大江健三郎が亡くなった。九条の会の発起人の一人である。発起人は沢地久枝さんだけになってしまった。大江さんは文学者としては珍しく、嗅覚の鋭い方でおられた。書斎に閉じこもっているだけでなく、戦争や核兵器廃絶に沖縄戦の軍部の自害強制など、多くの反戦運動の起爆剤となられた。
初めて手にしたのが、「ヒロシマノート」だったと思う。作家がこのような取材をして、出版するということがが珍しい時代に大いに感銘を受けた。大江を通じてサルトルを知った。
10年後出版された「沖縄ノート」では、集団自決の事実関係について、自虐史観を掲げる右翼側から幾度も訴訟が行われたが、退け勝利している。にも拘らず、教科書からは集団自決記載が排除されることになったり、未だに慰安婦問題と併せて事実を否定する集団が存在する。
天皇制に反対し、ノーベル賞受賞者で唯一文化勲章を受けていない存在である。
安倍晋三が2006年最初に総理に就いた時に、「この男は危険である。敬称を付けるべきではない」という発言を受けて、本ブログでは一切安倍晋三に敬称はつけていない。
事実、大江の指摘を遥かに超える勢いで、安倍晋三の下で右傾化している。6年後再登場した安倍晋三は、集団的自衛権行使容認に向け、内閣府法制局長官に法律のド素人を据える一方、内閣府に警察官僚を大量に迎え入れた。共謀罪や特定秘密保護法や安保関連法案(戦争法)等々を強行し、岸田は防衛予算を倍増へと走る。
大江はここまで右傾化を予測はしていなかっただろう。大江の予測はここまでなかったと思われる。大江健三郎の死を悼む。
お笑いと、勝ち組論者の言論が飛び交う風景が日本の精神風土とならない事を願うばかり!