そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

工業型畜産は環境にも家畜にも大きな負荷をかけ、やがて禁止されていくことになる

2023-09-13 | アニマルウエルフェアー
物価の優等生と持ち上げられてきた卵価であるが、ようやく消費者が気づき始めてくれた。お金が絡まなければ、消費者は気が付かない。一個50円以下の卵は買わないようにと幾度も、本ブログは警告を出していた。卵価が物価の上昇に反比例するように据え置かれてきたのは、畜産の中でも特に採卵鶏は超巨大化したからである。
50年ほど前、私の住んでいた県では、巨大化する養鶏家の発展のため、お互いの情報や技術などの交換のために、県内で養鶏組合、農協内に養鶏部会を持っていた。組合員は1万羽以上だったと思うが、30~50戸ほど参加していた。これ以下で千羽程度の養鶏農家はこの数倍いたと思われる。
それが、鳥インフルエンザを発症したニュースを聞いて驚いた。県内には80万羽を飼うこの一戸だけになっていたのである。かつては農家が採卵鶏を手掛けていたが、今は企業が参入して、とてもじゃないが畜産業とはいえる代物ではない。上図のように、中空に留め置かれる狭い檻(ケージ)の中で、遺伝子組み換えの輸入穀物を大量に与えられる。ドンドン与えられる餌をひたすら食べ、産卵を強制され1年も生かされない短い命である。この子たちが卵価を下げているのである。
もっと驚いたのは、この養鶏家は廃業したのであるが、系列の養鶏業者がすぐさま全国的に補填しているのである。全国的な養鶏組合は政治的にも強力である。
こうした密飼で大量穀物投与の企業は、家畜に苦痛を与えないようにと全世界的な広がりのアニマルウエフェアが、国内に持ち込まれてはたまらんと、吉川貴盛農水大臣のポケットに原ナマをねじ込んで、一部がバレて逮捕された。
こうした家畜に苦痛を強いる工業的大型農業は、20世紀型の環境を悪化させ食料問題を一層困難にさせる。
工業型畜産を支えているのは、アメリカの関税もなく入って来る肥培管理も不明の遺伝子組み換え穀物である。安価な穀物を大量に輸入するのは、工業製品輸出の見返りに農産物の輸入が強要されるためである。豚も牛も同じであるが、とりわけ鶏は、採卵鶏もブロイラーも密飼の工業型が圧倒的になっている。
卵価が安いと思われている消費者に知っていただきたいのは、鳥インフルエンザになると30万羽で補償金が一億円支払われるし、その処理にも相当行政が負担することなるが、これらもすべて税金で賄われているのである。環境への大きな負荷は計算されないが、いずれ後世でそれを負うことになる。原発に似た構造で、納税者が負担し卵は決して安くはなかったと思っている。
こうした工業的畜産に対し、家畜を命ある生物と捉えるアニマルウエルフェアというという運動もそうした中で生まれてきている。ヨーロッパでは既に、鶏のケージ飼いが禁止されている。

工業型畜産を世界に普及させたアメリカの、農務省(USDA)でさえ密飼の問題が顕在化したと、家畜密飼給餌制度CAFO(Concentrated Animal Feeding Operation )を設け、基準を超えた場合は廃業を命じるまでになっている。
日本はというと相も変わらず、献金をいただいた工業型大型畜産のために与党議員たちは動くだけである。



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