半透明記録

もやもや日記

逗子・葉山へ行ってきた!

2010年05月31日 | 旅の記録

神奈川県立近代美術館 葉山
2010年5月29日。
葉山は曇り時々雨。







土曜日に、お友達の烏合さんと一緒に逗子・葉山のあたりへ遊びに行ってきました。あいにくの曇り空でしたが、電車に揺られて、バスに揺られて、海沿いの道をくねくね走っていくのは、とても気持ちがよかったです。このような小旅行というのは実に楽しいものですね。しかも海! そして友だちと! あー、楽しかった!


さて、なぜ葉山かというと、ただいま【神奈川県立近代美術館 葉山館】にて『ノルシュテイン&ヤールブソワ 話の話展』が開催されているからです。

 

私はノルシュテインの「霧の中のハリネズミ」が大好きなんですよね。この展覧会では、ノルシュテインのアニメーションの上映プログラムもあり、「冬の日」や「外套(部分)」の上映もあるということで、ちょっと行ってみたいと思いつつ、でも少し遠いかなとためらっていたのですが、烏合さんが一緒に行ってくださるとのことで俄然やる気が出た私。やはり連れがいるほうが楽しいですよね! 烏合さん、どうもありがとう♪


実は私はこの時まで葉山の正確な位置さえ知りませんでしたが(事前の烏合さんとのやりとりで「葉山って海が見えるの?」などというトンチンカンなことを言ってしまったのには、さすがの私も恥ずかしかった;)、横浜からだと一時間ほどで行くことのできる落着いた海辺の町で、海のすぐそばには小さな綺麗な美術館があり、なかなか素敵なところでした。やっぱり海っていいなぁ!


11:10に横浜駅の横須賀線の乗り場ホームで烏合さんと待ち合わせ、昼前にJR逗子駅に到着、バスに乗り換えて美術館へ向いました。土日の方がバスの本数が多いというのは珍しいですね。やはり週末に賑わう土地柄ということなのでしょうか。海ですしね、海。駅前でバスに乗り込むと、海辺の町らしく、商店街の入り口には青い庇のかかった魚屋さんがあるのが車窓から見えました。
この日は気温が低く、曇っていたのですが、海沿いの道ではやっぱり我々も興奮してしまいます。「海だよ、海!」と言い合ったりしました。

バスで20分ほど揺られて、美術館前に到着。
午後のアニメーション上映会は15時からなので、まずはレストランで昼食をとることにしました。このレストランは席数は少ないのですが、海側が大きくガラス張りになっていて、お食事をしながら海を眺めることができます。気持ちがいい。晴れていたらもっと美しい光景だったかもしれませんが、曇っていても充分、荒れていたって構わない。私は海が好きですね。ウィンドサーフィンや、ボートを楽しむ人達の姿が見えました。いいなぁ、舟とか乗りたいなぁ。

 


この美術館の敷地はさほど大きくないのですが、レストランの横の階段からは「遊歩道」へ下りられるらしく、私と烏合さんはとりあえず階段を下りてみました。砂浜へ出られることを期待して。
結局、「遊歩道」というのは、「遊歩道?」というほどの小規模のもののようで、波打ち際まであと100m弱くらいのところで仕切られていて、浜へは下りられませんでした(たぶん)。その階段を下り切ったところには、小舟を裏返した形のコンクリートだかモルタルだかで出来たオブジェが点在していて、我々はその上に立ち、植栽の間から見える葉山の海を眺めながらしばしおしゃべりを楽しみました。海というのは、水と波、あとは岩や砂くらいしかないのですが、ただそれだけでも何時間でも過ごせそうな場所ですよね、不思議。曇りの日の砂浜にはほとんど人影がありませんでしたが、釣り人のおじさんがひとりやって来て、えいやっと竿を投げました。

  海はいい、海は。


さて、いよいよ本日の目的の展覧会です。
ノルシュテインはロシアのアニメーション作家。今回の展覧会は、「話の話」というアニメーション作品を中心にした企画のようでした。15時からの上映会には整理券が必要とのことで、まずはそれを貰っておきます。

展示のおおまかな内容はこんな感じでした。
「キツネとウサギ」の絵本の挿絵、「話の話」のエスキース、スケッチ、マルチプレーンを再現したマケット、「霧の中のハリネズミ」のエスキース、コンテ、マケット、「25日――最初の日」「ケルジェネツの戦い」のエスキース(?詳細忘れ…)、「アオサギとツル」のコンテ、マケット、「外套」のエスキース、マケット、「冬の日発句」のスケッチその他。

 **注**
 ☆マケットとは:美術用語で「模型」というほどの意らしい。
 ☆エスキースとは:esquisse(仏)スケッチ、下絵のことだそうです。


という感じで、沢山の資料が並べられていて、アニメーション制作の様子がよく分かる構成になっていて、なかなか見応えがありました。


ノルシュテイン作品ではやはり「話の話」が代表作ということになるのでしょうか。展示品の量も展示室の広さもここがもっとも大きかったと感じました。「話の話」のマケットはいずれもすごく良かったです。雨の降る森の中に青い林檎が置かれてあって――という場面などは、「こういう風になっていたのかー」と感心してしまいます。こうやって、アニメーションの仕組みが分かるのは楽しいですね。

「話の話」も良いですが、私はこの人の作品では「霧の中のハリネズミ」が一番好きです。その「ハリネズミ」の展示もありました。やっぱり可愛い。絵コンテとエスキースが素晴らしかったです。ハリネズミは間抜けで可愛いなぁ。コグマくんの顔も、あらためて見ると、もの凄く丸くて魅力的。展示室の説明書きによると、ノルシュテイン監督はハリネズミの造形をめぐって美術監督を務める奥さんのヤールブソワさんにとても厳しい要求をしたと書いてあったような気がします。ヤールブソワさんの描くものはみな、柔らかい暗さのなかのユーモアとでもいうような独特の空気を含んでいて、心に残ります。しかもこの絵が動くというのだから凄い。

「アオサギとツル」のコンテも素晴らしかったです。このコンテは素晴らしい。コンテの段階ですでに面白い。こんなコンテを私も描きたい。

「外套」と「冬の日」の展示を残すところで15:00になりました。先に上映会を観ることにします。
15:00少し前に、整理番号順に上映会会場への入場が始まりました。我々は前の方の席に座って待ちます。
上映プログラムは午前の部と午後の部があるのですが、午後の部の内容は以下の通り。

 *「アオサギとツル」
 *「話の話」
 *「冬の日 発句「狂句 木枯らしの身は竹斎に似たる哉」」
 *「外套(部分)」

「冬の日」と「外套」は私ははじめての鑑賞でした。他のものは持っているDVDで観たことがあります。でも「アオサギとツル」は久しぶりに観たら、内容をほとんど忘れていたのですが、やっぱり面白かったです。あの終わり方がいいんですよね。柵とか壊れちゃってて。
「話の話」は前回はかなり眠かったという記憶があったのですが、展示品の数々を見た後で鑑賞すると、印象がまるで変わりました。我ながら単純。けれども、アニメーションの手法について知ってみると、この作品の凄さというものを少し理解できたように思えます。オオカミが揺りかごを高速で揺らすところが好きですね。あと、雪の上に大きな青い林檎がいくつもゆっくりと落ちる場面も。どういう物語であったのかは、今回もやはり私には理解しきれませんでした。詩的すぎるのかなぁ。
「冬の日」はごく短いアニメーションですが、紅葉が舞い落ちる場面、風が猛烈に吹き付ける場面などが印象的。
そして、「外套」。いつになったら全編仕上がるのでしょうか。ノルシュテインさんはこれにあと何十年かけるつもりなのかしら、と心配になっていたのですが、この日、作品の出来上がった一部分を観ると、時間がかかるのも仕方ないと納得しました。というか圧倒されました。ほとんど狂気のような精密さ。音声はまだ付いておらず無音のままでモノクロのアニメーションが進行して行きますが、とにかく圧倒的です。目眩がしました。
雪の雑踏を人々が行き交うシーン、ぬかるんだ地面、アカーキイ・アカーキエヴィチのわびしい暮しぶり、靴下を脱ぐ仕草、骨張った小さな手の動き、スープをすすりパンをかじり、インクをインク壺に注ぐ描写、天上の梁の上を猫が歩いていくシルエット、ベッドに横たわり毛布にくるまるその毛布の薄さ――。ほとんど狂気のような精密さに、私は完全に圧倒されてしまいました。ちょっと具合が悪くなりそうな衝撃。うーむ、これは、どうにか完成してもらいたいものです。「外套」は非常に面白い小説ですからね!

「外套」を見終わって、フラフラと上映会場を出ました。アニメーションを観てから展示を見ると、迫力が増しますね。あれはあの場面、これはこれから制作する場面と思いながら見て行くと、凄さがよく伝わってきます。気が重くなるほど凄い。

「冬の日」の展示もなかなか面白かったです。


というわけで、私はかなり満喫しました。
面白かったです。やっぱりアニメーションって面白いよ! と興奮して出てきました。美術館のロケーションもよいですし、おすすめの展覧会ですね。







この日、移動や休憩の合間にも、烏合さんとは沢山お話ししました。すごく楽しかったです。以前、神保町でお会いした時の記録にも書きましたが、烏合さんはものすごく楽しい人なんですよね。この日の会話のなかにも知性がほとばしっていました。烏合さんのとても問題意識の高いところも私は尊敬しています。また、人の言ったことをよく覚えていて、私の過去の記事のことや、「ヒャクボルコ」のこと(←いずれも私は自分では忘れているようなこと;)を取り上げてくれるところには、本当に感謝しています。ありがたいなぁ!

一方私の方からは、なんの拍子でその話になったのか忘れましたが、私自身の蹉跌と挫折にまみれた逃走の半生について語り、とにかく「数学がどうにもならないほどに苦手だった」ということだけはしつこいくらいに伝えられたかと思います。でも、久しぶりにしゃべったので、口がうまくまわらず、声も少し嗄れてしまう貧弱な私。な、なさけなや!

帰り際、烏合さんは往きのバスの中から見たお魚屋さんで、お土産にお魚をお買いになりました。遠方から来られたので、小さな保冷ボックスに入れてもらいます。「すっかり大荷物になってしまった!」と嘆いてらしたのですが、そう言えば、私が関西にいた頃、京都で烏合さんとお会いした時にも、旅先だというのに烏合さんは書店で大量の本をお買いになったのでした。あ、こんなところに書いてしまってゴメンよ。でも、私は烏合さんのこういうところがたまらなく好きなのです。しっかりしてそうなのに、面白いよなぁ!

色々とお話を伺ううちに、烏合さんちの姉妹関係と、私のうちの姉妹関係はよく似ているようだと分かりました。烏合さんはお姉さんで、私は妹なのですが、なんかすごく分かった。妹気質ってありますよ。姉の言うことはとりあえず無条件にきいてしまうというように仕込まれているというか(^_^;) 烏合さんの妹さんはどこか私に似たところがあるそうで、もの凄くお会いしてみたい気持ちになりました。ふと考えてみれば、私の友人はほとんどが「お姉さん」「お兄さん」なんですね。私はそのせいで心地よいのかもしれません。「妹」とは、結局は甘やかされる立場ですからねー。


というわけで、大変に楽しかった一日。
烏合さん、どうもありがとう! とても愉快な一日でした(´∀`*)
おつかれさま!!








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2 コメント

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Unknown (烏合)
2010-06-09 21:55:53
コメントが遅くなりまして、申し訳ないです!!
いやいや本当に楽しかったですね~
海もすばらしかったなぁ…!
しかしお恥ずかしい限りなのですが、まったく、ntさんのご指摘の通りで、私は旅立つと何か買いたくなっちゃうのですよね。
記念に、何か…。何か…、、、。
みたいな。
ふはははは。
時間があるときはその土地の土でつくった焼き物を買うことにしています。
しかし、生の魚はないよなあ…!!
ご迷惑をおかけしました

私はノルシュティンさんのアニメーションは初体験だったのですが、とてもいいなあ、と心惹かれました。
ああいう「なんだろう?」「どういうことなんだろう?」とひきつけられる部分があるのと、とてもノスタルジックで詩的なところが好きだなあ…と思いました。

とにかく、いろいろお心遣いありがとうございました。
また何か楽しい展覧会へご一緒できるとうれしいです
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ね~! (ntmym)
2010-06-10 09:16:07
烏合さん、こんにちは♪
ね、ね、楽しかったですよね!
海とかまた行きたいですね~(´∀`*)

>しかし、生の魚はないよなあ…!!

いえいえ、いいんですよ!
面白かったし!! うふふ☆

ノルシュテインのアニメーションは、私は普通に好きだったのですが、展覧会へ行ったら、もっと好きになれましたよ(^_^)
素敵な展覧会を教えていただいて、しかも一緒に行ってくださって、どうもありがとうございました!

うんうん、是非またご一緒しましょう♪♪

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