そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

BSEからも10年、何が変わった

2011-09-12 | ゲノム編集

アメリカの同時多発テロの前日、日本に大きな衝撃が走った。日本初のBSE(狂牛病:牛海綿状脳症)の発生があったと、農水省が発表したのである。

日本中大騒ぎになった。小さな畜産界、その中の酪農界は天と地がひっくり返るほどの大事件だった。ところが翌日、正確には時差の関係で2日後に起きた、同時多発テロの歴史的な大事件で、すっかりかき消された感があった。

日本の畜産業界は言うに及ばず、農業全体さらには食品関係の業者全てが、このBSEですっかり変わった。

BSEは、①全く新しい概念の感染(伝達と呼ばれている)病であったこと、②原因が良く解らないこと、③人にもうつると言われたこと、④不可逆性の進行するだけの病気であったこと、⑤治療方法もワクチン開発も検査方法もまるでないこと等など、全く新しい対策をしなければならなかった。

日本では、と殺された牛の全頭検査(20か月以上)と個体の履歴が追及できるトレイサビリティーが行われた。世界で最も安全な、牛肉を消費者に提供できると、自負するまでになった。

このうち、人への感染(伝達)は、若年型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)と言われ最も恐れられてた。最も悲観的な学者の計算では、10年後には、12万人のvCJDが発生すると言われた。

現実には221名である。内容は英国175名、フランス25名、スペイン5名、アイルランド4名、その他6ヶ国で1、2名となっている。

BSEそのものの発生も極端に少なくなった。これまで英国では18万6416頭、その他では5841頭である。この数年ほとんど発生がみられていない。

日本では、36頭発生が確認されている。臨床症状のあった例は、初発以外はほとんど確認されていない。36頭目は、平成21年1月30日である。2年半BSEは確認されていない。

日本では、国は全頭検査を止めたが、地方自治体が全頭検査を行っている。

未だに原因が解明されていないBSEである。全頭検査の必要性は、原因究明には欠かすことのできない作業である。

しかい、BSEは終息方向に向かいつつあるのは、否めない現実である。なんだか良く解らない有耶無耶のうちに、BSEは終息してしまいそうである。

日本の全頭検査については、転換点に立っていると言える。

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