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もやもや日記

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『ピカルディの薔薇』

2007年12月19日 | 読書日記ー日本
津原泰水 (集英社)


《収録作品》
 夕化粧/ピカルディの薔薇/籠中花/フルーツ白玉
 夢三十夜/甘い風/新京異聞

《この一文》
“こちらの思惑どおり、姪の気持ちはシーモンキーに転んだようだ。おれに似てずぼらな子だから、買ってもらってもきっと全滅させてしまうだろう。あえて死を悲しまず、思い出を愛でるすべを学ぶだろう。
         ―――「籠中花」より  ”



驚いてはいけません。
私とて、ときには現代日本文学に接することもあるのです。えへん。
とは言え、正直に告白すると、ちょっと前までは津原氏のお名前さえ存じ上げなかったのを、私のお友達がとても面白そうに感想を書いていらしたのでついつい読みたくなったわけなのです。
で、私の率直な感想としましては、たしかに面白かった!
いやー、たまにはいいものですね、日本の現代作家も。


物語は、猿渡という作家が聞き手だったり語り手だったりするという連作短篇小説でした。これはどういうジャンルに分類されるのでしょうか、ミステリーではない、幻想怪奇小説でしょうか。物語のところどころに、あまりに鮮烈な残酷描写がちりばめられていて、正直なところ、前半ではあまりのことに私は蒼白となっておりました。とくに表題作の「ピカルディの薔薇」の結末には、なんともはや色彩の対比が鮮やか過ぎるために一層……アワアワ; 怖すぎます…もう、だめだ………

残酷描写もさることながら、主要登場人物である猿渡氏や、彼の担当編集者とのやりとりが、なにか私には妙にしっくりこないというか……。会話文って、こんなんでしたっけ?(と、私の感性は20世紀初頭あたりに設定されているので、今回はたぶん新しすぎたということでしょうか;)
「やはり私には現代日本人作家は無理なの……?」と暗澹となりかかっていましたが、がんばって半分過ぎまで読んだ甲斐がありました!

「フルーツ白玉」というお話から、なぜか猛烈に面白くなりました。会話も全然気にならなくなったし。
あれ~、なんで急に? このあたりでようやく馴染みはじめたのでしょうか。やっと津原さんの魅力が伝わるようになります。なるほど、この人って、ちょっと独特の幻想性がありますね。

「夢三十夜」と「新京異聞」がとても面白かったです。めくるめく感じで。
「甘い風」も、わりとベタな展開でしたが、なんだかとても熱血なので面白かった。ベタなんだけれども、やっぱり不思議に幻想的なところがあって。
どのお話に含まれていたのだか、探しても見つからないのですが、「外国の山奥で倒れたとき、現地の女の子が食べさせてくれた血合いソーセージ(実はヒルだった)の話」が、妙に印象的で、いつか夢に見そうです。


私はお友達がすすめてくれない限りは現代日本人作家は一切読まないのですが、私のお友達がすすめてくださる限りは、それはきっと面白いに違いないので、これからも年に数冊というペースで読んでいくことにしよう、と思います。