半透明記録

もやもや日記

『光の海』

2008年06月27日 | 読書日記ー漫画
小玉ユキ (小学館)



《内容》
海辺の町に、川辺の町に暮らす人々とそこに棲む人魚との交流を描いた作品集。

収録作品:「光の海」「波の上の月」「川面のファミリア」「さよならスパンコール」「水の国の住人」

《この一文》
“あんたはこれから
 たくさんのメスに会うだろ?

 その中に髪の長い人魚を見つけたら

 その人魚はみんな僕だと思ってよ

 僕があんたの子どもをたくさん産むから

  ―――「波の上の月」 より  ”


ぐはっっ!! なにこれ、美しすぎる!


『羽衣ミシン』に引き続き、小玉ユキさんのマンガ『光の海』を買ってきました。人の好みはそれぞれだと思いますが、私の好みを申しますならば、私はこの『光の海』のほうが好きですね。どうもこうもなく、美しい!

まだ2冊しか読んでいないので、なんとも言えませんが、もしかしたら小玉さんというのは短篇のほうが得意なのかもしれません。この詩情! この詩情! ああ! 美しいイメージが次から次へと繰り出されます。

収められたのは5つの物語。中でも私が特に気に入ったのは、「波の上の月」と「川面のファミリア」。

「波の上の月」は、東京から遠いある島で教師をしている友人を訪ねた主人公が、その島で大人になるまでオスだけで群れて暮らすという人魚の男の子と出会うお話。
これには参りました。もうだめ。美しすぎて。すがすがしいような切なさを見せてくれるたいへんに美しい物語でした。それにしてもよくできたお話です。

そうか、切ないというのは、別れを必然のものにするとき、別れを肯定して受け入れるときに表れてくる感情なのかしら。一瞬の触れ合いののちの別れ。二度と会うこともない。しかしその一瞬間に、ずっと一緒にい続けることと同じだけの価値をもたせようとするのか。物理的な近さの代わりに、忘れられない記憶を残すことで、いつまでもその人とともにあろうとするのだろうか。ある種の別れが美しいのは、そういった理由なのでしょうか。……まとまらないけど。

「川面のファミリア」は、お父さんと二人で暮らす女の子が、ある日川べりで出産間際の人魚を助け――というお話。
胸があたたかくなるような、珍しくハッピーエンドな感じのする物語です。結末の場面が相当に美しい。夢みたい。


この人のマンガは、とても繊細な世界を描いていますが、どこかコミカルで、また淡々として、さっぱりとした絵柄とともにすらすらと流れてゆくようです。こういうあっさりしたところがいいですね。それでいて、とても印象的。実に美しい。

うーむ。
ほかの作品も、読みたいところです。




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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
どうもありがとー! (ntmym)
2008-06-30 20:44:34
烏合さん、こんばんは!
すっごく素敵なマンガを教えてくれて、どうもありがとう~。本気で面白かったよ!!

やはり烏合さんも「波の上の月」がお気に召しましたか。うんうん。あれはほんとうに素晴らしいですね~。記事を書いた後にもいろいろと考えたのですが、考えれば考えるほど、じわっときます。物語の構成もいいし。

海女さんのお話は、お婆さんのキャラクターがいいですよね。このお話の結末も美しかったですよね~。

うーむ。今後も気になる作家さんです(^^)
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うおおお!! (烏合)
2008-06-30 18:19:24
『光の海』やっぱりいいですよね!!
私は『Beautiful Sunset』と2冊買ったのですが、やはり『光の海』が好みでした。
ntさんと同じく「波の上の月」で切なくて仕方がなくて、かなりうるうるしてしまいました。
最後の海女さんのお話もよかったなあ。。

どうぞこまきさんも読んでみて下さいね!
どこぞで入手できるとよいねぇ。。
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あはは (ntmym)
2008-06-28 18:39:30
こまきさん、こんにちは!

はやく入手できるといいですね~。
私はジュンク堂まで行って買ってきましたヨ!
面白かったですよー(^^)

烏合さんには、ほんと感謝ですね♪

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乗り遅れてます (こまき)
2008-06-27 21:24:25
烏合さんの日記で拝見し、私も読みたいと思っているのですが、
買い物へ行くのもままならぬ身、Amazonさんでは売り切れてしまっていて、まだ入手できていません。
うおぉぉぉ、ますます読みたくなりました。
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