半透明記録

もやもや日記

お知らせ

『ツルバミ』YUKIDOKE vol.2 始めました /【詳しくはこちらからどうぞ!】→→*『ツルバミ』参加者募集のお知らせ(9/13) / *業務連絡用 掲示板をつくりました(9/21)→→ yukidoke_BBS/

『去年マリエンバートで』

2008年08月22日 | 映像
L'Année dernière à Marienbad

監督:アラン・レネ
製作:ピエール・クーロー/レイモン・フロマン
脚本:アラン・ロブ=グリエ
出演者:デルフィーヌ・セイリグ
音楽:フランシス・セイリグ
撮影:サッシャ・ヴィエルニ
編集:アンリ・コルピ/ジャスミーヌ・シャスネ

1961年/94分/フランス・イタリア



《この一文》
“最初はそこで迷うことはあり得ないと思えた
 最初は……
 直角の小径に沿い 石像と敷石の間で
 迷うことはないと思った

 そこへ今あなたは来ていて
 永久に自分を見失いつつあった
 静かな夜のなかで
 僕とただふたりきりで          ”




私は、今度生まれ変わるとしたら、ペンギンになって弾丸のように海を飛んでゆくつもりだったのですが、それもいいけれど、その後か、あるいはその前にでもいい、私は今度生まれ変わるとしたら、この映画の中に生きたい。そして永久にこの不思議な建物のなかを彷徨い続けたい。



つまり、何がどういうことなのか、どうもよく分からない映画です。いや、分かりそうなのだけれども、はっきりとは分からない。分かるのは、ただこれが完全に美しいということだけです。

男がいて、ゴシック風のホテルのなかを彷徨っている。ずいぶんと長いこと、同じ廊下を、同じ壁の間を歩いているらしい。
そして、女がいる。彼女は夫とともにホテルへ来ていたが、あるとき女は男と出会いロマンスが始まったらしい。しかし、今また男と出会っても、彼女は彼を認めようとしない。
「わたしを待っていましたね」という男の問いに、彼女はこたえない。


それにしても、なんという美しさだろうか。なにもかもがあまりに美しいので、私などは途中で何度も卒倒するのではないかと思われました。特に、あのすべてが白くなっていくあたりなど、とても耐えられそうにありませんでした。

場合によっては眠気を催すような、静かな、不可思議な、絵のような映画です。しかし、繰り返す男の声が、オルガンの暗い響きが、白と黒が、わずかに動きながら止まっている人々が、女の沈黙が、しかし私を激しく圧倒しました。なにもかもがあまりに美しいので、私はすべてを失って、この中へ深く入り込み、もっと深く入り込んでいきたいと思いました。


私は今度生まれ変わるとしたら、この映画の中に生きたい。そしてこの美しく不思議に閉じた世界を彷徨い続けたい。永久に自分を見失って、静かな夜のなかで……。