農業じゆう人

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放流って、よいこと?

2020年10月23日 12時42分31秒 | 世間
 子どもたちの環境教育や、伝統行事としても行われる魚などの生き物の放流・・。
 よい取り組みのようにも見えますが、生物多様性を保全する上では、ほぼ無意味だったり
  逆に悪い影響を与えることも少なくないという。 絶滅の恐れのある生き物を対象にする
  際には特に注意が必要なんだそうです。

  淡水魚を池に放流する例を考えます。 
 例えば、汚染や工事などで生息地の
 環境が悪化しているのに魚を放した
 場合、生き残るのは難しいでしょう。 
 「死滅放流」という言葉もあるほど
 です。 ブラックバスなどの天敵が
 いるのに小さな魚を放せば、食べら
 れてしまうかもしれません。 放流
 された魚を食べて天敵がますます増
 え、他の魚や生物に悪影響が及ぶ恐
 れもあります。 逆に、強くて大食
 らいの魚を放流すれば、放流先で他
 の生き物を大量に食べるかもしれま
 せん。 放流が池のバランスを壊す
 リスクがあります。 別の生息地か
 ら持ち込んだ魚を放流すると、寄生
 虫や病気を一緒に連れてくることも
 あります。 かつて二ホンウナギが
 輸出された欧州で、二ホンウナギの
 寄生虫がヨーロッパウナギに大きな
 被害を出した例があるそうです。
  また、同じ種でも別の地域にすんでいる魚同士は遺伝子の特徴が少しずつ違うことが少
   なくありません。 地域の遺伝的特徴という個性を守ることは、生物多様性を保全す
   る上で特に重要だとされています。 地域の個性を考えずに放流すると、子や孫の代
   になり、遺伝的特徴が失われていくことが懸念されているという。

  「全ての放流を不定するものではないが、今後は伝統行事などを含めて『なんのために
   やるのか』を明確にすることが大切だ」。 日本魚類学会の「生物多様性の保全をめ
    ざした魚類の放流ガイドライン」の策定に関わった"森・岐阜協立大教授(動物生態学)"
   はし話している。 「保全を目的とする場合は、いくつかのハードルがあることを理
   解する必要がある」。 ガイドラインでは、次のような注意点を挙げています。 
   放流するのはその地域の魚か▽放流場所にその魚がくらしていける条件が整っている
   のか▽放流の記録をきちんと残し、支障がない限り公開する‥‥。
   こうした点が重要だということです。

  きちんとした放流はなかなか難しい。 植樹も、虫やウミガメを放つのも、生物多様性
   の観点からは共通する課題があるという。
  森教授は「生物を増やしたいのであれば、『そもそもなぜ減ってしまったのか』という
   理由も詰めて考えないといけない。 その場で増やせるなら、一番望ましい」と話す。
   環境の改善や外来魚の駆除などの方が保全には有効な場合も少なくないそうです。

  一方、最後の手段としての放流が成功した例もあります。 大阪の淀川では、タナゴの
   仲間のイタセンパラが一度姿を消しましたが、施設で保護したものを増やし、生息地
   の環境を整えた上で里帰りさせ、絶滅の縁から救いました。
    国際自然保護連合(IUCN)は、こうした消えた生き物の里帰りの取り組みである「再導
    入」の事例集を1~3年ごとに公表している。 事例のうち「とてもうまくいって
    いる」や「うまくいっている」ものが5~7割、「部分的にはうまくいっている」
    「失敗」が3~5割弱程度でした。

  放流には準備がいります。 遺伝的特徴の解析などでは専門家の支援を受け、放流場所
   を選らず際は関係者の協力が必要です。 放流後も地域できちんとモニタリングして
    見守ることが大切です。 息の長い取り組みなのです。