そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

キューバ革命の指導者フィデル・カストロが亡くなった

2016-11-27 | 連合
キューバ革命の指導者のフィデル・カストロが亡くなった。90歳であるから、葉巻を吸い続けた割には長生きしたと思っていいだろう。カストロはバチスタ政権を倒し、キューバからアメリカ資本を追い出したが、本来は社会主義革命までは考えが及んでいなかった。革命の指導者、英雄でいながら自らを個人崇拝などによって神格化しなかったのは、カストロとベトナムのホーチンミンくらいである。私腹を肥やすこともなかったことも、この二人に共通している。
もうすぐアメリカ資本が入ってくると思って、今年2月にキューバを訪問した。各所にチェ・ゲバラとカミーロ・シエンフェスゴの肖像などは数限りなく見たが、フィデロ・カストロの物は皆無だった。キューバ革命成功の後、カストロとゲバラは対立した。現実主義者のカストロはキューバの経済的社会的安定を求めたが、ゲバラは強く反対した。ゲバラを大蔵大臣に据えたが、世界革命を優先するとして南米のゲリラ戦に旅立った。ゲバラはボリビアで殺害されたが、それがために、カストロは英雄としてゲバラをキューバに定着させた。
ゲバラの肖像はいたるところで見ることができる。本もたくさん発刊されていた。上の写真はキューバで購入した写真集の一部である。二人とも美男子だったことも国民は歓迎した。
カストロは革命の同志を革命後も丁重に扱った。ロシアや中国やその他の全ての社会主義国だった国家の指導者は、革命後は権力闘争に明け暮れ同志の殺戮を繰り返していたが、カストロとほー・チンミンの二人は明らかに異なっている。

カストロの死を日本の報道は、キューバ革命の指導者として扱う一方で、独裁者とも述べている。因みにトランプも独裁者が死んだと述べている。カストロは日本の広島長崎を訪れて、核兵器の廃絶を訴えていた。ゲバラも広島を訪れている。カストロは、この夏訪れた安倍晋三が核武装義者で、核兵器廃絶反対の立場とは知らずに握手している。
20世紀に入ってから、中南米の国家のすべてはアメリカが金に物言わせるか暴力的に作った政権ばかりである。例外はない。最もアメリカに近いキューバでの革命は相当な困難を伴った。幾度のも及ぶアメリカの政権転覆計画にも打ち勝っている。アメリカの圧力を跳ね返すにはソビエトの援助が不可欠であった。独裁者と呼ぶのはかつてのキューバの資本家や権力者たちである。
賃金に格差がなく医療施設の普及と教育施設の普及は南北アメリカで最も進んでいる。かなりの田舎でも、歩道などに段差がないところが設けられていたり、車いすの人が不自由しないように思われた。医療と教育は無料である。国民の80%が国家公務員である。格差のないことへの不満と、多くの点で近代化が遅れている。インターネットもできなかった。日本の車を全く見なかった珍しい国でもあった。経済封鎖のおかげで化学肥料がなく、ハバナは世界最大の有機作物の出回っている都市となっている。
外貨の獲得のためにこれから、アメリカとの交易が進むことになるだろう。しかし、カストロの敷いた社会主義路線はその財産を、資本の論理でどこまで崩されるか不安である。世界の20世紀の最後の英雄が亡くなった。時代は大きく転換する。


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9 コメント

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Unknown (タンケ)
2016-11-28 13:51:17
様々あったとしても、カストロはアメリカに魂を売り渡さなかった政治家として評価されてよいのではないのか。少なくとも唾棄すべき低劣不正で政治家とも呼べぬジミン政治屋のアベ、コイズミ、アソらとは比べるべきもない英雄と言える。勿論、アメリカ歴代の大統領などとも比較にならない。どんな悪辣残酷な手段も取るアメリカを対岸にして、カストロはよくも今まで暗殺されずに天寿全うできたものである。

だが、アメリカとの国交回復により、これからキューバがアメリカ毒で急速に堕落汚染国家にされてしまう可能性を憂う。戦後アメリカに支配洗脳され、奴隷植民地となり下がっている日本を反面教師として、キューバはカストロ時代の苦労をバネにしながら独自の地位を保ち続けて欲しいものだ。
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タイヘンだァ! (きなこ)
2016-11-28 23:54:38
おんぼろヨットのグランマ号で、無謀な上陸作戦にゲバラと一緒に命からがらだったのですよね。
コロンビアのボゴタ暴動で、コロンビアの大学生だったガルシア・マルケスと、キューバの大学生運動の代表で来ていたカストロが、暴動の中、ニアミスしたのですよね。
ボゴタ暴動のきっかけは政治家のホルヘ・ガイタンが暗殺されたのがきっかけですが、暗殺したのはアメリカではないか?という疑いを持った、ガルシアマルケスがず~っとこだわって、百年の孤独を書いたのですよね。
ホルヘ・ガイタン(すごい美男子です!)が告発したコロンビアのバナナ農園労働者虐殺事件は事実で、アメリカが、虐殺を後押しした事実がある、と、アメリカ人ジャーナリストが「バナナの世界史」に書いていましたが、
トランプになって、アメリカが南米に対してそういう方針、モンロー主義ともいうそうですが、アメリカ第一主義で中南米に傍若無人に振る舞う姿勢に戻る可能性は大きいと、佐藤優さんは指摘していますね。
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Unknown (きなこ)
2016-11-29 08:23:12
ガイタンが暗殺される前日、カストロは学生団代表として、ガイタンと会っているし、
当日も、ガイタンはカストロに会いに行く途中で、暗殺されたんですよね。
この事件がきっかけで、コロンビアの暴力時代が始まって、そのなごりというか、つい最近でも日本人大学生が、コロンビアで強盗に殺されましたよね。
暗殺当日デモに参加していた学生のガルシアマルケスが、後に百年の孤独を書きましたが、
この小説に超ハマったのが若き日のビル・クリントンで、
大学の授業中にこれを読んでいて、先生に怒られて、
「センセの授業よりこの小説のほうがオモロおますネン」と言った(もっと格調高く雄弁に)そうですね。
後に大統領になったクリントンと、カストロが歴史的握手をしたのは、ガルシアマルケスの仲立ちがあった、と言われていますね。
うあ~文学の力!(≧∇≦)って超感動したのですが、
そういう超エエ話、のレガシーも、ぜーんぶぶち壊そうとしているのがトランプですね、
あ~やだやだ( ̄_ ̄|||)
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Unknown (きなこ)
2016-12-04 05:42:17
昨日の「正義のミカタ」という朝のニュース解説番組でカストロ死去の話題があって、
「CIAが30回くらいもカストロを暗殺しようとした」と、アメリカ人解説者が常識のごとくサラっと言って(ちなみにケネディ暗殺も同時期で、ケネディはCIAと仲が超~悪かった、ケネディ暗殺もCIAの仕業ちゃうか、と匂わす場面もあり)
日本人パネラーやコメンテーターがみんな、絶句して傷ついた表情をしていました。。
司会の東野幸治が、「ゆうて良い?アメリカの、そういうとこ、ほんまキライやわ~」と言っていましたが、
こういうことを、朝からおおっぴらに言えるようになったのも、トランプ現象のひとつだなあ、と、感慨深かったです。

日本では「アメリカ=正義、お手本」みたいなのが社会で割と出世するよい子のジョーシキ、という感覚があって、
よい子は、南米のコトとかはミナイワカラナイイワナイそもそも知ろうとしない、
私のようなアメリカの見方は、ひねくれた・世を拗ねた・社会不適合の・変なヤツ、と見なされることも多いように思いますが、
そうでもないよね、だいたいアメリカ人自身がカストロvsCIAのこと常識で知っているんだから、
今までの「アメリカ=正義・性善説」みたいな日本人の見方のほうが、タガにはめられていた、と、思いますね。

もしかすると、安倍さんに辛くてトランプに甘いそりゃないよ先生も、少々そういう傾向あられませんか(^m^)

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Unknown (きなこ)
2016-12-04 06:07:29
度重なるCIA攻撃もはねのけ数々のエピソードでキューバへの愛国心が見て取れるカストロさんは、私などは、好きにならずにいられないと思いますけれども、
逆に、蛇蝎のごとくメッチャ嫌い!という人もいるんでしょうね、
それがキューバ難民出身の共和党テッドクルーズとかなのでしょうね。。
マシンガンベーコンとか最っ悪ですね、
たしかにクルーズよりはまだトランプのほうが。。
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Unknown (きなこ)
2016-12-04 09:17:10
アメリカに忠実な真面目なよい子=割とエリート層で指導層、という図式が、今までの日本の一部ではあったと思います。

しかし、それではやっていけなくなった、なにしろアメリカ自身が分裂しているのだから、
日本は自分達で考えなければならない時期になったのでしょうね。
考えるためには、南米の歴史などの知識も、必要だと思います。
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Unknown (きなこ)
2016-12-05 03:41:12
渦中のキューバをすかさず見に行かれてレポートしてくださるそりゃないよ先生の見識はお高いと思います。
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Unknown (風雨)
2016-12-18 14:25:30
記事、参考になりました。
ブログに記事のリンクを貼らせてもらいますね
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カストロとキューバの評価 (きなこ)
2017-01-29 16:14:41
山岡加奈子という人が、キューバの本を書いているそうですね。
やはり、カストロやキューバを「人権侵害!」「自由がない!」とボロクソに言うアメリカ在住のキューバ難民、クルーズとかルビオは、革命時にキューバの資本家層だった人たちの子孫、なのでしょうか。
キューバの人たちの意見も聞きたいですね、カストロさん死去の際は、多くのキューバ人たちが心から悲しんで惜しんでいた、ように見えるのですが。。
ゴッドファーザーPart2が、キューバ革命当時を描いているということで、観ました。
アメリカのマフィアと実業家がキューバに集まって、利権の分け前の話をしている、実際もこんな感じだったのかなー、と。
ティファニーで朝食を(小説)も、ちょうどキューバ革命の時期ですが、
ヒロインが結婚しようとする、南米の超富裕層で家の体面を重視する、しかしアメリカの特に財産のない社交界のアイドル(ヒロイン)との結婚を一旦は決心するラテン系大金持ちの超イケメン(結局は、ヒロインがマフィアと関係あることがわかって、卑怯にも一方的に結婚を断りました)は、ブラジル人でしたかね、
南米ではあちこちの国で富裕層と一般人の格差がひどい超格差社会で、かつ”アメリカ人”や”アメリカ”に、憧れがあったのでしょうか。。
とりあえず小説ではその頃のアメリカのNYの様子はうかがえます、映画はぜんぜん違うようですが。

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