング。中華料理が主体で、こちらも美味しく、朝から食いすぎておなかが苦しくなっちゃいました。
このホテルは谷関に数ある宿泊施設の中でも古参であるためか、団体さんや年配の客層が多く、ラグジュアリ感はあまり楽しめません。近所の水舞谷關渡假溫泉館などの方が余程寛げる雰囲気を醸し出しています。でもバス停に近く、安くて客室が多いので、無難に宿泊するならもってこいかもしれません。特に私のような一人旅だと、豪華なホテルのほうが却って空しくなっちゃいますので…。
台中から豊原客運バス・谷関行(東勢経由)で2時間半、終点下車。194元(2010年現在)
バス停から徒歩3分ほど
豊原客運ホームページ
台中県和平郷東関路一段温泉巷6号 地図
04-2595-1355
ホームページ
露天風呂は水着着用・水泳帽も必要
私の好み:★★
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