温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

タイ チェンマイ県メーテーン郡 ポーンドゥアット温泉 その1

2014年04月27日 | タイ
 
チェンマイ近郊やサムーン郡の温泉を巡った私は、今度は一人でレンタカーのハンドルを握り、メーホンソン県のパーイを目指すことにしました。山間部の盆地に開けた小さな街であるパーイは、タイ北部を訪れる欧米人観光客には夙に有名な観光地なのですが、生粋の黄色人種である私がパーイに向かったのは、別に欧米人の志向に迎合したかった訳ではなく、当地の周辺に温泉がたくさん点在しているからに過ぎません。チェンマイから107号線を北上し、メーテンから1095号線に入って、道なりにひたすら北西方向へ走ります。途中までは軽快に飛ばせるのですが(画像左or上)、フロントガラスの彼方に広がっていた山々が近づくに連れて、徐々に道が険しくなり、九十九折の急坂が連続します。あまりにカーブが多い道ゆえ、バスでパーイを目指すバックパッカーの間では「ゲロ街道」と渾名されているんだそうでして、道中の休憩所には画像右(下)のようなジョーク看板も立てられていました。


 
 
その一方で山間部でありながら国内外から観光客がやってくる場所ですから、道中には小洒落たカフェもあり、ローカルフードに慣れない方でも食事には困らないでしょう。私は上画像の花と緑に囲まれたオープンテラスで、ランチにスパゲッティをいただきました。味はまぁまぁかな。でも、食後に店の名前を確認したら"Road View Coffee and Restaurants"という、あんまりストレートでヒネリが無いものだったことにガッカリ。雰囲気良いんだから、もうすこしネーミングセンスを磨けば良いのになぁ…。

この1095号線はチェンマイ県とメーホンソン県の県境で、山道のピークすなわち峠を迎えるのですが、この界隈にはフアイナムダン国立公園(Huai Nam Dang National Park)が広がっており、公園内には観光客でも気軽に訪れることができる2つの温泉があるらしいので、欲ばりな私は同日中に双方を訪問することにしました。2つといっても、この国立公園は2つの県に跨って広がっている広大な敷地を有し、その総面積は1252平方キロメートル。園内の2つの温泉の間を車で移動しても1時間以上を要するほどの隔たりがありますから、完全に別個のものとして捉えるべきものであります。まずはチェンマイ県側にあるポーンドゥアット間欠泉温泉(Pong Duead Geyser)を目指します。



さすがに観光名所であるため、1095号線沿いにはこのように標識が立っており、私のように初めての訪問でも迷う心配はありません。


 
この看板から右の脇道へそれます。一部の看板には繁体字の漢字で温泉と記されていますが、これって即ち中華系の人が多く訪れているってことなのかな。


 
1095号から6.5キロほど細く険しい道を走ります。急なカーブが続き、激しい起伏も連続するのですが、ちゃんと舗装されていますし、路傍には残りの距離を示す看板も立っていました。


 
途中の料金所で公園入場料を支払います。なお小屋の前に止まっている白い乗用車は、今回私が借りたレンタカーです。例によって例のごとく、ここでもタイ人と外国人では料金が異なっており、私の場合は乗用車通行料の30バーツとともに外国人入場料である200バーツ(約600円)をお支払い。現地の物価基準に照らし合わせると、この200バーツってかなり高額なんですよ。



料金所から更にしばらく進むとビジターセンターがあり、まずはこの前の駐車場で車を止めました。


 
ビジターセンターの傍に立てられている案内図によれば、ここから伸びるトレイルを歩けば、温泉の源泉である"Geyser"すなわち間欠泉を経由して温泉プールに行け、更に周回してここへ戻ってくることができるようです。一周1kmほどのお手軽トレッキングですので、グルっと回ってみることにしました。


 
園内はよく整備されており、真っ蒼な空の下、色鮮やかな自然に抱かれながら、爽やかな高地の空気を胸いっぱいに吸うと、トレイルを歩く私の足取りはどんどん軽くなってゆきました。


 
トレイルの途中で短い小径が右に分岐しておりいるのですが、その突き当たりの小さな広場に、何やら怪しい小さな池を発見。


 
茂みに隠れているので目立ちにくいのですが、ここはポーンドゥアット温泉エリアに点在する源泉のひとつでして、一見すると気持ち良さそうな露天風呂に思えるのですが、温度計を突っ込んでみますと、76.6℃という高温が計測されたので、とてもじゃありませんが入浴なんてできません。近くに沢が流れているわけでもありませんので加水も不可能です。ここでできることと言ったら、せいぜい温泉卵を作る程度でしょうか。


 
トレイルに戻って更に奥へ歩いていると、茂みの奥からボコッボコッ・シューシューとすごい音が聞こえてくるではありませんか。その方向に近づいてゆくと、大樹の枝の向こうに真っ白な湯気が朦々と上がっており、更に接近すると、礫が広がる荒涼とした窪地で熱湯がボコボコ噴き上がっている光景が目の前に広がりました。ここがポーンドゥアット温泉の源泉である間欠泉なんですね。なお温泉を英語で表記する場合、一般的には"Hot Spring"と表現しますが、今回の記事で"Geyser"と表記したのは、この源泉の状況に基づいています。

間欠泉の様子を動画撮影しましたので、よろしければ御覧ください。



 

間欠泉の前の広場には解説プレートがズラリと並んでいます。これによれば、森林に降った雨が地中深くまで染みこみ、マグマによって熱せられて噴き上がっているとのこと。


 

フツフツと煮えたぎるお湯の温度を測ったところ、なんと91.1℃という高温がはじき出されました。90~100と記されている噴泉前の看板の数字には偽りありません。


 
タイで熱い温泉といえば、温泉卵ですね。ちゃんと竹カゴや竿が用意されており、タマゴさえ持参すれば誰でも温泉卵をつくれちゃいます。案内板によれば、5分茹でるとドロっとした感じ、15分で半熟、25分で固茹でになるんだとか。プラスチック使用禁止と書かれているのは、温泉が沸騰に近い温度だからでしょうね。

火山が無いタイの地でこんな高温の温泉が勢い良く噴出していることにすっかり興奮してしまった私は、この光景を目にしてすっかり圧倒されてしまったのか、この先で凡ミスを犯してしまうのであります。間欠泉から道標に従って「ミネラル バス」と書かれている方へ向かう途中に、川の方へ下りる踏み跡(獣道)が伸びているのを確認したのですが、いつもならアンテナが反応してその道を探索するはずなのに、この時は大地の息吹に圧倒されて感覚が鈍っていたのか、探索することなく、そのまま通りすぎてしまったのです。後日調べたところ、その踏み跡をたどれば湯の川を堰き止めた天然の温泉プールで野湯を楽しめたことが判明。前回前々回記事でお世話になったYさんのブログにも、私がこの温泉を知るきっかけとなったTakemaさんのサイトにも、ちゃんとこの野湯を紹介されていました。でもそれに気づいたのは帰国後のこと。日本国内と違って簡単に行ける場所ではないため、あの時見過ごしてしまったことに激しく後悔し、記事を書いている今も臍を噛んでおります。
参考1:2009 タイ北部湯めぐり(13) (Takemaのあっちこっち旅日記)
参考2:チェンマイ県秘湯ナンバーワンの源泉掛け流し谷川野天温泉(ブログ「チェンマイ・田舎・新明天庵だより」2014年2月3日)

次回は、ポーンドゥアット温泉の温泉プールを紹介します。負け惜しみを言うわけではありませんが、野湯は苦手という方でも大丈夫な、立派な温泉プールでしたよ。

その2へ続く。

コメント
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