半透明記録

もやもや日記

『ペドロ・パラモ』

2004年12月14日 | 読書日記ーラテンアメリカ
フアン・ルルフォ作 杉山 晃・増田義郎訳(岩波文庫)


《あらすじ》

ペドロ・パラモという名の、顔も知らぬ父親を探して「おれ」は
コマラに辿りつく。しかしそこは、ひそかなささめきに包まれた
死者ばかりの町だった・・・。生者と死者が混交し、現在と過去
が交錯する前衛的な手法によって、紛れもないメキシコの現実を
描出し、ラテンアメリカ文学ブームの先駆けとなった古典的名作。


《この一文》

” 「おまえを見たのはあれが最後だった。道端の楽園樹の枝をかすめながらおまえは通り過ぎていった。散らずに残ってたわずかな木の葉は、おまえのおこしたそよ風に、すっかり運び去られちまった。それっきりおまえは見えなくなった。おれはおまえに向かって叫んだ、『スサナ、戻ってくれ!』」   ”


場面は転々と変わってゆくので、はじめはずいぶんとまどいました。
違った時や場所が次々とあらわれるので、一体どうやったらこんな物語を生み出せるのか不思議でしかたありません。
巧妙に組み立てられた筋書きには圧倒されます。
そして、そっけないほどの口調で語られる物語の内容は実に濃厚なのです。
世界は不可思議な感じを絶えず漂わせていながら異常なまでの現実感を伴います。
ラテンアメリカ文学は、読み始めたら止められないでしょう。

この人はほとんど作品を遺さなかったらしいのですが、もうひとつの短篇集『燃える平原』は幸いにして未読です。私にはまだ楽しみが残されているのでした。

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