民主党の目玉政策である、農家に対する「戸別所得補償制度」の概要が見えてきた。来年度はコメに限定されたものとなるようである。水田に限るが、5618億円もの予算が決められた。これは相当な金額ではあるが、極めて短期間に決めたことである。とりわけ戸別補償制度を立案した、篠原孝がここにいない。何が起きるか不安がいっぱいである。
コメ作については、1964年度に減反政策が決められて、それに伴うあらゆる政府の背策決定に従順に従ってきた、農協の存在がここにない。自民党に票を提供することで、政策実行の協力と金の受け皿として機能してきた農協である。まるで他の省庁の、独立行政法人のような存在としてふるまってきた農協である。
民主党が農協を外してかかっている。とりわけ小沢幹事長は、農協には見向きもしない。全中などの全国組織の団体には、大臣の出席さえさせていない。自民党時代では、中央の席が用意されていた最も重要な来賓であった。地方組織での接触はあるようであるが、中央組織は全くこれがない。
戸別所得補償さえやっていれば、農家の所得が上がるし担い手も戻ってくるし生産量も上がる。食料の自給率も上がる。FTAも恐ろしくはない。地域の活性化につながると、小沢が言うほど単純にことが進むとは思えない。農業は何年もの熟練が求められるし、時々の観察や対応など数年で担い手が育つことはない。FTA交渉では、所得補償がそれほど単純に認めることにはならない。
所得補償制度には、生産量が地域で一定するわけではないし、農家ごとの労働量と質も異なる。やや類似した、農協共済制度であっても戸別の問題や地域の問題、さらには線引きとなるか段階を区切るのか解らないが、基準の設定にも問題が生じるであろう。しかし、従来のように農協を通じて金を出さないと言っているのは評価したい。
来年度から、コメ以外にも補償制度が導入されることになるであろうが、さらに複雑な問題が生じることになる。過剰な場合はどのようにするのか、輸入品との競合が生じた場合の価格評価もかなり複雑になる。作らない方がお金をもらえる、減反政策よりも相当ましだとは思われる。しかし、現在の姿を見ていると、拙速な制度導入の弊害がほどなく出てくることが予測される。今後の政府の対策と、農協の出方 を注目してゆきたい。