脱あしたのジョー

MTオリーブフィットネスボクシングクラブのブログ

与えることができたら、その群れは生きる

2020-01-10 | Weblog
大学時代に感銘をうけたヴィクトールフランクルの言葉にこういう言葉がある。彼はアウシュビッツを経験したユダヤ人であるがそのアウシュビッツを振りかえってこう言っている「We who lived in concentration camps can remember the men who walked through the huts comforting others, giving away their last piece of bread. They may have been few in number, but they offer sufficient proof that everything can be taken from a man but one thing: the last of human freedoms - to choose one's attitude in any given set of circumstances - to choose one's own way.」直訳すると「強制収容所で生活した我々は、他の人々を元気付けたり、パンの最後の一切れをあげたりして小屋をめぐり歩いていた人々を思い出すことができる。そういう人々はごくわずかだったかも知れないが、彼らは十分な証明となる、人間からすべてを奪い尽くそうとしても尽くしえない一つのものがあるということの。それは、与えられたどのような環境のなかでも自分の態度を選ぶ、自分自身の生き様を選ぶという人間の最後の自由だ。」
すごく高尚な言葉である。おそらくそういう態度を毅然としてとることが我々のようなビジネスでつながっているわけでもない、ボランティアの要素の強いコミュニティにおいて責任者が求められる態度だと思っている。ビクトール、フランクルはユダヤ人であり、もちろん彼は大いにユダヤ教の影響を受けている。彼ら彼女らが使っている言葉はヘブライ語であるが、そのヘブライ語で愛するに値する言葉は二つある。ヘセドとアハバーという言葉で、いずれも日本語では単純に愛と訳されるが、しかしその意味が違う。まずヘセドであるがこれは契約という概念によって成り立つ愛である。まさに結婚はそうであるが、これは相手が自分のことを愛してくれるから自分も愛することができる、そういう相互関係、ギヴアンドテイクの愛だ。しかしアハバーという言葉は一方的な愛、相手がどうであろうがひたすらその相手のことを思い愛する宗教的に言えば究極の愛である。おそらくフランクルの自分の態度を選ぶ人間最後の自由というのは、アハバー的な愛に立ち返ること、人に何かを与えることだ。そういう絶望的な中でそういう態度をとることで自分自身が解放され自由になれると感じ取ったのだろう。きれいごとのように聞こえるが、確かに人を愛すること与えることは大きな力になる。子供や家族のためにたいていの人は自分の命さえも投げ出すことができる、そしてその犠牲を誰も無駄であるとか思わないだろう、なぜなら子供や家族を愛するからだ。
まあジムはアウシュビッツのようなところでは決してないが、この与えることができるかどうかということでかなり雰囲気やジムにおける安心感も違ってくると思う。自分のことしか考えていない自分ファーストという考えしかできないような人間が集まってくるとクラブの人間関係も決してよくならないし、みんなが安心して楽しくトレーニングできる場にはならないだろう。トレーナーでも金をもらわないと教えないとか、特別感をだせるから、あるいは立場を利用して自慢したり、偉そうにできるから、教えてて優越感にひたれるからというようなけちな考え方ではクラブの雰囲気はすごくわるくなる。私の見解ではそういう奴のたいていは世の中ではたいしたことがない、だからジムにそういうものを求めてくるのだと思っている。トレーナーのような人をひっぱっていったり導いていくような立場は自分ファーストではダメ、ある程度自己犠牲が求められる。そうでないとまわりはついてこない。うちのクラブはそういう人に与えることができる余裕のある人間が教えてくれているので雰囲気がいいと僭越ながら言わせていただくが、現にそういうことをやってくれているので、まわりもそうなってくる。誰からも言われたわけでもないのにまわりの人たちもビギナーの人たちに教えてくれたり、ミットを持ってくれたりとトレーニングだけではなく、そういう人に何かをするということでも喜びを感じてくれていることは本当に光栄なことであり、そういうことがさらにクラブの雰囲気をよくし、誰でも気軽にトレーニングできる場になりうるのだと思っている。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする