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『ポーの一族』

2011年11月28日 | 読書日記ー漫画

萩尾望都(小学館文庫)




《あらすじ》
青い霧に閉ざされたバラ咲く村にバンパネラの一族が住んでいる。血とバラのエッセンス、そして愛する人間をひそかに仲間に加えながら、彼らは永遠の時を生きるのだ。その一族にエドガーとメリーベルという兄妹がいた。19世紀のある日、2人はアランという名の少年に出会う……。時を超えて語り継がれるバンパネラたちの美しき伝説。少女まんが史上に燦然と輝く歴史的超名作。


《この一文》
“それはそれは昔のこと…
 グレンスミスは不死の一族が住む バラの咲くポーの村を見つけました
 それは人間の世界の時の流れからははずれた谷間の村で
 争いもなく 貧しさもなく 絶望もなく
 深い一族の愛をもって村人は生きつづけているのでした

 (中略)

 ああ ずっと一生そんなバラの咲く村で暮らせたら……
 どんなに……

 「生きて行くってことはとてもむずかしいから
  ただ日を追えばいいのだけれど
  時にはとてもつらいから

  弱い人たちは
  とくに弱い人たちは
  
  かなうことのない夢を見るんですよ」 ”

   ――「グレンスミスの日記」より(文庫版第1巻)



かなうことのない夢を。
争いもなく、貧しさもなく、絶望もなく。そんな夢なら私も見続けている。やはりかなわない夢なんだろうか。そうだろう、きっとそうだろう。けれども弱い私には、どうしてもこんな夢が必要なのです。私は世界の成り行きを見つづけたい。いつか人々が争いも貧しさも絶望もないところへ辿り着けるのかどうかが知りたい。永遠に生きられたなら、永遠に生きる力を得られるなら、たとえ生物としての温もりをすべて捨てなくてはならなくても、たとえ無限に続く孤独な旅になるとしても、私はそのチャンスに飛びつくかもしれない。そんな機会は私にはやってこないと知っているけれども。夢を見つづけられれば、つまり私はまだ生きていけるということだ。ただ、夢さえ見られれば。


「グレンスミスの日記」と「はるかな国の花や小鳥」に、今回はとくに心を打たれました。どちらも夢の世界を想い続けた人のお話です。この分量に、これほどの内容を詰め込むことのできるとは、本当に驚異的ですね。


というわけで、萩尾望都先生の構成力と画力が凄過ぎて、私はついつい持っているだけ全部のエピソードを一息に読んでしまいました。文庫版の第3巻だけはまだ持っていないので、早々に買っておきます。私は10代のうちにこの『ポーの一族』を読まなかったことを後悔しているのです。うかつだった。不覚だった……!! はやくこの身の糧としなくては。心の奥深くにこの美しい種子を埋め込まなくては。


今さら私が言うまでもない、超傑作漫画です。物語とはこうあるべきという見本のような作品。いつ読んでも新しく、そして美しい。