半透明記録

もやもや日記

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初夢をみっつ

2008年01月04日 | 夢の記録

初夢というのは、正月のどの夜に見る夢のことをいうのだったか、いつも忘れてしまう。年が明けてから私はすでにいくつかの夢を見たけれど、みんな忘れてしまった。ところが、今日すこし風邪気味だったので長い昼寝をしたところ、久しぶりにあの夢を見た。あの夢というのは、夢の中でも私が私のままで登場する「美術学校の夢」である。冬休みだった。それから他にふたつの夢を続けて見た。


1.美術学校の冬休み

 私は数日いなかへ帰省したあと、美術学校の寮へ戻ってきた。冬休みの課題を仕上げようと思って窓際の机に向かっているのだが、まったく捗らない。いらいらとして飲み物のカップや菓子を盛っていた皿を、ごちゃごちゃと机の上に散らかしていた。窓の外は曇り空である。
 このままでは埒があかないと、私は資料室へ向かう。入り口で先生と一緒になった。
 この先生はぽっちゃりとしたフランス人の女の先生で、いつもタイトなえんじ色のスーツを着て髪を後ろにひっつめている少し厳しそうな雰囲気の先生なので、私は一瞬ためらってから「先生、こんにちは」と挨拶をした。すると先生も「こんにちは」とこたえてくださった。
 私と先生は静かな資料室に入ってから、少しばかり冬休みをどう過ごしたかについて話し合った。先生は年末から家族でフランスへ帰り、さっき学校へ戻ってきたところなのだと楽しそうに笑ってお話しになる。私も年末には郷里の富山へ帰っていたので、向こうの冬はたいていは雪で薄暗く寒いのですというようなことを言うと、
「ああ、それであなたの作品はいつもどこかしんとして寂しいところがあるのね」
とおっしゃった。
 私は突然に雪が白く積もった平らな地面と、白く泡立つ勢いで渦巻きながら流れてゆく緑色の川のことを思い出した。そして、先生が私という生徒をちゃんと認識してくださっていたことに驚いた。冬休みの課題をもうすぐにでも仕上げられるような気持ちがした。

 資料室には、学校の出版局から出ている辞典のように分厚い資料集が、古くなったために12冊組で売りに出されていた。『学内における言語使用状況の分析』(上下巻) は私にはまったく必要ないように思われたが、別の資料はとても魅力的だったので、私は購入することにした。要らないものはあとでブックオフに売ればいいと思ったのだが、こんな特殊な本を引き取ってくれるだろうか、それだけが少し気になった。



2.鮭の遡上

 私はある一級河川の流れのすぐそばに住んでいる。下流から上流へ差し掛かるちょうと真ん中あたりに家があった。冬場には川の水量が増すためか、川に面した1階の部屋の大きな窓の半分くらいの高さまで、家は川に沈んでいた。その窓からは、水族館の水槽の向こう側のように水中を泳ぐ魚を見ることができた。
 私がそうやって川の中をのぞいていると、産卵のために川を遡ってきた鮭の群れがやってきた。どれもみな太って、がっしりとした顎を持ち、ぐんぐんと勢い良く遡っていく。それが何百匹も連なっている。
 興奮した私は、これを写真に撮っておこうと思い、カメラを窓に押し当てた。ところがその時になってはじめて気が付いたのだが、ガラス窓の向こうには網戸が張られていて、網目が画面を邪魔してうまく撮影することができない。そうこうするうちに鮭の群れは途切れてしまった。
 がっかりしてしばらく下流のほうを見ていたら、今度はなにか白い腹をぐにゃぐにゃさせた筒のような形をした魚がこちらへ流れてきた。押し出されるようにどんどん流れてくるので、私はもっと下流のほうからこの魚を狙う大きな魚がやってくるのかもしれないと考えた。
 それが鮭だったらいいのに。写真はきっと撮ることができないだろうが、それよりも私はもう一度鮭を見たいと思うのだった。


3.消防士

 (夢の中の私は小学生くらいの男の子だった。)
 僕はこのあいだ覚えた地図記号が面白かったので、一緒にいた大人二人に問題として出した。僕にはその記号は、悲しんでいる人の顔のようにしか見えない。二人にもやっぱり何の記号なのだか見当も付かないらしく、ああでもないこうでもないと言い合っていて、いつまでも答えが当たらないので愉快だった。
 しかし、いつまでも正解が出ないことに飽きてきた僕はいくつかヒントを出してやった。すると、二人のうちの一人がようやく正しく答えた。その記号は「公民館」の記号だった。

 僕は山間の小さな町に住んでいる。父は消防士で、今日は正月休みも取れずに出勤していった。消防署は僕の家からすぐのところにあり、この日にもひっきりなしに救急や消防が出動していくのが分かった。
 僕はさっきから一緒にいる大人二人と連れ立って、海の方まで歩いた。僕の家は山間にあるのだけれど、海も近い。ただし砂浜はなく、海岸線は切り立った崖となっている。その崖に沿って車道が2本走っているのだった。
 僕らが冬の暗い海と、もうすぐ濃くなりつつある霧のかかった灰色の空を眺めていたら、その霧を突き抜けるように大きな明るい炎をあげて横切るものがあった。
「戦闘機だね」
 と僕は言ったけれど、そのあとで霧の隙間から少しだけ緑色のボディが見えたので、あれは戦闘機ではなくミサイルだったと気が付いた。決まりが悪かったが、二人は何も気にしていないようだ。海上の遠くには、大きな黒い船が何隻も集まって昼間なのにそれぞれが巨大なライトを点していた。ミサイルはその方向へ飛んでいった。

 道ばたでそうやってぼんやりしていたら、出動先から消防署へ戻る父が消防車をひとりで運転してやってきた。僕をついでに乗せて帰ってくれると言う。
 二人と別れ、僕は助手席に乗り、海岸線に沿った崖の上の道路から、暗い冬の海を見おろして帰ってきた。
 消防署の地下に駐車場があって、父はそこへ消防車を入れた。本当なら消防車を駐車するときには二人で作業しなければならないらしいのだが、忙しくて人手が足りないために、父はそれを一人でやった。
 それはとてもすごいことだ、と僕はしきりに感心したのだった。




という、どことなくそれぞれが繋がっているようなそうでもないような、しかしとても印象的な夢をみっつ続けて見た。ほんとうに久しぶりに「美術学校の夢」を見られたので、私はとても嬉しい。いつもの夢に比べると短いような気もするが、それでも嬉しい。今年はまたいくつかこの夢の続きを見られるのだろうか。