そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

ケージ養鶏を禁止するEU

2013-04-02 | 政治と金

畜産の世界が大きく変わろうとしている。家畜を命を持つ生き物として、最低限の権利を与えようという動きが、欧州を中心に世界的な動きとなっている。”家畜福祉”という考え方である。Photo
最も集約的に飼われている採卵鶏の飼養形態が、ケージ養鶏であるが、EUではこの形態は2012年から禁止されている。

ケージ養鶏とは、身動きできない程度のスペースに、1羽か2羽を閉じ込めるのである。金網で囲ったケージは、数段の高さになっていて、餌が自動的に流れてきて、鶏は卵を産むことになる。

一棟の鶏舎には、1000~5000羽ほど飼われている。外界と遮断された閉塞空間である。光の調整を行って、10時間程度で夜昼を演出している。鶏は、1週間で8日を認識し、卵を多く産むことになる。

日本では「物価の優等生」と呼ばれている、内実は卵価であるが大量の穀物投与と、こうした鶏に苦痛を与える集約的飼養形態で、達成されている卵価である。日本の鶏は、採卵鶏と肉になるブロイラーで、人が消費する量とほぼ同じ、2000万トン足らずの穀物を消費している。全量輸入されたものである。

鶏も穀物を大量に与えてもこれに耐えて、産卵するように品種改良が進んでいる。多少の病気や障害があっても産卵し、飢餓中枢を抑制された品種でもあり、食べ続け産卵し続けるのである。

栄養豊富で健康増進に良いとされる卵は、こうした極めて不健康な鶏たちの苦痛によって生産されているのである。せめて鶏に羽根を広げることができる空間を、砂遊びできる広さを、走ることができる自由を与えようというのが、家畜福祉の考えである。

アメリカでもケージ養鶏は禁止されつつある。その他の家畜の飼養形態についても、EUは先進的な動きを見せてくれている。今年から繁殖豚のストール飼養が禁止されている。

こうした動きは、生産物の価格に直接影響する。日本は、多少の動きはあるものの、養鶏組合などの圧力によって、家畜福祉への動きはかなり鈍い。

EUでは、家畜福祉に配慮し生産した卵や肉や乳には、高い評価を与えて政策的な支援もされるようになっている。当然質的にも高いものになり、安全性も高くなるるのであるが、コストがかかるためにこうした支援も必要になる。

日本は、経済効率最優先のTPP参入によって、こうした動きはさらに鈍化するものと思われる。これには、何よりも消費者の理解ある動向が大前提になる。苦痛と不健康によって生産された安価な卵を、いつまで要求するのであろうか?


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