食品やグルメの情報に事欠かない日本。 つい食べ過ぎて反省する場面も少なくない。 ところが
日本人が実は栄養不足に陥っている実態が明らかになってきた。 どういうことなんだろうか?
たんぱく質の摂取が目標量に届いていないほか、カルシウムやマグネシウム、ビタミンA、B1,
Cなどのほとんどの栄養素で「必要とされる摂取量」を下回る日本人が一定数いる‥‥。
東京大学社会予防疫学分野の"篠崎助教"らの研究グループが2023年、1~79歳の計」44
50人から集めた8日分の食事記録を用いた調査で明らかにした。 季節差も考慮に入れた
「習慣的な栄養素摂取量」の大規模調査は日本初だ。
たんぱく質が目標に届かない人の割合は成人男性が最も高く、18~79歳の2割以上を占めた。
食物繊維は18~49歳の男性と18~29歳の女性の6割以上が不足していた。
必要量にすら届いておらず、より深刻なのがカルシウムと鉄の不足だ。 カルシウムは男女とも
全ての年代(29~88%)で、鉄は12~64歳の女性(79~95%)で、不足している人の割合が特
に大きかった。 日本の成人のカルシウムの平均摂取量は米国の半分以下にとどまる。 「乳
製品の摂取がそもそも少ないうえ、日本では主に朝食に登場する食品のため、タイミングを逃
すととりにくい」(篠崎助教)。 全般的に乳幼児よりも思春期の子どもで、高齢者よりは働き
盛りの世代で、それぞれ栄養不足の人の割合が大きい。 今回は健康への関心が高い人が対象
の調査で、国民全体でみると栄養はさらに不足している可能性もある。
ただ、臨床栄養学が専門の"飯塚・藤田医科大学医学部主任教授 "は「栄養不足を自覚するのは難
しい」と指摘する。 栄養不足が原因で起こる手足のしびれや動悸、疲れやすさなどは気づき
にくい。 一般の人は栄養状態を測定する機会も少ない。
栄養が足りているかを手軽に知る方法もある。 「『肉、魚、卵、乳製品、大豆、緑黄色野菜、
果物、芋、海藻、油』の10品目中、1日に何品食べているか」をチェックすることを勧める。
「理想は1日8品目だが、実際は5~6品目にとどまる」のが実態だという。
飯塚教授が同大学病院の職員らに1週間分の食事を記録してもらい分析したところ、食べる頻度
が少ない食品は「芋や海藻、果物」だと判断した。 年齢が若いほど、さらに一人暮らしに人
ほど、食べる機会が少ないこともわかった。 「食事には社会的、経済的な要因が関係する。
ゆとりがあれば、食事に目を向ける余裕も生まれるはず」と語る。
実際、食事や栄養と個人の経済状況には関連がある。 厚生労働省の「国民健康・栄養調査」
(18年)によると、世帯所得が200万円未満および200万~400万円未満の世帯の男性は、
世帯所得が600万円以上の男性と比べて野菜の摂取量が有意に少ない。 食品の選択で「栄
養価」を重視する人の割合は、男女とも200万~400万円未満の世帯が600万円以上
の世帯より有意に低かった。 さらに人々の懐具合で気になる兆しがある。 消費支出の占
める食費の割合を示す「エンゲル係数」は、23年に前年から1.2㌽上昇し27.8%に達し、
現行基準を採用した00年以降で最高となった。 食品価格がさらに上昇すると、栄養をお
ろそかにして食費を切り詰める恐れは強まる。(実際にあり得る)
栄養不足を避けるには何が有効か。 飯塚教授は「様々な食品を食事に取り入れることで、色
々な栄養素が取れる」と強調。 食べる機会が多い肉より、魚や大豆製品を選ぶとよい。
魚の摂取量が少ない単身者は「お湯をかけて塩を落としたしらす干しなら、毎日続けやすい。
厚労省と農林水産省が定めた「食品バランスガイド」と見比べるのも参考になる。
十分な栄養を含むのは必ずしも高価な食品とは限らない。 明治は23年5月に「野菜やキノ
コ類、茶やコーヒー、ココアなど自然素材由来の飲料」が日本の食文化で不足しがちな栄養
の多くを補うことを明らかにしたと学会で発表した。 研究本部の”若山さん”は「食品の栄
養素はイメージでとらえられがち。 どのような栄養素が多く含まれるのかを可視化して、
理解を促したい」と話す。
栄養素の摂取量を細かく把握するには手間がかかる。 食事の実態が一目でわかるように、篠
崎助教は6月、食器に盛り付けた食品の画像をふんだんに使った共著『食べもの重量早わか
り』(女子栄養大学出版部)を刊行した。 皿やカトラリーのサイズを目安に、食べ物の量を視
覚的に分かるように工夫し、栄養成分の目安も掲載した。
飯塚教授は「投資のボートフォリオ作りと同じで、個人は多様な食品を少しずつとることで栄
養を高め、リスクを減らすとよい」と語る。 同時に「食関連の業界にとって、忙しい人た
ちが栄養豊富な食品を無理なく食べられるための提供・提案がビジネスチャンスになるはず」
と期待を寄せる。
皆さんの食生活はいかがでしょうか。 一度考えてみようかな、なんてことありませんか。
日本人が実は栄養不足に陥っている実態が明らかになってきた。 どういうことなんだろうか?
たんぱく質の摂取が目標量に届いていないほか、カルシウムやマグネシウム、ビタミンA、B1,
Cなどのほとんどの栄養素で「必要とされる摂取量」を下回る日本人が一定数いる‥‥。
東京大学社会予防疫学分野の"篠崎助教"らの研究グループが2023年、1~79歳の計」44
50人から集めた8日分の食事記録を用いた調査で明らかにした。 季節差も考慮に入れた
「習慣的な栄養素摂取量」の大規模調査は日本初だ。
たんぱく質が目標に届かない人の割合は成人男性が最も高く、18~79歳の2割以上を占めた。
食物繊維は18~49歳の男性と18~29歳の女性の6割以上が不足していた。
必要量にすら届いておらず、より深刻なのがカルシウムと鉄の不足だ。 カルシウムは男女とも
全ての年代(29~88%)で、鉄は12~64歳の女性(79~95%)で、不足している人の割合が特
に大きかった。 日本の成人のカルシウムの平均摂取量は米国の半分以下にとどまる。 「乳
製品の摂取がそもそも少ないうえ、日本では主に朝食に登場する食品のため、タイミングを逃
すととりにくい」(篠崎助教)。 全般的に乳幼児よりも思春期の子どもで、高齢者よりは働き
盛りの世代で、それぞれ栄養不足の人の割合が大きい。 今回は健康への関心が高い人が対象
の調査で、国民全体でみると栄養はさらに不足している可能性もある。
ただ、臨床栄養学が専門の"飯塚・藤田医科大学医学部主任教授 "は「栄養不足を自覚するのは難
しい」と指摘する。 栄養不足が原因で起こる手足のしびれや動悸、疲れやすさなどは気づき
にくい。 一般の人は栄養状態を測定する機会も少ない。
栄養が足りているかを手軽に知る方法もある。 「『肉、魚、卵、乳製品、大豆、緑黄色野菜、
果物、芋、海藻、油』の10品目中、1日に何品食べているか」をチェックすることを勧める。
「理想は1日8品目だが、実際は5~6品目にとどまる」のが実態だという。
飯塚教授が同大学病院の職員らに1週間分の食事を記録してもらい分析したところ、食べる頻度
が少ない食品は「芋や海藻、果物」だと判断した。 年齢が若いほど、さらに一人暮らしに人
ほど、食べる機会が少ないこともわかった。 「食事には社会的、経済的な要因が関係する。
ゆとりがあれば、食事に目を向ける余裕も生まれるはず」と語る。
実際、食事や栄養と個人の経済状況には関連がある。 厚生労働省の「国民健康・栄養調査」
(18年)によると、世帯所得が200万円未満および200万~400万円未満の世帯の男性は、
世帯所得が600万円以上の男性と比べて野菜の摂取量が有意に少ない。 食品の選択で「栄
養価」を重視する人の割合は、男女とも200万~400万円未満の世帯が600万円以上
の世帯より有意に低かった。 さらに人々の懐具合で気になる兆しがある。 消費支出の占
める食費の割合を示す「エンゲル係数」は、23年に前年から1.2㌽上昇し27.8%に達し、
現行基準を採用した00年以降で最高となった。 食品価格がさらに上昇すると、栄養をお
ろそかにして食費を切り詰める恐れは強まる。(実際にあり得る)
栄養不足を避けるには何が有効か。 飯塚教授は「様々な食品を食事に取り入れることで、色
々な栄養素が取れる」と強調。 食べる機会が多い肉より、魚や大豆製品を選ぶとよい。
魚の摂取量が少ない単身者は「お湯をかけて塩を落としたしらす干しなら、毎日続けやすい。
厚労省と農林水産省が定めた「食品バランスガイド」と見比べるのも参考になる。
十分な栄養を含むのは必ずしも高価な食品とは限らない。 明治は23年5月に「野菜やキノ
コ類、茶やコーヒー、ココアなど自然素材由来の飲料」が日本の食文化で不足しがちな栄養
の多くを補うことを明らかにしたと学会で発表した。 研究本部の”若山さん”は「食品の栄
養素はイメージでとらえられがち。 どのような栄養素が多く含まれるのかを可視化して、
理解を促したい」と話す。
栄養素の摂取量を細かく把握するには手間がかかる。 食事の実態が一目でわかるように、篠
崎助教は6月、食器に盛り付けた食品の画像をふんだんに使った共著『食べもの重量早わか
り』(女子栄養大学出版部)を刊行した。 皿やカトラリーのサイズを目安に、食べ物の量を視
覚的に分かるように工夫し、栄養成分の目安も掲載した。
飯塚教授は「投資のボートフォリオ作りと同じで、個人は多様な食品を少しずつとることで栄
養を高め、リスクを減らすとよい」と語る。 同時に「食関連の業界にとって、忙しい人た
ちが栄養豊富な食品を無理なく食べられるための提供・提案がビジネスチャンスになるはず」
と期待を寄せる。
皆さんの食生活はいかがでしょうか。 一度考えてみようかな、なんてことありませんか。