日本人には「イギリスの食べ物は不味い」という共通認識がある。いつ誰が言い出して、いつから「定説」になったのだろうか。
ちなみにインターネットなんて影も形もなかった80年代前半。高校や大学の同期にイギリスに住んでいた、留学していた、という人が何人かいた。彼らは口を揃えて「イギリスは食べ物が本当に不味かった」「イギリスにいた頃はとても痩せていた」というようなことを言っていた。都市伝説ではなく、伝聞や噂ですらない、体験者から直接、聞いた話である。
あまり強く意識したことはなかったが、当時から「イギリスの食べ物は不味い」というのは日本人の共通認識だったのかもしれない。「フランス料理」とか「イタリア料理」とか言うけど、「イギリス料理」って聞いたことないよね~、といった会話を何度かした記憶もある。
時は流れて2000年前後、ニューヨークに住んでいた頃の同僚がイギリスに引っ越した。そして彼女が「イギリスの食べ物は不味いって言うけど、全然、そんなことない。美味しいよ」と言っている・・・という話を耳にした。初めて聞いた「反論」であった。
またまた時は流れ、今年の6月。初のイギリス旅行を前に、ネットで情報をあさっていたら、イギリスに住んでいる人が「イギリスに住んでいると言うと、決まって『食べ物が不味いの?』と聞かれる」と書いている文章に出会った。「イギリスの食べ物は不味い」というのは、やっぱり今でも日本人の間で定説なんだあ~。
でもってこの人によると、「それほどでもないです」とのこと。ただ一度だけ、お持ち帰りのカレーライスがとても不味くて「不味いカレーって、この世に存在するんだ」と感動した、というようなことを書いていた。
さて、果たしてイギリスの食べ物は本当に不味いのか? ただの都市伝説なのか?
結論から言うと、特に不味いということはない。
イギリス旅行中、「ここに行くぞ」と決めて有名なレストランに行ったのは1回だけ。もちろんそこでの食事はとても美味しかったが、その他、ほとんど行き当たりばったりに入った店で食べた食事、ツアーに含まれていた夕食、ホテルの朝食など、7~8割は美味しかった。可も無く不可も無く、とか、これはちょっと、というレベルの店は1割以下だった。
もちろんどこの国にも美味しい店もあれば不味い店もあるだろう。ただ、確率的に言えば、ぶっちゃけ、アメリカよりイギリスのほうが当たりが多いというか、外れる確率が低いのではないかと思う。アメリカにだって美味しい店はたくさんあるが、高級でもない店に行き当たりばったりに入って7~8割は美味しい、なんてことは、まずない。外れる確率は、イギリスより高い。(余談だが、アメリカには「困った時のチャイニーズ」がある。広いアメリカ津々浦々、都心から相当な田舎まで、どこに行っても中国系の小さなレストランが一定の密度で存在しており、大きく外れることもないので非常に便利である。しかしイギリスでは、個人経営の中国料理屋はあまり見かけなかった)
じゃあ、「イギリスの食べ物は不味い」という日本人の共通認識は一体全体どこから来ているのか? 昔は本当に不味かったのか? あるいは、レストランではなく、家庭料理が不味いのか???
まあ、どうでもいいんだけどさ。とりあえず言えることは、イギリス旅行に行く人は、食べ物に関してあまり心配する必要は無い、ということである(日本食しか食べない、とか言う人については、知らん。そもそもそんな人は海外旅行に行くべきじゃないし)。
ところで、イギリス料理という言葉は聞いたことはなくても、イギリスの有名な食べ物といえば「フィッシュ&チップス」、これは大抵の人が知っているだろう。
私は勝手に、フィレオフィッシュに挟まっている魚のフライ程度の大きさの「フィッシュ」にポテトのMがついた感じの「軽食」をイメージしていた。
実際は、直径30センチの皿からはみ出すぐらい巨大な白身魚のフライ(というか、衣の厚い天ぷら)に、太切りポテトが「これでもか!」というぐらい大量に添えられた、相当ながっつり系の食事であった。もちろん店にもよるのだが、95%はがっつり系だった。でもってほとんどの店で、かなり美味しかった。
なんかこう、クセになるというか、定期的に食べたくなる味なんだが、ロサンゼルスで本場の(?)フィッシュ&チップスを食べられる店って、あるのかな~?