植芝理一(講談社アフタヌーンKC)
《あらすじ》
“よだれ”でつながる僕達の“絆”!! “正体不明”の恋愛漫画。
ある日、高校2年生の椿明(つばきあきら)のクラスに転校生がやってくる。彼女の名は卜部美琴。椿は、この風変わりな卜部と奇妙な絆で結ばれることになる。
《この一文》
“その晩 僕は 夢を 見た
どこなのか知らない
ーー奇妙な街で
ーー僕と卜部がーー
二人で踊っている夢 ”
ぐはぁぁ~~~っ!!
たまらん!!!!
というわけで、『謎の彼女X』の第1巻です。ただいまテレビアニメシリーズが放送されていますが(あとちょっとで最終回…(´;ω;`))、その原作を読んでみました。作者は植芝理一さん。月刊アフタヌーンにて連載の漫画です。
この作品についてはアニメ化以前から聞いていた評判通り、なるほど面白い。私はアニメの方から入ったので大筋は既に知っていましたが、原作には原作なりのインパクトと魅力とが当然あって、面白かったです。17歳の椿くんと卜部さんの恋愛模様を描いているのですが、ここにはえも言われぬ「謎の」魅力が満載です。
まず、椿くんと卜部さんの恋愛が始まるきっかけが凄い。謎めいた転校生の卜部さんは学校の休み時間にはいつも机に突っ伏して寝ているような女の子です。ある放課後にもそうやって眠りこけていた卜部さんをみかねて隣の席の椿くんが起こしてやります。顔を上げた卜部さんは盛大に「よだれ」を垂らしていて、卜部さんが帰った後、椿くんは何故かその机の上にこぼれていたよだれを舐めて、「あまい…」。という、驚くべき始まり!
そして、椿くんはその夜、不思議な夢を見る。どこか知らない町で、椿くんと卜部さんが二人で踊っている夢を。
この後、椿くんが高熱で寝込むのは「卜部さんのよだれの禁断症状」であり、それは「恋の病」であり、結局二人は交際を始めることになって、卜部さんは指先につけた自分のよだれを椿くんに舐めさせるのを日課とするようになるのでした。
と、わりと変態的な恋の始まりですが、これが妙に爽やかなのです。二人は「よだれ」を介してさらに互いの理解を深めていく、という私などはこの謎めいた展開だけで完全にノックアウトされてしまうわけですが、やはり「よだれ」が二人を繋ぐキーワードであることから、好みは分かれるかもしれませんね。アニメ版のほうも、第1回では忠実に原作を再現してありましたが、椿くんが机の上にこぼれた卜部さんのよだれを舐めちゃうシーンで脱落者が続出していたようですし。しかし、ここを乗り切れば、あとは悶絶するほどに清々しい二人の純愛ドラマが待っているのでした。これはとても癖になる物語なのです。
ストーリーは純粋なラブロマンスであると思うのですが、この特殊性はどこからくるのかと言えば、やはり設定の奇妙さでしょうね。卜部さんという女の子のキャラクターが絶妙に謎めいています。不思議すぎる。「よだれがものすごく甘い」というのは椿くんの恋による効果であるとしても、必殺技を持っている女子高生っていうのは、ちょっと普通のラブストーリーではないでしょう。卜部さんの特技は「ハサミ」。前髪で顔が隠れていてどんな表情をしているのか不明、無口、そして実はいつもバンツにハサミを仕込んでいて、時折シュバッと構えては様々なものを細切れにしてしまうのです。なんという「謎」さ。
対する椿くんの方は、(よだれなどに対するフェチズムを含めても)いたって普通の男子高校生。生まれてはじめて女の子と付き合うことになってどうしたらいいか分からない、素直で可愛い性格。このバランスが良いのかもしれないですね。
それから、この作品の舞台がいったいいつ頃の年代に設定されているのか分かりませんが、かなり懐かしい感じがするところも良いです。携帯もなく、カメラもデジタルではなさそう。1990年代の香りがそこはかとなく漂います。ちなみにこの作品の初回は2004年発表、連載開始は2006年です。
まあ、とにかく面白い作品です。他人と繋がりを持つとはどういうことなのか、特別な相手と繋がりを持つとはどういうことなのかについて考えさせられる、しかも奇妙に面白く爽やかに練り上げられた優れた物語です。まだ第1巻しか手もとにありませんが、ここはぜひ続きも揃えたいところですね。
アニメ版については、最終回を迎えたらあらためて記事を書いてみたいと思っています(できれば終わらないでほしいけれども…)。
たしかにこの作品はマニアックですね。私は俄然、植芝先生に興味を抱きましたよ! ぜひ『夢使い』や『ディスコミュニケーション』も読んでみたいです。
この『謎の彼女X』のアニメ版ですが、これがいまどき珍しいくらい実によく出来ていて、私はドはまり中でございます(^o^)
原作も素敵ですが、アニメ版のほうも一見の価値ありかと!